表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第二章 森の外へ
57/311

57 学び始めるふたりの子供

 ケニスとカーラが髪や瞳の色を変えることに納得したので、ひとまずオルデンは安心した。ケニスは素直だし、カーラも納得すれば従う。もともとイーリスの子孫を導く者として生まれた精霊だ。ケニスにとって幸せな方を選んでゆく。


「よし、そしたら明日から色を変えて慣れてこうぜ」


 森の外に出る時にいきなり色を変えても、自分や相手の姿に馴染めない。何かに映った姿に驚いたり、隣にいるのに探そうとしてしまったり、不審な行動をする場合もあるだろう。


「慣れないといけないのね」

「そうだな」

「緑のケニーは、今日までなのね。お揃いの瞳もゆっくり見ておかなくちゃ」


 カーラは残念そうにケニスの姿を眺める。



「いつか戻せる?」


 ケニスは心配そうにオルデンを見る。


「また、カーラ虹色になれる?」

「なれるさ。全部終わったらな」

「わかった」

「ケニーも緑と虹色に戻るわね」

「ああ、勿論だとも」


 ふたりの子供は心配事が解決して笑顔になった。



「じゃあ今日は、森の外のことを話すか」

「うん、教えて」

「オルデンは森の外に長くいたの?」

「どうだろうな。はっきりとは分かんねぇな」

「分からないの?」


 カーラが少し馬鹿にしたように眉をひそめる。ケニスはその表情を見て不機嫌になる。


「森に来てからだいぶ経ってるからな。外と森と、どっちが長いのかなぁ」

「そんなの、どっちだっていいじゃねぇか!」

「なによ。ちょっと聞いてみただけじゃないの」

「こら、お前ら喧嘩すんな」


 ケニスはオルデンのことになると怒りっぽい。カーラはケニスの味方だが、炎から生まれた精霊だけあって気が短いようだ。



「オルデン、辛い思い出なんだろ?話して大丈夫かよ?」


 カガリビが聞いてくる。


「知っとかなきゃいけねぇこと言うだけだ。心配してくれてありがとな、カガリビ」

「よせよ、感謝されるようなことじゃねぇや」

「デン、森の外は怖いとこなの?」

「親もいねぇチビにゃ、きつかったってだけさ」


 オルデンはニヤリと余裕ぶってみせる。ケニスはその様子に安心してニコリと笑う。



「森の外じゃな、食うにも着るにも(かね)ってやつがいるんだ」


 3人は話しながら、洞窟の入り口付近まで来ていた。いつも暮らしているエリアである。オルデンは壁際の盗品に近づいてひょいと屈む。


「ここにはあんま置いてねぇがな」


 言いながら、オルデンはガラクタの中からいくつか金属や宝石の欠片を拾い出す。拾い上げたものをお腹の辺りで擦ると、ケニスとカーラの顔の前に持ってきた。


「こっちの丸いのがカネって言うんだ。食いもんと交換出来る。こっちの光るやつは、カネと交換出来る。食いもんと交換出来ることもあれば、出来ねぇこともある」

「ふうん」


 子供達は、興味津々でオルデンの手元に視線を集めた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ