11 カーラ
「きみはデロンを知ってるんだね?」
ケニスはふたりの精霊の言い合いに割って入る。それに応えて、虹色の光が誇らしげに瞬いた。
「当たり前でしょ!デロンの籠に棲むものですからねっ」
「いや、カーラ、それ蔑称」
オルデンが困った顔をする。
「ベッショ?なにそれ?話しかけないでよねっ」
「うわあ。失礼な精霊だなあ。カケラの癖に」
「何ですって?チンピラは黙ってよ!」
精霊たちがまた喧嘩を始める。
「契約精霊を馬鹿にして、デロンの籠に棲むものって呼ぶんだよ」
「馬鹿にしてるですって?人間の分際でっ!」
「デロンも人間だけどな」
「デロンはデロンよっ!」
虹色の焔はパチパチと火花を散らす。
「そうだな。デロンはデロンだ」
オルデンは白い歯を見せて言った。
「そうよっ!早く連れてきなさいっ」
「また!智慧の子になんて口聞くんだよ、このカケラ」
「おい、カワナミもいい加減にしろ」
やれやれとたしなめるオルデンに、カワナミは怒りのあまり弾け飛んだ。それから渦になって戻ってくると、また姿を現して捲し立てる。
「オルデン、コイツの味方なのっ?なんで?智慧の子にも火焔の御子にも祝福の礼をしないじゃないか!精霊だったらしないはずない!ただの力のカケラだろ!」
「おいおい、さっきは無理やり精霊の姿にさせられるとか言ってたんじゃなかったか?」
オルデンは呆れて指摘する。
ケニスは心配そうにカワナミに声をかけた。
「カワナミ、どうしちゃったの」
「知らないの?精霊はね、ちゃんと友達がわかるんだよ」
「ケニーだってわかる!」
「そうじゃないよ、そうじゃなくて」
カワナミはうまく言えずに、助けを求めてオルデンを見る。
「精霊と仲良く出来る人間はすぐに解って、祝福をくれんだよ。額にぴとってやんだろ?こいつら。あれだよ」
「あっ!元気になるやつ!」
「それだ」
確かに、精霊たちは機嫌が良いと、人差し指でオルデンとケニスの額をつつく。オルデンの額には古代精霊文字はない。しかし、精霊が額に触れると最も相性の良い精霊を象徴する色で光るのだ。すると、触れられた人は心身共に元気になる。
「カーラはしなかった」
ケニスはカワナミが言いたいことが分かった。
「親友が聞いて呆れるよ」
「カワナミ。契約精霊はな、何かの為に生まれた精霊なんだよ。契約と関係のない人間や精霊には関心がないのさ」
オルデンがカワナミに教える。火花を飛ばしてくるカーラと、泡を飛ばすカワナミを交互に見ながらケニスは緑の眉を下げた。
「で、カーラは誰の親友なんだよ?」
オルデンは精霊たちの争いを止めるのは諦めて、カーラに尋ねた。
お読みくださりありがとうございます
続きます




