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AM ‐ アンミとミーシー ‐  作者: きそくななつそ
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十一話⑮


「どこにいても、だな。岐阜県だけじゃない。予知圏外を一回抜けてからも試してる。かなり離れてても同じだった。だからまあ普通に考えたら俺の寿命がそういうもんかと思ったんだが、これはな、俺だけじゃない。ミーシーも同じような時間帯に予知が途切れてる。あとこれは、……ちょっと言いづらいんだが、アンミが研究所に連れていかれた後に起こる可能性が高い、んだろうな。というのは、俺がアンミと一緒にいる時は、妨害が入ったのが分かってから予知が途切れる。元々外に出ようとすれば妨害エリアに囲まれてるし、予知対策のアイテムを持ってる人間とも出くわしたりもする。ただ、何もしなかった場合は、俺がどこにいようが、アンミが連れていかれた後に予知が途切れる。この場合はミーシーと俺がほとんど同時にやられてる」


「同時に?日本中で、予知妨害されるってことか?」


「そういうことかも知れんな。居場所が把握されてるのかとも思ったが、さすがにミーシーと俺とで別行動してて、ほとんど同時はあり得んだろう。気づかれずに何個も県またいで俺についてきてるってこともないだろうし、もちろん俺やミーシー本人に機械を取り付けてたりもしない。俺もミーシーも、それをなんとかする方法は見つけられなかった」


「そんな馬鹿な。……じゃあ相手はアンミを捕まえる時は一気に全体を魔法対策できる設備を持ってるってことか?」


「状況から考えるとな。ただ、仮にそういうのがあったとして、そんな馬鹿げたもんをどんだけも使ってられるわけがない。予知を常に妨害してられるようなものじゃないはずだ。多分一瞬だけのことだろ。だからそんなに大した問題じゃない」


「……大した問題じゃない?なあミーシーは、おっさんの方も予知が途切れることとか、アンミから離れても意味がないことを理解してるのか?」


「まあ理解してるはずだ」


「ずっと前から、予知は大体そのタイミングで途切れることが分かってたってことだよな?」


「ああ。ただ当然、それをどうにかできないかは俺もミーシーも試してる」


「……ミーシーは、アンミをどうしても助けられなかったと言った。なあそれは、……相手が予知妨害のアイテムを使ってくるのが当たり前なのに、予知できる状態を保って戦って、二日後に予知が途切れるのを回避しようとしても無理だったという、そういう話か?」


「どう、だろうな。あいつがどういうつもりで言ったかまでは分からん。多分無茶をやることもあっただろうし、予知が途切れるってのは不安だったろう。……今までそれなしで生きてたことなんてないだろうからな」


「じゃあつまり、ミーシーは二日後のそれでゲームオーバーだと早合点してるっていう、ことだよな」


「…………。俺もミーシーも、別に予知が途切れてゲームオーバーだったりはしない。それだけは重要なことだ。ゲームオーバーになんてなったりはしない」


 なんとも評価の、下しづらい出来事のように思えた。ミーシーとおっさんと、同じように予知が途切れる未来が訪れると知っていて、ミーシーはこの家を去る決断をした。一方でおっさんはそれは心配するようなことじゃないと言う。


 どちらの言い分も正しいようでいて、でもどちらかが間違っている。ミーシーが事態を深刻に受け止め過ぎているのか、おっさんが楽観視し過ぎなのか……。


 少なくともおっさんが人生の中で未経験の予知障害だと言うのなら、間違いなく高総医科研が、意図的に予知を妨害しているとしか考えられない。であれば、そのタイミングで何かしら、俺たちにとって悪い意味での状況の変化も伴うはずだ。


 仮にほんの一瞬予知を途切れさせるだけに留まったとして、何かしらを、予見させないための方策だろうという推測は成り立つ。


 一瞬でない可能性だってある。しばらくの間、日本中で魔法対策がなされるという、そんな状況だって全くないとは言い切れない。


 ただしこれは、『俺や、多分ミーシーが』、『予知に頼り過ぎているから』『そんなことに危機感を覚える』。


 俺など元々予知できない人間なわけだから、魔法対策があろうがなかろうが携帯電話の繋がりくらいにしか差が出ない。


 予知圏外へ移動したり、予知妨害エリアに突入することを想定しているおっさんなどは、最初から予知をおまけ程度にしか考えていないのかも知れない。


 高総医科研も別に予知ができたりするわけじゃないんだし、一概にこちらが完全な不利を強いられるということにはならない。相手と条件が同じになっても勝てると見込んでいるのなら、まあ、……確かに。おっさんの言い分も分かる。


「だから、二日。お前がアンミを守ってくれ。何か少しでもおかしなことがあったら連絡をしてくれ。俺はそう言う。な、大丈夫だった。連絡はなかった。二日後の予知が途切れる直前に俺から連絡した時に、『アンミは大丈夫だ』と、お前は言った。途切れるのはおそらく単に一瞬だけのことだ。そこを越えればまた妨害エリアの外から予知できるようになる。お前やアンミの状況も分かる。そんな一瞬だけのことで全部が決まったりしない。分かるか?仮にアンミがもし、万が一研究所に連れていかれたとしてもだ、俺が黙って諦めるわけがないだろう?迎えに行けば良いだけだ。セラじいが昔そうしたみたいにな。まあ警備を固めてるだろうからできれば捕まらない方が良いとは思うけどな」


「俺が連絡を受けてアンミが側にいると言ったのは、おっさんが予知妨害エリアに入らなかった時の予知のことだろう?おっさんの行動が変われば当然予知した結果と違ってくる」


「そうだけど、そこは予知なしの俺を信じてくれ。ミーシーを連れて帰る。ここばっかりは出たとこ勝負にはなるが、妨害エリアから戻ったらまたすぐ予知し直して問題ないことを確認する。そんなに俺を過小評価するな。……な?」


「ああ、……俺は、俺が連絡を、まあそうだな。俺が緊急事態だと言わないってことは、まあ、そう言われると、大丈夫なんだろう、気をつけてくれ。俺はそっちの状況までは分からない。仮に俺たちが緊急事態じゃなくても、おっさん側がトラブったりする可能性はある」


「それも、心配ない。じゃあ、任せたぞ。またな」


「ああ、……また」


 悪い情報に分類せざるを得ないだろう。俺側がいつでもおっさんに緊急連絡できる状況じゃなければならない。


 少なくとも二日間、そしてその後状況が悪化するようなことがあってはならない。予知の通りから何も変わらないのであれば俺がおっさんにアンミの無事を伝えるらしいが……、おっさんが予知外の行動を取ったことで未来が変わることも覚悟しておかなくてはならない。


 市倉絵里は……、大規模な予知妨害のことを知ってたんだろうか。それも計算に入れているだろうか。いや……。


「あんまり良くないな。下手すると二日後まで引きこもってた方が良いかも知れん」


「予知が途切れるという話は市倉絵里から出てないのニャ?」


「出てないな。市倉絵里も予知妨害はあまり気にしてる様子じゃなかった。純粋に知らないと考えて良いと思うんだが……。俺が、ミーシーやおっさんから得られる情報だったろうからな。それを市倉絵里が隠すというのはあんまり賢いやり方じゃない」


「…………市倉絵里と会うのやめるかニャ」


「アンミ捕獲作戦はおそらくトロイマンの気分次第というところだろう。裏切り者を特定してからという可能性もあるし、そうじゃなくてもトロイマンの判断で決行される。例外の見分け方をわざわざ他の研究員に隠して、自分が一番に見つけられるようにしてたくらいだ。ここにきてひっくり返すような大掛かりな仕掛けを持ち出してきてもおかしくない。で、そうするとだ、裏切り者の特定によって行動を開始したと考えると……。二日後というのはまさにそれっぽいが」


「市倉絵里と健介が会ってるのがバレて研究所がアンミを捕まえにくるニャ?」


「その場合は、市倉絵里の助力が期待できなくなる。というか、俺も念のためにその場で拘束される可能性だってある。予知を途切れさせるのが仮に一瞬だとしても、おっさんやミーシーは現時点でその後の予知ができなくなるわけだから、予知可能期間に尻尾を出さずに準備を進めるだけして、……二日後に形勢を決める一手を持ってくるだろう」


「ただそれは、……まあ健介の言うことは分かるニャけど、市倉絵里と健介が会ったせいかどうかは分からないニャ」


「会うのが遅過ぎて、間に合わなかったってこともあるのかな……。おっさんにもう一回電話して、二日後までに俺が……、こう、誰かに会ったかどうかを聞くか?」


「その方が……、良いかもニャ?『会った』と言ってた場合どうするニャ?」


「ちゃんと考えてから聞いた方が良いな。俺が『会った』と言ったなら嘘はついてない。それで二日後に『アンミは大丈夫だ』と言う。なら会えば良い気もする。『会ってない』と言った場合ももちろん嘘はついてないだろう。それで二日後に『アンミは大丈夫だ』と言う。この場合は良い方法を聞けてるのかは定かじゃない。というか、……『会ってない』んじゃないのか?二日後の俺は。良い方法を聞いてたら解決できてるはずだ。まあ、……少し時間が掛かるという、話ではあったが、にしたって、解決策を聞いてて、予知が消える直前の段階になって、俺がおっさんを安心させてやらない理由が想像つかない。なあ、今、この場合、俺はおっさんの予知の内容を聞いて俺が行動を決めようとしてるわけだが、……予知外れたりしないか?」


「さすがにスイラも二回以上試して変わりないこと確認してるはずニャ。少なくともスイラ本人が予知行動から外れないように連絡待ってるという場合の予知ニャけど。まあ多分電話終わった後ももう一回予知し直して問題ないこと確認してるはずニャ。じゃなかったら、もう一回こっちに電話してくるニャ。忠告があるならニャけど」


「……ということは、会って良いのかな?会うべきだとは思ってる。そして順当にいけば俺は会うはずだ。もちろん慎重に行動しなくちゃならないが、市倉絵里が今更条件を撤回したりなんてしないだろう。良い方法を聞く前に時間切れというのだけは避けなくちゃならない。だが、……だとするとな?二日後になんで予知を妨害するなんてことに」


「スイラにもう一回確認するかニャ?」


「おっさんに市倉絵里の存在がバレた場合のデメリットはなんかあると思うか?おっさんは今手一杯で市倉絵里の素性調査ができるような状況じゃない。まずもって市倉絵里の方法が明かされてない以上、ミーシーやおっさんに知らせない方が良い、勘づかれると不都合だという、そういうパターンがあり得る。リスクが高い。二日後の俺はそもそも、今こうして考えて二日後におっさんと話してるわけだ。その時にぼかした言い方にしろ、二日前の俺に誰かと会うべきか否かを伝えてくれと頼まないか?何故それを頼まなかったかというと、つまりな?俺は誰かに会ったことを、おっさんに言うわけにはいかなかったということだ。市倉絵里と会って、良い方法を聞いた後になお、おっさんには言えなかった。そう受け取るべきだ。……多分、そうだと思う。お前の意見を聞こう」


「…………。確かに、多分、……そうニャ」


「どうした?問題なのはその部分だけだ。なんでおっさんに言えない?なんで誰かと会って、良い方法を聞いたのに、おっさんに伝えない?おっさんが知ってると不都合になるって、なんだ?」


「…………」


「思うんだがな?良い方法がないなんてことない。なんでかというと、俺がもし、市倉絵里に裏切られたとしたら、すぐにおっさんやミーシーに連絡をするはずだ。内情が漏れたと。騙されて窮地に陥ったと。で、そうするとおっさんかミーシーが事前に市倉絵里を危険人物だと俺に教えてくれる。二日後の縛りがあるから、もしかすると市倉絵里はそれ以降まで引き延ばして俺に判断させないつもりかも知れないが、まあしかしな?俺はその場合でもおっさんやミーシーに連絡をする。することにした。そうすれば、俺は市倉絵里と関わることなんてなかった。だから、ああ。元から、信じて良かったんだ。俺は、おっさんにもミーシーにも二日後になっても言わなかった。市倉絵里がな?おっさんが予知圏外に入って予知が変わる行動を取り始めたことを察知して俺に伝える方法を変えるなんてことじゃない限り、俺は良い方法を聞いた」


「市倉絵里はスイラとミーシーの行動まではコントロールできないはずニャから、スイラが予知通りの行動をしてる時にだけ解決できる方法を伝えて、予知の行動から外れた時だけ伝えないというのは、さすがに無理ニャ。健介の言う通りニャけど……」


「けど?なんかあるか?」


「市倉絵里と会うまで、まだ健介自身が、良い方法がないか考えてて良いニャ」


「……ああ。まあ。ちょっと情けない話だったな。俺本人は良い方法なんて思いつきもせず、人を信用する根拠が予知された未来に俺が市倉絵里を嘘つき呼ばわりしたかどうかなんて、情けない話だった。だが、時間制限がある。少なくとも二日後までには解決の目処を立てるか、予知妨害の対処をしなくちゃならない。後者は、……市倉絵里が原因を知らなかったら難しいだろう」


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