表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第一章 国境の森
11/311

11 カーラ

「きみはデロンを知ってるんだね?」


 ケニスはふたりの精霊の言い合いに割って入る。それに応えて、虹色の光が誇らしげに瞬いた。


「当たり前でしょ!デロンの籠に棲むものですからねっ」

「いや、カーラ、それ蔑称」


 オルデンが困った顔をする。


「ベッショ?なにそれ?話しかけないでよねっ」

「うわあ。失礼な精霊だなあ。カケラの癖に」

「何ですって?チンピラは黙ってよ!」


 精霊たちがまた喧嘩を始める。


「契約精霊を馬鹿にして、デロンの籠に棲むものって呼ぶんだよ」

「馬鹿にしてるですって?人間の分際でっ!」

「デロンも人間だけどな」

「デロンはデロンよっ!」


 虹色の焔はパチパチと火花を散らす。



「そうだな。デロンはデロンだ」


 オルデンは白い歯を見せて言った。


「そうよっ!早く連れてきなさいっ」

「また!智慧の子になんて口聞くんだよ、このカケラ」

「おい、カワナミもいい加減にしろ」


 やれやれとたしなめるオルデンに、カワナミは怒りのあまり弾け飛んだ。それから渦になって戻ってくると、また姿を現して捲し立てる。


「オルデン、コイツの味方なのっ?なんで?智慧の子にも火焔の御子にも祝福の礼をしないじゃないか!精霊だったらしないはずない!ただの力のカケラだろ!」

「おいおい、さっきは無理やり精霊の姿にさせられるとか言ってたんじゃなかったか?」


 オルデンは呆れて指摘する。



 ケニスは心配そうにカワナミに声をかけた。


「カワナミ、どうしちゃったの」

「知らないの?精霊はね、ちゃんと友達(ともだち)がわかるんだよ」

「ケニーだってわかる!」

「そうじゃないよ、そうじゃなくて」


 カワナミはうまく言えずに、助けを求めてオルデンを見る。


「精霊と仲良く出来る人間はすぐに解って、祝福をくれんだよ。額にぴとってやんだろ?こいつら。あれだよ」

「あっ!元気になるやつ!」

「それだ」


 確かに、精霊たちは機嫌が良いと、人差し指でオルデンとケニスの額をつつく。オルデンの額には古代精霊文字はない。しかし、精霊が額に触れると最も相性の良い精霊を象徴する色で光るのだ。すると、触れられた人は心身共に元気になる。



「カーラはしなかった」


 ケニスはカワナミが言いたいことが分かった。


親友(カーラ)が聞いて呆れるよ」

「カワナミ。契約精霊はな、何かの為に生まれた精霊なんだよ。契約と関係のない人間や精霊には関心がないのさ」


 オルデンがカワナミに教える。火花を飛ばしてくるカーラと、泡を飛ばすカワナミを交互に見ながらケニスは緑の眉を下げた。


「で、カーラは()()親友なんだよ?」


 オルデンは精霊たちの争いを止めるのは諦めて、カーラに尋ねた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ