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不在の王妃  作者: 黒森 冬炎
第三章 幻影半島
109/311

109 砂漠の夜へ

 オルデンの一声で、ケニスとカーラが立ち上がる。


「ちょっと待てよ。砂漠に何しに行くんだよ?」


 ハッサンが慌ててやめさせようとする。


「デロンの故郷だって言うからな」

「幻影砂漠が?」

「そうだ。正確な場所は知らねぇんだが、海の精霊たちが噂してたぜ」

「デロンの故郷に行くのね!」


 カーラが興奮する。カーラはデロンによって生み出された契約精霊なのである。デロンのことは大好きなのだ。カーラのランタンを作り、イーリスの最期を見届けたデロン。その故郷は、精霊大陸では知られていなかった。オルデンは海の上での噂話を聞いていてくれたのだ。


「蛇、デロンは知ってるか?」

「いや、知らない」

「幻影砂漠に契約精霊はいるか?」

「聞いたことねぇ」

「デロンの籠って知ってるか?」

「いや。なんだ?」

「昔、デロンていう職人がいて、精霊に借りた力を道具に閉じ込めたんだ」


 オルデンの説明に、集まっていたアルムヒートの精霊たちは震え上がった。


「何そのひと」

「精霊の力を閉じ込めるなんて」

「お礼もしたし、約束ごとを決めて力を借りたんだよ」


 精霊は納得出来ない様子で、こしょこしょと囁き合う。


「精霊の力と道具の力が混ざり合って、契約精霊が生まれるんだ」

「デロンしか作れない凄い道具なんだから!」


 カーラが胸を張る。


「遺跡の奴らなら知ってるかもな」

「そんじゃ、その遺跡に行ってみようぜ」

「わかった。付いてきな」



 砂の蛇はするするとテーブルの脚を伝って床に下りる。ハッサンが慌ててガタンと椅子を鳴らす。


「おいおい、やめとけって。砂漠に行くなら水や食べ物を用意しねぇと」

「俺たちなら必要ねぇぜ?」

「オルデン、海とは違うんだよ」

「人目があんのか?」

「そうじゃねぇよ。隊商のルートを外れりゃ人気(ひとけ)はねぇけど」

「けど、何だ」


 ハッサンは必死に思いとどまらせようとする。


「水も食べられる生き物や植物も、砂漠にゃ殆どねぇんだよ」


 オルデンは、黙って魔法を使って木のコップを作る。中には水が入っていた。


「えっ?」

「海でも陸でも関係ねぇよ」


 驚くハッサンにオルデンが静かに言うと、カワナミは得意そうに高笑いをした。


「ウハハハハハハ!水は何処にでもあるんだよ!」

「空気から取り出せるからね!」


 ケニスも胸を張って付け加える。


「海でもそうやってたのか」

「そうだよっ!人間は海の水飲んだらおかしくなるから!」


 カワナミがゲラゲラ笑う。


「いや、それは知ってるが」


 ハッサンは船の護衛をしているので、海のことはある程度知っている。だが、ハッサンの返事を聞いてオルデンが不思議そうに眉を下げる。


「じゃあ、どうやってると思ってたんだ?」

「海水を魔法で真水に変えてると思った」

「それも出来るけどな」

「精霊に頼んで空気から集めるほうが早いよ」


 ケニスが当然だ、と言うように断言した。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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