275 ヴォーラを受け取りに
「魔女の信奉者?」
オルデンは眉間に縦皺を寄せる。
「大昔から砂漠に住んでる邪法使い達のことらしいわ」
「魔女の手下か?」
「うん、そんな感じらしい」
ケニスはバリーたちに聞いた話から推測したようだ。
「あの人が里に流れ着いた話も、どこまでホントなんだろ」
「精霊達まで騙されたんだわ」
カーラが憤慨した。
「何を企んでたんだろう。精霊とエステンデルスが和解しちゃったから逃げたのかな」
「そうね、ケニー。危なかったわね。あいつ、隠れ里を邪法の拠点にするつもりだったんじゃないかしら」
「あいつ自身は邪法の気配がなかった」
ケニーは顔を曇らせる。
「そうね。不思議だわ」
その疑問にはサルマンが解答を与えた。
「スパイだってバレないように、わざと邪法を学ばないで、少しずつ魔女の信奉者を里に移住させてたんじゃねぇのか?」
「あいつ以外にも、居なくなった奴がいるのかもな」
「青い花がそんなこと言ってたねー!」
カワナミがヒョイと空中から顔をだす。
「おい、ヴォーラ直すの終わったぞ」
焚き火からはアルラハブが現れた。
「見に行こうぜ」
カガリビも出てきた。
「うん。すぐに行こう」
ケニスはパッと顔を輝かせて再び洞窟の外に出る。
「まてケニー、なんか食ってから行こうぜ」
オルデンは、顔の周りを飛び回るカワナミを手で払いながら言った。
「途中で食べればいいよ」
「しっかりと腹ごしらえをして、一気に鍛冶屋まで行くほうが効率的だ」
「そうね。そのほうがいいかも」
「そうかなあ」
「俺も食ってからがいい」
大人たちの意見が一致したので、少年少女は仕方なく従う。とはいえ、オルデンも早く出かけたいのはやまやまだった。普段、下処理は魔法で済ませるが、今回はその手間も惜しんだ。そのまま食べられるような短期保存の食べ物を軽く炙って食事にした。
柔らかく干した魚、燻製肉、生で食べられる野草やキノコ、水分の多い漿果などで、サラダプレートのような一品を作る。カワナミの水で洗ったり、カガリビたちがあぶったり、精霊の手伝いもあった。
オルデンは風で食材を刻んだ。ナイフよりも早く大量に切れるからだ。いつもは、作る過程も楽しむためにナイフを使うのだが。カーラとケニス、そして魔法の使えないサルマンは、平らな石や大きな葉っぱを用意して盛り付けを手伝った。
腹が膨れて気持ちも穏やかになり、一同は砂漠へと旅立った。実に2年ぶりである。
「2年前よりも気配が濃くなってるね」
砂漠の端でケニスが言った。
「益々力を溜めてやがるな」
オルデンが頷く。
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