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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第三章 幻影半島
147/311

147 水龍の試し

 ケニスは、気を取り直して自己紹介をした。


「こんにちは。俺はケニーだよ」

「カーラよ。よろしくね」


 カーラはそっぽを向きながらも、ようやく挨拶をした。


「俺はオルデン。俺たち3人は、精霊大陸から来たんだ」

「俺はハッサン。こっちは遠い国から来たバン」

「私はシャキアです。オアシスの遺跡でカンテラを作ってます」

「俺たち、オアシスの精霊に連れてきて貰ったんだ」


 大人たちが挨拶を済ませ、ケニスが説明をした。



 龍は全身を震わせた。鱗がシャラシャラと音を立てる。建物を取り囲んでいた水の壁は、中庭の花々を映して揺れた。花の形は溶け合って、鮮やかな色が混ざり合う。


「オアシスの鳥が連れてきたんなら、まあ、宝を見せてやらんでもないが」


 厳かな声が宝物殿の屋根から降ってくる。同時に、水が針となって降り注ぐ。


「えっ、何だよ!」


 ハッサンが間抜け面になりながらサダを抜く。風が水の針の軌道を変えた。すると今度は水の礫が飛んでくる。水なのに当たると硬い音がした。


「いてっ」


 バンサイが思わず目をつぶる。


「何すんのよ!」

「挨拶したじゃないか!」

「私たちは何もしてませんよ?」


 子供たちが抗議をすれば、シャキアも珍しく目を吊り上げる。


「何がしたいんだ。宝を見せてくれるんじゃねぇのかよ」


 オルデンが水龍に詰問する。


「宝物殿の中は魔法に満ちている」

「ほう、そんで?」

「外から来た魔法に触れたら、何か変化が起こるかもしれない」

「ん?暴走とかか?」

「そうだな」

「俺たちを中に入れたくないなら、口で言えよ」


 オルデンが苦々しい声を出す。



「いや、自分で対処が出来るか試したのだ」

「失礼ね」

「試さなくても分かってくれたらいいだろ」


 水龍の言葉に、カーラとケニスが文句を言った。水龍は細長い顔を上下に分ける、耳まで裂けた大口を開ける。ギザギザの牙は金色に光り、縦長の瞳孔は、ぎょろりとした銀色の瞳の中で細まった。


「怖くないわよ!」


 カーラが叫ぶ。


「笑ってんじゃね?」


 砂のトカゲが言った。



 オルデンは呆れたように目を細め、穏やかな声で龍に話しかけた。


「なあ、もう入ってもいいか?」


 水龍はしばらく無言で瞬きをしていたが、やがて口を閉じ、スルスルと建物を降りて液体に戻る。そして、扉の中へと引っ込んでしまった。


「え、ちょっと!」


 カーラが腹を立てて、虹色の火の粉を飛ばす。ケニスはカーラの手を握って注意をひいた。


「みて、カーラ。開くよ」

「何よ、もう!開けるって言ったらいいでしょ!」


 観音開きのモザイク扉がギーッと音を立てて外側に開いてゆく。どうやらこの宮殿では、扉が外開きと決まっているようだ。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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