124 何かがある筈
デロンの過去を知った一行だが、閉じ込められ問題はまだ解決していない。なぜカーラのランタンがこの部屋に導いたのかも解らない。
「何にも無いねぇ」
「でも、ケニーが幸せになる何かがあるはずよ」
「記録があるわけでもねぇしな」
「こんだけ見事に残ってんだから、何かはあるんじゃねぇの?」
ハッサンが、あちこち押したり摩ったりしている。オルデンは砂のトカゲに改めて聞く。
「何か覚えてることねぇか?」
「そうだなあ」
「トカゲは鍵にどんな力を貸していたんだ?」
「ああ、それなら、悪い奴を追い払う役目をしてたんだ」
「どうやって?」
「この道具は、見えない壁を作って入れないようにする魔法の鍵で、そこに砂の力を貸して、無理に入ろうとする奴を足元の砂で遠くにやっちまうのさ」
部屋を一通り見て回ったカーラとケニスが、トカゲの隣に戻ってきた。
「鍵直らないかしら」
「時の爺さんにデロンの作業を見せてもらったことがあんだけどよ」
「見たのか?」
ハッサンが驚いてオルデンに聞く。
「見たけど、ありゃ、無理だ」
「どうしてだよ?」
「デロンの知識と本人の魔法がなけりゃ、デロンの籠をどうにかすることは出来ねぇのさ」
他人がなにか細工を加える隙を与えない、デロンだけの道具だったのだ。
「時のお爺さんに頼んで、壊れる前に戻せないの?」
カーラが言った。
「そうだよ!そうして貰おうよ」
ケニスも乗り気だ。
「そいつぁ名案だな」
ハッサンも大きく頷く。カツラギ・バンサイは、ただ呆気に取られていた。精霊とも魔法とも縁が薄い身の上で、次々に想像もつかない世界の話を聞かされているのだ。頭も心も追いつくことが難しい。
「時の爺さんは、命に関わることでもありゃあ、ちょっと昔に連れてってはくれるがなあ。物の時間は戻せねぇ。たいていは昔のことを見せてくれるだけだ」
「そっか」
ケニスはがっかりする。他の皆も黙り込む。
「デロンの籠はな、デロン以外が使う復元魔法も阻害するようになってる」
「せめて登録されちまったバンが魔法使いならなぁ」
オルデンの説明に、ハッサンがため息をつく。マーレン大洋の上で魔法を習ったハッサンだが、彼はもともと精霊刀の継承者だった。主に風だけとはいえ、精霊とも仲が良い。バンことカツラギ・バンサイの場合は違う。彼には精霊がまったく見えない。今から教えても、覚えることは出来ないだろう。
「家主の魔法なら、なんとかなるかも知れねぇのにな」
「何だい、そりゃあ」
バンは不服そうに呟く。壊れた道具の犠牲者なのだ。責められた気がして不満なのである。
「悪ぃ、責めてるわけじゃねぇよ」
オルデンが慌てて弁解する。
「カーラが連れてきてくれたんだから、やっぱり、ここには何かあるはずだぜ!」
雰囲気が悪くなりかけたところで、ケニスが声を上げた。
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