15 オルデンは仲裁する
「どうした!ケニー、無事かっ」
ケニスはオルデンを見つけると、ばっと抱きつく。そして、糸が切れたようにおいおいと泣き出した。
「ケニー」
オルデンは優しく名前を呼んでケニスの背中をさする。カワナミは心配そうに側にいる。
「あいつっ!契約精霊のやつっ!デンが嘘つきって!」
ケニスは涙の合間に訴える。
「はあー、しょうがねぇなぁ」
オルデンは天を仰いで嘆息する。
「よしよしケニー。もう大丈夫だぞ」
ケニスは黙ってしゃくりあげる。
「ケニー、カーラに外を見せてやれ。そしたら解る」
ケニスは鼻水を垂らしながらオルデンの顔を見る。
「デロンの籠は、壊れてないなら決められた人間にしか動かせねぇからな。カーラは外を知らないのさ」
「教えなくていいっ」
ケニスは頬を膨らます。
「なあ、ケニー、決めたんだろ?」
オルデンは困ったようにケニスを見る。
「とりあえずはカーラの話を聞いてみろよ」
「デロン連れてこいしか言わねぇんだ」
「うーん」
「あと、オルデンの悪口言った!」
オルデンはまた上を見る。
「はあ、仕方ねえ。カワナミ、ヤバい時は時の精霊呼んでくれ」
「分かったよ!扉の前で待ってる」
「あんがとな」
「何言ってんだよ!友達だろ?だけどオルデン、カッコ悪いなあ」
「何がだよ」
「ひとりでアイツを黙らせる自信ないんだろ!」
カワナミは調子を取り戻してゲラゲラ笑った。ケニスも周りの水で鼻水を洗って、少し元気になる。
オルデンはケニスを抱き上げて、扉の中に入る。カーラは慌てて焔の姿に戻った。
「いいか、カーラ」
オルデンは厳しい声を出す。
「契約精霊なら、契約を守れ」
虹色の焔は不安定にチラチラした。
「カーラが何を言ったか知らねぇがな」
カーラはまた、虹色の火の粉を撒き散らす。威嚇しているらしい。ケニスを歓迎した時とは違って、色が虹色ではあるが普通の火の粉だ。嬉しい時は星形になるのだろう。
「お前ぇの言ったことで、ケニーが濁った」
カーラは激しく火の粉を散らす。
「お前ぇだ」
オルデンは厳しく声を低める。
「ケニーが濁った時、一緒にいたのはお前ぇだけだ」
虹色の焔は、小さくなったり細長くなったり忙しなく形を変える。カーラは動揺しているのだ。
「カーラ、お前ぇはノルデネリエの王族の為に生まれたんだろ?」
「あんたになんか、何にも言わないわよっ!」
カーラはとうとう声を上げた。
「けど今、お前ぇはケニーを傷つけた」
「知らないっ」
「カーラ、精霊が濁るって意味は知ってるな?」
「あんたに関係ないっ」
ケニスが恐ろしく冷たい顔で虹色の焔を見下ろす。オルデンの腕の中でじっと押し黙っているが、怒りがふつふつと煮えたぎっているのが傍目にも解った。
お読みくださりありがとうございます
続きます




