表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
最終章 不在の王妃
276/311

276 道中

 カーラが顔を曇らせた。虹色の火の粉がパチパチと髪の毛の上で弾ける。最近は多少抑えられるようになったのだ。そこらじゅうに撒き散らして焦げ目を作るのは、もう昔の話だった。


「砂漠の魔女はそのうち、心臓のままでも動き回れるようになるかも知れないわ」

「弱点を晒しながらは動かないだろう」


 オルデンは、楽観的だ。


「砂漠の魔女は、ギィと違って身体を捨てたからね」


 ケニスも同じ考えだった。


「自分が動く必要はねぇんだろうぜ」


 オルデンは推察する。


「魔女の手下や捕まえた精霊を使って、邪法の勢力を伸ばしてるのかしら」

「その通りだ」

「砂漠の外までは直接魔法を放てなくなっても構わないんだろうね」

「けど、それ、ギィより簡単に勝てそうじゃない?」


 カーラの表情が明るくなった。


「心臓を見つけて燃やしたら終わりよね?」

「うん。心臓だって、ギィみたいな小細工はしてないんじゃないかな」

「単純で助かるわね」

「その分、警護は手厚いだろうぜ」



 サルマンが眉を寄せた。


「なあ、ギィって奴は砂漠の魔女の仲間なんだろ」

「そうだね」

「魔女の心臓を見つける時に邪魔して来るんじゃねぇか?」

「それを狙ってんだ」

「え?ケニー、そうだったのか?」


 ケニスの余裕にサルマンは驚く。


「言ったろ?ギィは放っておいても勝手に襲って来るだろうって」

「一度に2人を相手にする気か」


 硬い声を出すサルマンに、ケニスは歯を見せてニッと笑う。


「その方が効率的だろ?」

「きつくねぇか?」


 悪鬼との戦いでギィの邪法に触れた記憶が、サルマンの心に陰を落とす。


「邪法の連中は、魔法や精霊の力を吸い取る道具を使うんだろ?」


 ハッサンもそれで窮地に立たされた。


「俺は生まれつき運はいいんだぜ!」


 ケニスは自信満々である。カーラは目を輝かせてケニスの腕に抱きついた。ケニスはサッとキスをする。


「ケニーは、ヴォーラに認められた継承者ですものね」

「そうさ。ご先祖のジャイルズが拾って投げたヴォーラが、ルフルーヴを荒らした人喰い龍の急所に刺さったように、運は俺に味方すると思うんだ」

「運任せだけじゃ危ねぇけど、ケニーは魔法なしの鍛錬もしてるからな」


 ハッサンから習ったのは精霊剣の使い方だ。ハッサンは曲刀遣いだった。ヴォーラは直剣である。剣そのものの扱いは、ハッサンが教えることは出来なかった。だが、歩法や体捌きはしっかりと身につけていた。


「それもそうだな。両方出来るのは強ぇな」

「へへっ、だろ?」


 ケニスはキラリと虹色の瞳を光らせた。


「調子に乗るなよ?ケニー」

「乗らないわよ、オルデン。ケニーはちゃんと分かってるんだから」

「ありがとうカーラ」


 2人は嬉しそうに見つめ合い、大人たちは空を見上げた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ハッサンの死を乗り越えて、随分とケニスが大きくなった気がします。砂漠の魔女とギィの関係も少し気になりますが、あの歌を歌ったおばさんも気になりますね。 「こんな子どもだったなんて」という言葉は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ