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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第一章 国境の森
36/311

36 川の輝石

 同じ頃、ジャイルズは、精霊からの情報で北の地域に牛や羊がいると知った。砂漠の魔女と戦って以来、ジャイルズは精霊達と仲良くなっていたのだ。


「それは良い知らせだが、交換するものがあるかねえ」

「肉や魚にゆとりが出たとは言っても、向こうは家畜を飼ってるからなあ」

「毛皮や東の川で採れる輝石(きせき)となら、家畜が交換できるのじゃないか?」


 城の生き残りと家畜を失った牧場の生き残りが、村の寄合で意見を交わす。ルフルーヴの城近くに流れる川からは、精霊を呼び寄せる不思議な輝く石が採れた。それを輝石と呼んでいた。


 輝石は精霊の気まぐれで、採れたり採れなかったりする。暮らしに余裕がないと、見つかるかどうか分からない物を探しにゆくような暇はない。だが、イーリスの登場で、人々には時間のゆとりが生まれた。イーリスとジャイルズは、肉だけでなく魚や山の幸も村にもたらすようになったのだ。



「でもどうやって牛や羊を連れてくる」

「ジャイルズと精霊様なら、森を通って家畜をエステンデルスまで連れて来られるのじゃないか?」


 多くの村人達にはイーリスのことが見えない。だが、ルフルーヴ王国は精霊を大切にしていたのだ。ルフルーヴには魔法がない。そもそも精霊との交流ができる人間は数が少ないため、精霊は不思議な存在として尊敬されていた。


「どうだい、イーリス?」


 寄合にもイーリスは同席していた。精霊を見ることができる兵士も、証人として出席している。


「いいわよ」

「けど俺、買い付けとか出来ねぇぜ?」

「それは私が行こう」


 牧場の生き残りが名乗り出た。


「俺も行くよ」


 精霊が見える兵士が言った。兵士は弓も扱える。イーリスが来る前は、狩の当番に組み込まれていた。



 北に行くメンバーが決まってから、ジャイルズとイーリスは2日に1度は輝石の採集にも出かけた。人間だけでたくさん拾うと、川に住む精霊達が怒ってしまう。精霊は綺麗なものが好きなのだ。交渉役にイーリスがゆく。当然ジャイルズも連れてゆく。


「ねえ、あなたたち、こんなにあるんだから、輝石をいっぱい貰ってもいいでしょう?」


 川底の砂には、精霊達が隠した輝石がぎっしりと埋まっていた。水を伝ってそこらじゅうから集めているのだ。集めたことさえ忘れられた石や、既に消えてしまった精霊が埋めた石もある。これは普通の人間には見えないようになっている。


「ちょっとだけだぞ」


 川に住む精霊達は、ジャイルズが龍殺しだと知っている。恐ろしい人喰い龍は、人だけではなく精霊も喰らったのだ。ジャイルズがいなければ、精霊すら全滅していただろう。


 ジャイルズは大恩人なので、川の精霊たちは秘蔵の輝石を渋々ながらも差し出した。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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