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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第二章 森の外へ
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56 森を出る前に

「まずは、ケニーがこいつを使えるようになんねぇとな」


 ヴォーラを顎で示しながらオルデンは言う。ヴォーラは、砂漠の魔女に対抗できる唯一の手段とされているのだ。


「森から出たら、先生探さねぇとダメだな」


 オルデンの提案に、カガリビは懐疑的だ。


「森から出て大丈夫か?下手すっとケニーが生きてることバレるぜ?まあ、ヴォーラを知ってる奴も今はいねぇとは思うが」

「んなこと言ったって、俺じゃ剣なんか教えらんねぇし」

「精霊たちに噂を聞きながら、先生探すしかないわね」


 カーラもオルデンに同意する。



「ジャイルズが人喰い龍を倒した時には、最初は物として投げつけたんだぜ」


 カガリビは尚も森から出ることに難色を示す。


「だいたいケニーはこいつを持ち上げることだって出来ねぇじゃねぇか」

「俺、がんばる」


 ケニスは勇ましく眉を(いか)らせるが、カガリビは止めようと必死だ。


「せめて剣をこっから持ち出せるようになるまでは、森で暮らしたほうがいいんじゃねぇの?」

「それも一理あるな」


 オルデンもとうとうカガリビに同意した。



「ノルデネリエの様子も調べてからの方がいいかも知れねぇしな」


 オルデンは改めてこれからのことを考える。


「なあ、カガリビ、ジャイルズもシルヴァインも、ほとんど魔法が使えなかったってことだが、ケニーは魔法が得意だよな」

「そうだな。ヴォーラの力を誰よりも引き出せるかもな」

「ほんとっ?」


 ケニスは虹色の目をキラキラさせる。


「そうね。あたしもそう思う」


 カーラも請け合った。


「ケニーは魔法の練習をする必要はねぇから、しばらくは今まで通りだな」

「えーっ?」


 やる気を見せていたケニスはがっかりする。



「あー、でも、森の外のことは色々覚えねぇとな」


 オルデンも勉強はしたことがない。だが、旅暮らしが長く様々な地域の習慣を知っていた。


「まず、森の外に出るなら、お前らその色じゃダメだな」

「デン、人間には無い色って言ってたねぇ」

「緑の髪、綺麗なのに」


 ケニスとカーラは不満そうだ。


「カーラの髪もとっても綺麗だ」

「眼はお揃いよね」

「うん」

「あたし、ケニーの緑と虹色、好きよ」

「俺もカーラの虹色、好きだな」



 オルデンは苦笑いをして、綺麗に剃り上げた頭をつるりと撫でた。


「残念だけど、目立たねぇ茶色がいいと思うぜ」


 それを聞くと、ケニスはじっとオルデンの眉毛を見た。


「デン、色変えてるの?」

「いや?俺はずっと焦茶と紫色だよ」

「そっかー、じゃ、俺も焦茶と紫色にする」

「ケニーが焦茶と紫色にするなら、わたしも」


 オルデンは頷くと、2人の肩をぽんと叩いた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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