表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
最終章 不在の王妃
277/311

277 魔女の元へ

 ヴォーラを無事に受け取ったケニスたちは、そのまま魔女の心臓を探しに出かけることにした。


「おい、闇雲に出ていったって」


 火口箱の精霊がボッと細い火柱を上げる。


「闇雲じゃないわよ。引っ張られる方へ行ってやるのよ」


 カーラは怒ったように眼を吊り上げる。


「なあ、カーラ。そいつぁノルデネリエを幸せに導く道ってやつなのか?」


 鍛冶屋が気遣わしそうに聞いて来た。


「そうよ。カンテラの光は魔女の力が濃い方を示しているわ」

「鍛冶屋さん、きっと砂漠を解放するからね」

「ケニー、本当に大丈夫なのかよ?」

「心配いらないのよ、鍛冶屋さん」


 カーラが虹色の眉を吊り上げる。


「そう言ったって、カーラとケニーは精霊だろう?」

「俺はちょっぴり精霊、たくさん人間だから、何ともないんだぜ!」

「何ともは言い過ぎだがな」


 オルデンが茶々を入れる。ケニスは既に、精霊の部分を押さえ込む術を身につけたのだ。大人たちはすっかり安心している。サルマンも微かに眼を細めた。



「じゃあな、鍛冶屋さん。ヴォーラを丈夫にしてくれて、本当にありがとう」


 ヴォーラも嬉しそうに白く輝く。


「ったく、ヤバそうならすぐに戻って来いよ?」

「心配しなさんなって。ケニーもカーラも、この2年でだいぶ逃げ足が速くなったんだぜ」

「逃げ足?」


 鍛冶屋は狐につままれたような顔をした。


「逃げるに勝る手はねぇんだぜ」


 オルデンはニタリと腕を組む。泥棒稼業で身につけた隠れ身と逃走術は、休むことなく子供達に伝授して来た。


「生きてりゃ、なんとかなるもんさ」

「そりゃまあ、そうだが」


 鍛冶屋は何となく機嫌が悪くなる。自分も、危なければさっさと逃げ帰るように、という意味のことを言っていたのだが。



「魔女の呪いだってな。無理にケニーが消さなくたっていいんだ」

「俺がやるよ?」


 ケニスは不服そうにオルデンを見下ろした。森から砂漠に来る間に、いつしか養い親の背丈を追い越していたのだ。


「その意気や良し。だがな」


 サルマンが珍しく意見した。


「引き際も肝心だぞ」

「分かってるさ」

「ヴォーラも戻って来たしね」


 ケニスとカーラは自信有り気に胸を張る。


「じゃあな、もう行くぜ」


 オルデンが鍛冶屋の肩をポンと叩いた。


「無理はすんなよ」


 ヒョイと顔を出したアルラハブが言った。


「シャキアが泣くからな」


 オルデンは苦笑いで応える。



 ケニスたちは、魔法で身の回りに壁を作って遠ざかる。万が一魔法が使えない時に備えて、全身を布で保護するのも忘れてはいなかった。サルマンも魔法の恩恵に預かっている。本人には魔法が効かないので、オルデンは、靴や洋服に砂や熱を防ぐ魔法をかけたのだ。


「全く、砂漠だろうが氷の海だろうが四六時中動こうなんて、気がしれねぇぜ」


 鍛冶屋は憎まれ口で送り出すと、バタンとドアを閉めた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ