表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第三章 幻影半島
123/311

123 デロンの工房を調べる

 自信満々でこの遺跡の魔法錠を開けられるというカワナミに、オルデンが疑いの(まなこ)を向ける。


「この遺跡に来るの初めてなのに、魔法錠が開けられるなんて、本当かよ」

「何言ってるのさ?オルデン!水は何処にでもあるんだよ?ここの水に聞けば、扉の秘密も解るのさ!」

「すげぇな、カワナミ」


 オルデンは感心した。カワナミはひとしきり笑い転げると、くるりと前回転して、月光に水飛沫を光らせた。それから、迷いなく虹色の道を奥へと進む。居合わせた人間と精霊は、ぞろぞろと後に従う。皆で、カーラのランタンが投げかける星の形をした虹色の光を辿る。



 虹色の光が途切れる場所に到着すると、カワナミはリズミカルな足取りで砂を踏んでゆく。水でできた足が砂を洗い、敷石が現れる。足が触れる度にその場所が光り、最後には床が消えた。


「階段がある」

「階段ね」


 子供たちが穴の中を覗き込む。


「崩れてねぇようだな」


 カーラの灯りを頼りにオルデンが検分する。ハッサンとカツラギ・バンサイは黙って地下を見ていた。カーラのいた川底の遺跡と違って、ここの遺跡は誰でも地下に入れるようだ。精霊たちが気にせず階段を降りてゆく。



「砂がないわね」

「守られてんだな」


 地下の空間には砂がなく、空気も綺麗だ。ランタンの投げる虹色に浮かび上がる部屋は、殆ど何もない場所だった。


「作業台かしら」


 石を積んで作られた台が中央にある。壁沿いには棚があるが、何も載っていなかった。


「壊れてないのね」

「汚れてもない」


 カーラとケニスは、並んで部屋を見て回る。


「魔法がかかってるんだな」

「何もねぇのに?」


 オルデンが棚や台の状態を確かめると、ハッサンが疑問を投げかける。


「デロンは魔法で加工したからな」


 砂のトカゲが台の傍に立って言った。この精霊は、デロンの時代からいるのである。



「ここにデロンがいたのね」

「そうさ。この町で生まれて、最初は鍛冶屋の小僧だったんだが、いつのまにか魔法で不思議な道具を作り出してな」


 砂のトカゲは、デロンが子供の頃から知っているようだ。


「デロンの籠は売り物じゃねぇから、ちょっとした日用品を加工したり直したりして暮らしてたんだ」

「そんな暮らしをしてたのねぇ」


 カーラは親のような存在であるデロンの話に興味深々である。ケニスも黙って聞いている。オルデンは、精霊の見えないカツラギ・バンサイに通訳している。


「ある時、隊商がやって来て、デロンはついて行っちまった」


 この辺りの精霊たちは、デロンが戻る日を待っていた。デロンがいた頃の精霊たちは小さく不確かな者たちで、次々と消えていった。トカゲも待ちくたびれて眠ってしまったという。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ