213 扉を開けるには
カーラのランタンが示す虹色の道を辿り、オルデン、ケニス、カーラの3人は青い花のところまで来た。崩れかけた壁に沿って回り込むと、カンテラに照らされて叢の一部がチラチラと点滅していた。
「扉かな?」
ケニスは川床にあった遺跡の魔法錠を思い出す。
「デロンの扉じゃないわね」
「でも、魔法錠みてぇだぜ」
オルデンは、生い茂る草を掻き分けて地面を調べた。
「見た目には何にも変わった所はないみたいだけど」
ケニスも真似して草を寄せては地面を見分した。
「どうやって開けるのかしら」
カーラはカンテラの光を右へ左へと向けて、変化がないか調べた。何処へ向けても、同じ虹色の炎が星型に瞬くだけだった。
「カワナミ、魔法錠得意だろ?」
オルデンが期待を込めてカワナミを見る。カーラがランタンごと保管されていた川底の遺跡では、カワナミが地下への錠を開けたのだ。幻影砂漠でも、現地の水から情報を得ていた。
「あそこで生まれたから、何故か知ってたけど、ここは無理だねー!アハハハハ」
「何よ。幻影半島でも周りの水に聞いてたじゃない。役に立たないわね」
「ここのはよく分かんないけど違うんだよー!カーラだって開けられないくせにー!ハハハハハ」
カーラは言い返せずに頬を膨らませた。
「関係ないひとが鍵開けちゃダメなんじゃないかねえ?」
すっかり元気を取り戻した枯草の精霊が言った。定位置となっているオルデンの肩から、興味なさ気に手をひらひらとそよがせている。
「そうか」
オルデンが得心して、枯草の精霊の手に人差し指で触れた。
「えーっ?でも、ランタンは道を照らしたわよ」
「そうなんだよなぁ」
ケニスは思案顔だ。
「どうしたもんかな」
オルデンが空を仰ぐ。真夏の雲が真っ白に流れてゆく。風は程よい強さで、視線を戻せば雲の影が叢を泳いでいた。
「扉は、この辺りだと思うんだが」
その時、丈が高く青い花の中から、花の精霊が顔を出した。
「あら、イーリスの血筋の子?」
「そうだよ!」
ケニスが勢い込んで答えた。花の精霊は、青い花を帽子にし、細長い葉を縦に並べたドレスを着ていた。肌は緑色で、眼は青紫色だった。
「威勢がいいのね」
花の精霊は、小さな緑色の手を口に当ててクスッと笑う。
「ここに、何かイーリス縁のものはある?」
ケニスの問いに、花の精霊はオルデンを見て躊躇した。この丘の精霊は、オルデンやケニスに祝福をくれない。草のウサギもそうだった。何かを強く警戒している様子だ。
「大丈夫。オルデンは仲間だよ」
花の精霊は、幾分ほっとした顔になった。
「それに、イーリスの子孫と間違えられて、大変な目にも遭わされたんだ」
「まあ!それじゃ、あなたも避難しなくちゃ」
花の精霊はハッとして身を乗り出した。はずみで、腰掛けていた花から落ちかけてしまった。
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