228 一転攻勢
誤字チェックに来たら、予約投稿し忘れて執筆中小説にいました。そのため今、投稿しました。すみません、。
南の砂漠が、魔女のせいで精霊に嫌われてしまった。そう聞いたケニスは、とても悲しそうな顔をしている。悲しみと共に決意を込めて、ケニスは、オルデンに向かって提案をした。
「ねえ、デン」
「なんだ、ケニー」
オルデンは、ケニスのただならぬ様子に思わず顔を強張らせた。
「ギィの奴はほっといても勝手にあっちから来るでしょ?」
「だな。来るな」
「そしたらさ」
「うん」
「ギィはひとまず置いといて、南の砂漠に魔女の心臓を探しに行こうぜ」
オルデンは、ケニスをまじまじと見る。精霊の気ままさと、森で育ったおおらかさ。そして、愛されて育った者の証とも言える、確固たる自信。好戦的とも取れるような、攻めに転じたケニスの提案は、思いやりと矛盾しない。
「いいんじゃねぇか?」
オルデンは父親の顔になって同意した。
「まあ、ほんとうに?」
静かに聞いていた話し手が言った。微かに顔が上気している。先祖代々の悲願、砂漠の呪いを解く日が来るのだ。予言を成就すると思われるのは、まだほんの少年である。信じられない気持ちがあった。
「精霊と砂漠で暮らせるようになるかしら」
ケニスはイーリスの子孫だ。ノルデネリエからの避難民から、直系王族に現れる髪と目の色について聞いている。ケニスは、精霊の血を継ぐ王子だ。もしかしたら、本当に全てが良くなるのかもしれない、という期待もあった。
「うん。きっとなるよ」
ケニスは、はっきりと請け合った。
「精霊も人間も、呪いなんかが無くなれば、すぐに仲良くなれると思う」
「そうよ。精霊たちは、魔女の気配が嫌なだけなんですもん」
カーラも力強く頷いた。
「精霊たちの祝福だって、好きなだけ貰えるようになるわよ」
「そうだね!」
ケニスは、隠れ里の民が精霊の祝福も貰えずに息を潜めて閉じこもっていることを、気の毒に思っていた。ここは地下だ。陽の光は届かない。
「おばさん、人間て、お天道さまの光を浴びないと、病気になってしまうんだろ?」
ケニスが里の人たちの健康を気遣う。年長者と話し手は、嬉しそうに顔を見合わせた。
「心配してくれて、ありがとうね」
話し手が言えば、年長者も、
「それにはちゃんと、方法があるんですよ」
どうやら秘密があるらしい。里の人たちは健康なようだ。ほのかな素焼きランプしか無いので、顔色がはっきり分からない。加えて今は、カーラの炎で部屋中が虹色に染まっているのだ。
それでも、みな肉付きが良く、動きにおかしな様子もない。幸い、深刻な病気の人は見当たらないのであった。
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