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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第二章 森の外へ
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73 地底湖の秘密

 カーラは、地底湖の精霊がデロンを知っていると言うだけで嬉しそうだ。


「ランタンの子が役割を果たす時が来たのだな」


 地底湖の精霊は得心してゆっくりと瞬きをした。カーラは警戒心を覗かせながら、青緑色の精霊を見上げる。


「あたしのこと知ってるのね」

「知っている」


 カワナミがお腹を抱えて笑う。


「アハハハハハ!水の精霊ならみんなあの遺跡を知ってるからね!」

「カワナミはカーラを知らなかったろ?」


 オルデンが呆れる。


「そうだけどさぁ」


 カワナミは悪びれずに笑ったままだ。地底湖の精霊はちっとも気にせず、カーラを見つめる。



「邪法を破る方法も知ってる?」


 カーラは期待を込めて背の高い精霊を見る。ケニスとオルデンも注目した。


「邪法の遣い手が隠した心臓を燃やすのだ」

「心臓はどこにあるのかしら」


 地底湖の精霊は首を横に振った。


「残念ながら、それは知らない」


 3人は落胆して肩を落とす。地底湖の精霊は、言葉を継ぐ。


「邪法の媒体を壊すか、邪法の遣い手が死ぬか、邪法に使う精霊文字を消すか」

「それはカガリビからも聞いた」

「では、新しいことは何も無いな」

「そうみたいね」



 カーラは改めて地底湖を見た。水は相変わらず波も立たずに、磨硝子のように不透明だ。煌塩(こうえん)が注ぐ金赤に彩られながら、神秘的な青緑色を湛えている。


「この水の先に海があるのね」

「そうだ。海と繋がってる」

「その向こうからデロンは来たのね」

「そうだな。海の向こうから来た」


 カーラの瞳に憧れが兆す。


「行ってみたいわ」

「どんな所だろうねぇ」

「デロンはずっと旅をしていたそうだ。生まれたところは知らない」

「へえ、ガキん頃から旅暮らしか?」


 オルデンは急に親近感を覚えたようだ。



「デロンはここに来たの?」

「一度来た」


 地底湖の精霊は、懐かしそうに眼を細めた。


「怪我をしてな。狼に噛まれてイーリスが運んできた」

「ええっ、大丈夫だったの?」


 ケニスが思わず背伸びして地底湖の精霊と眼を合わせる。


「イーリスが駆けつけて腕だけで済んだ」

「噛まれて死んだわけじゃないのね」


 カーラもほっとする。


「噛まれて死んだんじゃない。その後もしばらく生きてた。死んだ時は歳だったんだ」


 デロンは寿命が来て静かに死んだと言う。



「この近くで噛まれたの?」


 ケニスが訊く。


「いや、麓の森で噛まれたらしい」

「デロンが居た洞窟よりも、噛まれた場所からはここの方が近かったのかしら」

「それは分からない」

「逃げ込むなら近い方がいいでしょ?」


 カーラは納得出来ずに質問を続ける。


「ここの湖に浸かれば、傷は消えてしまうからな。傷ついたから連れて来たのだろう」


 地底湖の精霊は、水に宿る傷を癒す力が周知のことであるかのように言った。3人は驚いて湖に目をやった。見てもわからない。美しくはあるが、見た目は普通の水だ。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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