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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
最終章 不在の王妃
236/311

236 貪欲な精霊喰い

 光は別れて矢の雨にも似た形をとった。光の矢には、虹色に輝く火の粉がまんべんなくまぶされていた。ノルデネリエ魔法船団の後方では、ハッサンが同じようにサダを奮っていた。青い光は波打つようにして、船団の上へと落ちてゆく。


 同時に、ノルデネリエ魔法船団の周囲はドーム型の霧が発生していた。目を凝らしてよく見れば、川霧の精霊や霞の精霊が勢いよく飛び回っている。土煙の精霊や、吹雪の精霊もいた。



「気づかれたな」


 オルデンが呟く。


「邪悪とはいえ、あっちも一流の魔法使いだからな」


 ケニスもハッサンも、攻撃を隠そうとはした。だが、派手な輝きは、流石に見えてしまったようだ。


「ヴォーラ、今こそ、幸運を力に!」


 ケニスの呼びかけにヴォーラが応える。ケニスが放った光の矢は、魔法船団を守る霧のドームをすり抜けてゆく。精霊が作り出す防壁には、僅かな隙間が時々できるのだ。


 流動的にしておく事で、魔法や武器を受け流す。或いは精霊を絡めとって、邪法の餌食にしてしまう。敵の力を捕まえ取り込む為に作られた穴だ。しかし、ヴォーラの幸運によってケニスの攻撃を通した。



 川面に並ぶ船団は、隊列を崩さず丘の方角へと遡る。光の矢を迎え撃つ魔法の波で、ケニスとハッサンの攻撃は削られた。だが、サダの光は川風の精霊を縛る道具を壊した。


 シューっと鋭い軌跡を描いて、川風の精霊がハッサンの元へやって来た。無言でその額に祝福を与えると、ハッサンが乗る沖風の精霊にしがみついた。


「ありがとうな!ゆっくり休んどけ」


 ハッサンのねぎらいに、川風の精霊は嬉しそうに頬を緩めた。サダの青い光が船上で渦巻き、甲板の邪法使いが攻撃を連射する。防壁になっている霧を維持する精霊たちからも、攻撃用に力を吸い取り始めた。



「奴等、守りを捨てたな」


 ケニスたちが放った最初の攻撃で解放された精霊は、3分の1程にも上る。だが一方で、力を吸い尽くされて消えてゆく精霊も多かった。


「鳥、道具の場所を炙り出せ!」


 ハッサンは急降下して、船団の真っ只中へと乗り込んだ。初撃はとにかく運任せだ。奇襲で生まれた混乱に乗じて、ハッサンは邪法の集団を切り捨ててゆく。斜めに体を捩り、沖風の精霊がノルデネリエ魔法船団の乗組員を縫って飛ぶ。


 すり抜けざまに風で煽れば、髪が持ち上がる。服が捲れる。隠されていた邪法の道具が露わになった。ネックレス、ベルト、腰飾り、腕輪。その形態は様々だ。大きさや色も違う。見分ける決め手となったのは、どれにも刻まれていた古代精霊文字である。



「風たち!サルマンに合図を」


 ハッサンの見極めた好機を、風がサルマンとオルデンに伝える。


「逃げたらオルデンの方へ」


 精霊たちは、オルデンから力をもらって回復できると踏んだのだ。


「急げ!やつら貪欲に精霊を喰らってやがる」


お読みくださりありがとうございます

続きます

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