表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第三章 幻影半島
135/311

135 遺跡の空に月は傾く

 ひとしきりわいわいとバンの絵を眺めた一同に、ふと沈黙が訪れた。月は傾き、ケニスは眠そうである。カーラは精霊なので眠くなったりはしない。精霊が眠るのは弱っている時だけだ。しかし、今は人間の子供のふりをしているので、食事も取るし眠りもする。


「今日はもう移動もしないし、ケニーたちはもう寝かさなきゃな」


 ハッサンが子供たちを気遣った。オルデンはニッと笑ってケニスとカーラの頭を撫でる。


「今日はいろんなことがあったなあ」


 ケニスは頷く。


「うん!逆さまになったし、昔の人や町をみた!面白かった」

「デロンがいたわ」


 カーラが嬉しそうに言った。



 シャキアが膝を屈めて子供たちに声をかけた。


「ねえ、オアシスの宮殿に行ってみませんか?」


 時の老人が見せてくれた映像では、真昼の水面に華やかな色あいの宮殿が映っていた。岸辺には無い、水の中だけにある宮殿だ。真っ青な壁に玉ねぎのような形をした金色の屋根を乗せて、豪華な姿を見せていた。


「明日?」


 ケニスがあくび混じりに答えた。


「そうですね。運が良ければ明日」

「運が悪ければ?」


 ケニスは不安そうに聞く。


「オアシスの精霊に頼んでみましょ」

「水の鳥だね?」


 ケニスは、映像に出てきた水でできた鳥の姿をした精霊を思い浮かべる。カワナミが笑いながら飛び回る。


「鳥の宮殿なの?」

「そうじゃありませんけど」

「シャキアは行ったことある?」

「いいえ、話を聞いたことがあるだけです。見たのもさっきが初めてですよ」

「オアシスの鳥、どうやってあの宮殿に行くのか知ってるかなあ」

「オアシスの精霊だもの。道を開いてくれるかもしれませんよ」


 シャキアはニコリと笑う。



 オルデンもつられて笑うと、子供たちの肩をそっと押す。


「何にせよ明日だ。今日はもう寝な」


 魔法の風が暖かに子供たちを包み込む。冷たそうな石の床だが、ケニスとカーラは心地よさそうに横になる。バンサイは子供たちを取り巻く空気に手を伸ばす。


「魔法ってなぁ、やっぱり便利なもんでごぜぇすなぁ」


 面白そうに周りの冷気と暖かい空気を交互に触りながら、バンサイは目を細めた。


「水の中でも絵は描けますかね?」

「描けるさ」


 オルデンはバンサイの疑問に答えて、もうぐっすりと眠り込んだ子供たちを優しく眺める。


「まわりに空気を置いとくからな」

「へーっ、そいつぁ凄えや」


 カワナミは笑い転げる。バンサイには見えないので、特に気を悪くすることもない。作業場の炉には、炉の炎から生まれたアルラハブが胡座をかいていた。いつのまにかカガリビと仲良くなって何か話している。砂のトカゲはデロンの工房だった場所を歩き回っている。枯草の精霊はオルデンの肩で皆の様子を眺めていた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ