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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第二章 森の外へ
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84 海底洞窟を抜ける

 オルデンが地底湖で戦っていた頃、ケニスとカーラは必死で水の中を進んでいた。海の精霊たちの泡に守られて、地底湖と海の間の海底洞窟を進んでゆく。ここはパロルが寝床への出入りに使っていた通路で、かなり広い水中の空間だ。洞窟の上は海である。


 後ろからは、地底湖の精霊たちの制止を振り切った追手の精霊たちが迫る。遣い手は食い止められているが、精霊までは全て足止めしきれなかった。


「けっこう付いてくる!」


 ケニスは焦った顔を後ろに向けて言った。カーラは繋いだ手をしっかりと握りなおし、並んで水を蹴って走る。


現代(いま)の精霊たちは、殆ど人里に近寄らないって聞いたけど」


 カーラが額に皺を寄せる。ケニスも眉を寄せて頷く。


「いっぱい捕まってるみたいだねぇ」


 子供たちの逃走を助ける海の精霊は、いまいましそうに答える。


「ノルデネリエの連中は、森にも山にも分け入って捕まえるんだよ」


 背後から攻撃を仕掛けるのは、操られた精霊たちだ。子供たちを守る精霊たちの仲間だったものもいるようだ。海の精霊たちは悔しそうに顔を歪める。


「さっき捕まった奴まで追って来てるな」

「急ぐわよ、ケニー」

「分かってるよ!」



 カーラが精霊の力を少し解放して、髪に虹色が混ざる。


「こっちよ!」


 カーラはノルデネリエの導き手として生まれた。彼女は虹色の瞳を持つイーリスの子供たちが幸せになるほうへと進む。


「今助けになってくれる人の気配がするわ!」

「どうせ見つかっちゃったんだし、魔法使っていいよね?」

「そうね。でも、オルデンが来るまでは、この姿でいましょ?」

「うん。デンに聞いてからのほうが良いよね」


 子供たちがオルデンを信頼しているのを見て、海の精霊たちは嬉しそうなそぶりを見せた。



「みんなはデンと仲いいの?」


 ケニーが水の中を進みながら聞く。


「智慧の子が君たちぐらいの頃に会ったことがある」

「マーレニカには、ずいぶん前に来たきりだけどね」

「智慧の子のことは忘れないよ」

「智慧の子が嫌いな精霊なんかいない」

「俺は森まで遊びに行ったこともあるぜ」


 海の精霊たちはふたりが海底洞窟を通るのを手伝いながら、口々に答える。


「へーえ、オルデンたら人気者なのね」

「デンは凄いんだ!カーラだって知ってるだろ?」

「まあ、認めなくもないけど?」



 海底洞窟は一本道ではなかった。横道や枝道、壁に空いた横穴などがあちこちに現れる。分かれ道がある度に、カーラが水の中でも燃える虹色の火の粉を飛ばして行手を示す。


「えっ、わざわざそんな狭いところ通るの?」

「こっちが安全よ」


 カーラの言葉に従って岩壁の割れ目に潜り込む。すると、背後から飛ばされる岩や貝殻の欠片が一切届かなくなった。


「ね?ここの精霊は綺麗好きなのよ」


 無口で姿も現さないが、ゴミを一切入れないように水の壁を作っている。ただし、汚さないで通り過ぎるだけならば、魚でも人でも精霊でも、誰でも黙って通してくれる。


 海に出る道もいくつかあるが、海上に出た時にタリクたちの乗る船の側に居られるような通路を選ぶ。


「明るくなって来た」

「出口はもうすぐよ」


 2人は狭い岩の隙間を猛然と駆けて行った。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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