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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
最終章 不在の王妃
234/311

234 配置

 ケニスたちは、ノルデネリエ魔法船団を見下ろす上空にいた。魔法と精霊の力で、水上の邪法使いからは気取られていない。オルデンとケニス、そしてカーラは集まってくれた精霊たちの気配も覆い隠す。精霊たちは、雨雲のようにルフルーヴ川上空に広がっていた。


「みんな、準備はいい?」


 ケニスは風の精霊に頼んで、広い空に浮かぶ精霊の雲全体へと言葉を届けた。


「いいよ!」

「いつでも行ける」

「地上班もオッケーみたいだねー!」


 河岸に並ぶ柳と大岩の陰には、サルマンが身の丈ほどの剛弓を構える姿があった。こちらも、精霊たちが姿を隠してくれていた。



 改めて、ケニスは集中する。白い幸運の光がヴォーラの剣身を包む。沖風の精霊がやって来た。背中には、今回もハッサンが乗っている。


「ハッサン、休んでなくて平気?」

「ハッサン、具合はどうだ?」


 ケニスとオルデンの気遣いに、ハッサンはニッと白い歯を見せる。それから、解けて首に垂れていた口を覆う布を片手でキュッと撒き直す。目付きがキリリと鋭さを帯びる。


「後ろの塊は任せてくれ」


 宣言と共に、後を振り返らず船団の後方へと飛び去る。マーレン大洋沖に吹く風の精霊は、自慢の尾羽を誇らかにゆらめかせ、青空を滑って行く。



 ハッサンも位置に着いた。遠くにサダの青い光が見える。


「そういえば、サダも幸運なのに青いのね」


 今更ながら気がついたカーラが、不思議そうに言った。


「ハッサンのは、純粋な幸運じゃないからねー!カーラ、なあんにも知らないんだー?」


 カワナミがゲラゲラ笑う。


「不愉快だわ。カワナミ!」

「契約精霊だもんねえー!知ってる事もできる事も、限りがあるよねーっ!アハハハハ」

「デロンの悪口言ったわね?」



 カーラは、デロンの籠と呼ばれる道具が、精霊の力を借りて生み出した力の欠片である。同時に、イーリスが遺した最期の息吹だ。本体が消えている。


 籠の形は様々だが、カーラの場合はランタンだ。虹色の瞳を持つイーリスの子供たちを幸せな方へと導く。その光を生む道具である。ランタンの外で人の姿を取っていても、中の炎は小さく揺れている。カーラ自身が本体であり、切り離された小さな力がデロンの籠に込められているという状態なのだ。


 普通は契約が満了すれば力の欠片は本体へと戻る。精霊が力を貸したままで道具が壊れると、力が欠けてバランスを失った本体は暴走してしまう。カーラの場合は逆である。イーリスはもう消えて久しい。カーラはいわば、デロンが籠で保護したイーリスの子供だ。


「たくさん知ってりゃいいってもんじゃないわよ」


 カーラは、虹色の火の粉を飛ばす。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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