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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
最終章 不在の王妃
274/311

274 魔女の信奉者

 シャキアがオアシスにオルデンの面影を求めていた頃、精霊大陸では当のオルデンが干した薬草を取り込んでいた。オルデンやサルマンと連れ立って洞窟に入ったケニスは、何気ない口調でエステンデルスの噂話を伝えた。


「今日、バリーとコンラッドが来てたよ」

「ほう、相変わらず情に厚い2人だな」

「うん。いい人たちだよね」


 ケニスはにこりと頷いた。ハッサンの死を乗り越えて、笑顔が戻ったケニスであった。



「エステンデルスにも、近々魔法部隊ができるんだって。精霊の友騎士団て名前に決まったらしいよ」

「部隊どころか、独立した騎士団じゃねぇか」


 サルマンが珍しく食いついた。ここにいる他のメンバーは、国や組織とは無関係に生きて来た。因縁はあっても、国の制度や組織のしがらみには組み込まれずに過ごしているのだ。


 バリー達の騎馬槍隊がエステンデルス騎兵団の一部であることは、なんとなく理解している。だが、正直なところ、新設団体が隊だろうが団だろうが、それどころか国であろうとも、違いはよくわからないのであった。



「すごいことなの?」


 ケニスが疑問を口に上らせる。


「魔法使いたちの実力が認められて、信頼もされてるってことさ」


 サルマンが説明した。


「あんなに嫌ってたのに?」

「現実を見て考え直したんだろ」


 ケニスの疑問には、オルデンが答えた。


「たった2年でそこまで来たのね」

「あの日を知らない奴らは、まだ魔法使いを疑ってんだろうけどな」


 オルデンは、人間の偏見がそう簡単には変化しないことを知っている。オルデン自身、長いこと人違いでつけ狙われているままだ。


「一部の連中だけでも本当のことを解ってくれて、良かったじゃねえか」

「だよな。流石に目の当たりにした連中は否定もしねぇだろうよ」


 オルデンの見解に、サルマンが同意した。



「そういえば、あの呪い歌のおばさん、いなくなっちゃったんだって」


 2人の槍騎兵は精霊が見えるので、隠れ里訪問隊に抜擢されたという。隠れ里訪問隊は、今までの誤解と差別を詫びて、今後の交流を求める友好使節だ。隠れ里がエステンデルス庇護下の自治区になったのも、この訪問隊の交渉が実ったからである。


 バリーとコンラッドは、エステンデルス騎馬槍隊に所属したまま、訪問隊にも参加していた。精霊を介さなければ、隠れ里の民と会うことすら出来ないからだ。そして、1人でも多く精霊の友を連れていれば、里や精霊たちの警戒もそれだけ薄れる。



「2人があの歌のこと、里で聞いてくれたんだけど、誰も歌を覚えてなかったんだ」

「歌ってたおばさんのことも、綺麗に忘れちゃってたのよ」

「精霊もおばさんのことを忘れてるのか?」


 オルデンが不審がる。


「ルフルーヴ城跡の精霊たちも、一緒にいなくなったのよ」

「おい、そりゃあ」

「バリーたちは、魔女の信奉者だったんだろう、って言ってたわ」


お読みくださりありがとうございます

続きます

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