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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第二章 森の外へ
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66 精霊剣の伝説

「砂漠に行ってみたらどうだ?」

「砂漠に?」

「魔女が生まれたところなら、何か解るかもしれんぞ」

「うん。そうだね」


 ケニスが言うと、カーラとオルデンも頷いた。今は紫色をしたケニスの瞳に決意の火が灯る。


「そうしてみるよ」

「頼んだぞ」

「気をつけてね」


 精霊達は次々に祝福を与える。ケニスの額で、焔を表す精霊文字が赤く光った。



「ありがとう。これからよろしく」


 ケニスは元気に挨拶をする。精霊たちは満足そうに顔を見合わせ、口々に挨拶を返してきた。


「よろしく」

「仲良くしてね」

「よろしくな」

「いつでも来いよ」

「楽しくやろうぜ」



 ケニスとの挨拶が済むと、精霊達は最後にオルデンの元へ来る。


「お前は何者だ?」

「イーリスの気配はしない」

「ジャイルズの気配もしない」

「森の気配がする」

「川の気配がする」

「空の気配がする」

「智慧の子だ」

「智慧の子か」


 精霊達が光り出した。なにやらしきりに興奮している。


「おいら、初めてみた!」

「わしもだ」

岩爺(いわじぃ)でも?」

「ああ、初めてだ」


 オルデンは、ニヤニヤと愉快そうに精霊達を眺める。


「よろしく!」


 山の精霊達は、我先にオルデンの額に触れた。



「デン、ここ来たこと無かったの?」

「ここなあ、ノルデネリエのやつが来るかも知れねぇだろ」

「なんで?パロルのこと、みんな忘れちゃったんでしょ?」

「王家の奴らは、ヴォーラを探してるらしくてよ」


 オルデンの言葉に、精霊たちがざわめいた。


「北の精霊は、昔のやついないと思うよ?」

「みんな搾り取られちまうか濁るから、昔のこと知ってるひとは消えちゃってるんじゃない?」

「俺も詳しくはわかんねぇが、聞くところによると、王命で砂漠の精霊剣てやつを探してんだ」


 オルデンはうんざりしたように言う。



「それ、砂漠の魔女がヴォーラを呼ぶときの名前だな」

「そうなんだ」


 オルデンはノルデネリエ王族から命を狙われている。抹殺しそこねた王の双子兄だと思われているからだ。剣の探索隊に出くわして、ついでのように消されたらたまったものではない。


「正しい歴史は失伝してんのに、ヴォーラだけはしつこく探してんのかよ」


 枯れ葉の精霊が顔を真っ黄色にして憤慨する。オルデンは宥めるように眉を下げて答える。


「あいつら、ヴォーラがどんな姿かも知らねぇくせに、自分達のもんだと思ってるからよ」

「カガリビは、覚えてる奴いねぇって言ったのに?」


 ケニスは恐怖に顔をこわばらせる。オルデンは、手を繋いだ子供たちを纏めて軽く抱き寄せる。2人はぎゅっとオルデンのお腹に顔を押し付けた。


「すげぇ剣があるってことだけボンヤリ伝わってんのさ」

「愚かなことだ」


 岩の精霊がため息をつく。



「ヴォーラの精霊は砂漠の叡智で守られとるから、簡単には縛れぬ」

「けど、剣を持ってかれたら、いつかはそこに棲んでるヴォーラも縛られちまうかも」


 オルデンは眉間に皺を寄せる。


「それで、ヴォーラは隠してあったんだね!」

「そうだな、ケニー」

「でもオルデン、やっぱり分からないわ」


 カーラが口をへの字に曲げる。



「パロルを忘れた人間達が、なんでここに剣を探しに来るの?」

「パロルは忘れても、ここは古戦場として知られてるんだ」

「まあ。嫌な話ね」


 カーラは頬を膨らませる。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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