10 水の中で燃える焔
一行はまた歩き出す。虹色の光が出てくる源を目指して進む。
「壊れた道具、観たことある?」
「あるぜ。たまに遺跡に落ちてる」
「ほんとに誰も直せないの?」
「そもそも今じゃ、古代精霊文化の遺跡だの精霊が宿る道具だのを見たり触ったり出来る奴が殆どいねえよ」
「試すことも出来ないんだね」
「その通りだ。やっぱりケニーは賢いなあ」
オルデンが親バカの顔になる。
「ねえ、直してみたことある?」
ケニスは期待を込めてオルデンを見上げた。
「あるぜ。無理だったけどな」
「駄目かあ」
「駄目だった」
「オルデンカッコ悪い」
オルデンの不甲斐なさに調子を取り戻したカワナミが、お腹に手を当てて笑い出す。
「ほっとけ」
「デンはカッコ悪くねぇよ!」
「いいってケニー。俺はカッコ悪い男だぜ」
「カッコ悪くねぇ!」
「ハハッ、ありがとな」
話すうちに壁に突き当たる。壁には象牙で出来た扉がついていた。小さいが観音開きの荘厳な造りである。ちょうどオルデンの顔くらいの大きさだ。
飾り彫りの模様には、焔を纏った飛竜とゆったりした服装の人間が繊細なタッチで浮き彫りにされている。人間は、手にランタンを提げている。
「ここだね」
「そうだな」
「あけるね」
「開けてみろ」
カワナミは無意味にクスクス笑っている。ケニスは象牙の扉に付いている輪っかを持ち上げ、左右に開く。すると、虹色の光が波となって更に溢れ出す。
3人は思わず目をつぶった。
「あら、ごめんなさい?まぶしかった?」
おしゃまな女の子の声がした。3人は目を開ける。水中の光は収まって、青みを帯びた金属製のランタンがその形を見分けられるようになった。
ランタンの中には、虹色の焔が燃えていた。水の中だと言うのに、ゆらめきながら確かに火焔を上げている。
「ケニーだよ。君はだれ?」
ケニスは焔に語りかける。声は確かに焔の中から聞こえてきたのだ。
「親友よ!」
虹色の焔は砂粒程の星の形を飛ばしてきた。
「わっ」
ケニスは思わず顔を覆う。当然、カワナミは笑う。
「あちちっ」
「なによっ!綺麗でしょ」
生意気そうな女の子の声に、オルデンは言い聞かせる。
「こら。火傷すんだろ。火の粉飛ばすなよ」
「煩いわね。あんた誰よ」
女の子の声は、ちっとも反省していない。カワナミが大笑いを浴びせた。
「ええっ?ぶははっ!智慧の子に何言ってんの?」
「ふん?あんたも何者よ?デロンはどこ?早く連れてきて」
「カワナミだよ!この川の精霊。デロンなんてとっくに死んじゃってるよ!ぶははは」
虹色の焔はバッと燃え上がる。
「死んだ?いい加減なこと言ってんじゃないわよ。このチンピラ!」
「チンピラじゃないよ。カワナミ!」
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