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深さと重さと  作者: 遠野義陰
第五章
40/55

Heading for spring Ⅳ『Overwrite』








 家に着く頃にはすっかり頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れになっていた。。

 寒い。季節柄仕方のないことではあるけれど、とにかく寒い。このままでは風邪をひいてしまう。

「三島」

 井上がか細い声で俺を呼んだ。

 すっかり体が冷え切ってしまったらしく、唇が紫色になってぶるぶる震えていた。

 やっぱりあのまま雨宿りしていた方が良かったのだろうか。

 歯の根も合わずに震えている彼女を見ているとそんな後悔が胸中に浮かんでくる。だがあのままあそこに居たとしても体が濡れたままだったのだから結果は同じか、むしろ悪くなっていたかもしれない。

 俺は彼女を玄関に待たせてタオルを取りに脱衣所へ向かった。そのついでに浴室を使える状態にしてからリビングに向かい、エアコンとファンヒーターの電源を入れた。

 玄関に戻ると井上はうずくまって震えていた。

 そばにしゃがんでタオルを渡そうとすると、縋るように抱きついてきた。

「大丈夫、じゃなさそうだな」俺はそう言いながら持っていたタオルで、手が届く範囲をわしわし拭いてやった。すぐにタオルは水を吸って重たくなった。

「寒い」と言った彼女の声は寒さに震えまくっていた。「寒いよ。三島」

「待たせてごめん。風呂の用意は出来てるから。立てるか?」

 うん、と彼女は頷いてよろよろと立ち上がった。

 上がりかまちの前で靴を脱いだ彼女は、しかし躊躇するように足を靴の上に降ろした。

「気にしなくていいよ」

 彼女の靴下の先から滴り落ちた雫を見て俺は言った。

 彼女は念のために、という風に一度こちらに目で確認をしてから足を上げて、上がり框を踏みしめた。水を吸った靴下が、ぐしゅ、と音を立てた。床に小さな水たまりが出来る。彼女はそれを気にしているようだが、すでに俺がずぶ濡れの状態で通ったので床はべたべただった。気にするだけ損だ。しかし彼女は申し訳なさそうに歩いていた。

「やっぱり後で良い」

 脱衣所につくなり彼女はそう言って俺に先にシャワーを浴びるように促した。

「遠慮するな。明らかにそっちの方が余裕無いだろ」

 寒いのは寒いがまだなんとかなる。血色だって井上ほど悪くはない。だから俺は「でも」と渋る彼女に、洗面台の向かいの棚にバスタオルがある事だけ告げて、さっさと脱衣所を出た。

 


 井上がシャワーを浴びている間に俺はファンヒーターの前で濡れた服を脱いで、体を拭いて、吹き出してくる温風で体を温めてから新しい服に着替えた。

 ソファに腰を下ろして、ようやく人心地ついてほっとした。が、それもつかの間、一つ大きな問題に気が付いて気分が落ち着かなくなってきた。

 井上の着替えがない。まさかせっかくシャワーで暖まったというのに元の服を着ろ、などと言える訳もない。かといって用意できる服もない。裾や袖の丈は足りないだろうが、怜のジャージならなんとかなりそうだけど、勝手に貸したとなると後で面倒だ。井上も、もしかしたら嫌がるかも知れない。

 仕方がない。と割り切って俺は自分のジャージを用意した。

 ついでに洗濯機に放り込んでおこうと思って脱いだ服も持って脱衣所に向かう。

 脱衣所の扉をノックしてみたが反応はない。耳を澄ませるとシャワーの音が聞こえる。どうやらまだ浴室でシャワーを浴びているらしい。それならば大丈夫だろう。念のため先に少しだけ戸を開けて様子を確認してから脱衣所の中に入った。脱衣籠の隣にいつもタオルを幾つか積み上げている籠がある。着替えのジャージはそのてっぺんに置いた。

「着替え用意したから」と浴室の扉に向かって声をかけた。

「ふぇっ!?」と中から普段聞かないような声が響いた。よっぽど驚いたらしい。

 暖かいシャワーを浴びてリラックスしているところにいきなり外から声を、それも男から声を掛けられたらそりゃびっくりするわな。

「ごめん。おどろかせて」と俺は言った。

「大丈夫」と彼女はうわずった声で答えた。「着替えって……?」

「俺のジャージだからサイズは合わないだろうけど」

「ううん。ありがとう。全然大丈夫。むしろ、」と彼女は言い掛けて言葉を飲み込んだ。しかし何を言おうとしたかはだいたい検討がついた。

「いっとくけど洗剤のにおいしかしないぞ」

「違うから!」

 どうやらまだ認めないつもりらしい。

 よく判らないが彼女なりの拘りがあるのだろう。やれやれと思いながら脱衣かごに目をやった。ずぶ濡れになった彼女の衣服が丁寧に畳んであった。

「それと、下着は用意できなかったから」

「ううん。平気」

 多分恥ずかしいとは思うけど、彼女は健気にそう答えた。

 やっぱり可愛げはあるよなあ、と思いつつ脱衣籠に目をやる。

「服乾かすから持って行っていい?」

 そう訊ねると風呂場から、がしゃん、と大きな物音がしたので「大丈夫か!?」と思わずドアに手をかけそうになって思いとどまり、それから「ごめん」と謝った。ついうっかりである。これが怜なら「うん。おねがいー」などと気楽に応えるのだが、相手は井上なのだからいつもとは事情が違う。

「ちょっとびっくりした」とドアの向こうで井上が答えた。それからしばらく逡巡するような間があってから、「じゃ、お願い」と消え入りそうな声で彼女は言った。

「本当にいいのか?」と俺は心配になって訊ねた。

「三島なら、良い。まかせた」

 ドアの向こう、磨り硝子風の加工が施されたアクリル板に映るシルエットはこちらを向いていて、上目遣いになっているのがなんとなく判った。

 もじもじしている彼女を想像するとやっぱり可愛げがあって、思わず口元がほころんでしまう。女の子を恥ずかしい目に遭わせて置いて不謹慎ではあるが。

「判った。まかされた」

 

 リビングに戻るとさっそく物干し用のゴム紐を張り巡らせた。

脱いだときに井上は自分で服を絞ったらしく、滴るほど水を吸っていた彼女の衣服はある程度脱水されていた。代わりにしわくちゃになっていた。相当テンパってたんだなと苦笑しながら、皺を伸ばしてからハンガーに掛けていく。当然のことながら下手な男物の服よりもでかい。けどその割に肩周りが小さい感じなのはやっぱり女の子の服なんだなあ、とか考えながらスカートも干す。後でアイロンをかけないとだめだな。

 下着はピンチハンガーで吊るした。上下とも黒の、どことなく大人っぽい印象のデザインをしていた。雨宿り中に見たうっすらと透けていた下着。その光景が脳裏に蘇り、なんとも言えない感慨にふけりつつ、扇風機を持ってきて洗濯物に向けて風を吹き付けた。暖房との相乗効果でこれでいくらか早く乾くはずだ。

 じっとしているのも落ち着かないので俺はキッチンに向かった。まずは電気ケトルで湯を沸かす。沸騰するまでの間にアッサムティーの茶葉とボウルを用意する。次に小鍋を用意して、そこに牛乳と水を注いで暖める。

 沸騰したお湯を、茶葉を入れたボウルに注いで茶葉を開かせる。アッサムティーの芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。そうこうしているうちに今度は牛乳の甘い香りが漂ってきた。沸騰し掛かった牛乳の水面に小さな泡が浮いている。ちょうど良い頃合いである。ボウルの中身を小鍋に移して火を止める。そして軽くかき混ぜてから蓋をして四分ばかり蒸らせば完成である。

 ひとまず味見を、と思い、茶漉しをかぶせたカップにミルクティーを注いだ。一口飲むと、牛乳のふんわりとした優しい香りとアッサムティーの豊かな香りが混ざり合い絶妙のハーモニィを奏でる。舌の上では牛乳の甘みと紅茶の渋みが程良く混じりあった濃厚で重奏的に絡み合った味わいがじんわりと広がっていく。素の状態を確認したのでここからは遠慮なく、と思い切って砂糖と蜂蜜をほどほどにぶち込んだ。どちらかというとミルクティーは甘い方が好きなのだ。甘さが加わったことによって味わいはより複雑に、しかし甘くて美味しいという単純化された感想に帰結する。そのシンプルな仕上がりこそが良いのである。舌をやけどしそうになりながらも、あっという間に一杯飲み干してしまった。

 ミルクティーの余韻に浸っていると火照った顔の井上がキッチンにひょっこり現れた。

 悲しいかな。俺のジャージでは彼女の四肢を十分に包み込むことは出来ず、上下とも七分とも八分とも言えない中途半端な丈になっていて、見ているだけで居心地が悪い。井上もしっくりこないようで少し恥ずかしそうだ。

「あ、そうだ。ミルクティー飲む?」

 いささか唐突であったが、服装のことにはあまり触れない方がよさそうだったので、俺はそう提案した。

「うん」と彼女は頷いた。

 すぐに彼女の分のカップも用意してミルクティーを注いだ。

 二人分のカップと、砂糖と蜂蜜をお盆に乗せてリビングに移動した。

 お盆をテーブルの上に置く。

 井上はソファに座らず物珍しそうにきょろきょろとしてから、自分の服が干されているのを見て顔を赤くして俯いた。

「ああ、その。デリカシーが欠けてたな。すまん」

「いい。ううん。良くないけど。でも、三島だから」

「とりあえず座ろうか」

「うん」

 頷いて彼女はソファに腰を下ろした。

 彼女の前にカップを置いて、それから彼女の隣に、少し距離をあけて座った。

 例の如く砂糖とはちみつをぶち込んでティースプーンでかき混ぜる。ティーカップを口元まで運びながら、目だけ動かして隣を見る。彼女は相変わらず、赤くなったまま俯いてぷるぷる震えている。

「冷めるとあんまり美味しくないぞ」俺は言った。

「うん」と井上は頷いたが、それだけである。

 一口紅茶を飲んでから、ソーサーの上にカップを戻した。

「ごめん、三島」と彼女は言った。「緊張しすぎて訳判らなくなってる」膝の上で震える両手を握りしめながら、「冷静になってみたら、これ、駄目な奴だ」

「いまさらかよ」俺は肩をすくめた。

「私、夢中になると、気が付いたら見境なく行動してることがあって、それで」

「それもいまさらじゃないか?」

 俺がそう言うと、彼女はすがるような目で俺を見た。

「本当はただ、三島が好きなだけなのに、なんで私は、こんな風に……」

「それが井上なんだろ」

 やれやれと思いながら俺はそう答えた。

「そんな、知った風に。人のこと、全然覚えてないくせに」

「確かにあの事故の前の事は判らないけどさ、でもあれからもう一年くらい経ってて、その間、なんやかんや一緒にいた時間が結構あった訳で。まあ知った風な口を利くなっていうのも判らないでもないけどさ。でも、友達としては一年もあればなんとなくは判るよ」

 彼女は無言のまま手を動かして、ミルクティーに砂糖を沢山入れて、それを飲んだ。

「甘いの好きなんだな」

「そうだよ。以外でしょ」と彼女は自嘲するように笑った。「私はかわいくないけど、でも甘いのは好きだしかわいい服も好き」

「可愛くないとは思わないけどな」

「そう? でも、いまだって。ほんとなら、男子のジャージを貸してもらって、サイズが合わなくて、袖口からちょとだけ指が出てて、裾は無造作に折り上げていて、そうやって可愛らしく居なきゃならないのに。こんな有様」

「いや、その。それはちょっと俺にも利いてくるからその話はやめないか?」

 もうちょっと手足が長かったらとか、そういうことをたまに考えるのである。公康がでかい上に手足も長い非常に良いスタイルをしているのでそれと比べてしまうのだ。

「でも別に、俺は井上が可愛くないとは思わないぞ。ただ、それ以上に美人できれいってだけで」

「……三島は私の事、なんとも思ってないんでしょ」

 恨めしそうに彼女は俺を睨む。

「まあ、友達であり、それ以上でも以下でもない」俺は正直に答える。

「なのにそんなこと言うなんて、卑怯だよ。なんとも思ってないクセに、私が三島のこと好きなのも判ってるクセに。それなのにそんなこと言うなんて。ひどいよ」

 そう言って井上はソファの上で膝を抱えた。

「三島を嫌いになれたらいいのにって思ったことが何度もある。何度もそう思って、そのたびに好きなことを再確認させられる。判る? すごく苦しいの。報われない気持ちを抱えてるってことを思い知らされて絶望して。だけど、三島は時々そうやって希望を見せてくれるから、私はそこで期待してしまう。もしかしたらって。そんなのあり得ないのに」

「俺は、ひどい奴なのかな」

「実質二股みたいになってる時点で、既にひどい。おまけに私や香奈をキープしてる。極悪非道。女の敵」

 酷い言われようだが反論できなかった。

「でも、私はそんな三島が好き。バカだと思う。でもこれからも好き。だから好きって言い続ける」

 そのうち通じるかもしれないから、と彼女は言った。

それは果たして途方もなく不毛な決意であると言わざるを得なかった。けれど俺にそれを笑う権利はない。そんな決意をさせてしまったことを悔いて向き合わねばならない。責任を取らなければならない。でもその責任ってなんだろう。俺は彼女の期待に応えられない。応えてはいけない。だから、責任を持って、彼女を俺から解き放たなければならない。それは多分、単純に遠ざけるだけでは達成し得ない。逃げれば追う獣のように、きっと彼女は離れない。それに彼女の意識だけの問題ではない。俺にも問題はあるのだ。だからこんなことになっている。

「三島。実は渡したいものが、ある」

 彼女は強ばった声で我に返った。

 こちらの返事も待たずに彼女はソファの足元に置いていた鞄のなかから、丁寧にラッピングされた丸い箱を取り出した。包装紙が少し濡れて、所々ふやけたみたいになっている。

 それが何であるか、などといちいち問うまでもなく、少し遅いバレンタインのチョコかそれに準ずるお菓子であることは明白であった。

「三島にとっては迷惑かもしれない。けど、受け取って欲しい」

 不安げに揺れる彼女の瞳。

 受け取るべきではないのかもしれない。だが、弱みを握られている手前、あまり刺激したくない。いまは穏やかだが、また脅してこないとも言い切れない。それに、あんまり井上にそう言うことをして欲しくなかった。いまになって気がついたのだが、さくらさんの部屋での時にしても、今日のことにしても、彼女は人を脅すくせに、その都度傷ついたような顔をするのだ。そんなのは見たくない。

「ありがとう」

 迷った末に俺は受け取ることにした。

「一応、手作り、だから」と緊張した様子でこちらを見つめる。いまここで食べて欲しい、という目をしていた。

 期待のこもった無言の圧力に耐えきれなかった。

 包装を解いて、箱の蓋を開ける。

 大きなハート型のチョコが鎮座していた。色合いからしてミルクチョコレートだろうか。溶かして諸々混ぜ合わせて型に流し込んで冷やした。ただそれだけのシンプルなチョコだった。

「そんなにまじまじとみないで」と彼女は言った。「恥ずかしい」

 あまり上手に出来ているとは言い難い。型から漏れたのか、チョコの下側が少し不格好だ。とはいえ、俺に食べさせるためになれないことをやったのだな、と思うと愛らしさを感じてしまうのは、男の性というものなのだろうか。

「それじゃあ。いただきます」

「うん」

 チョコを手に取り、それからふと考える。割って食うべきか直にかじり付くべきか。前者はなんだかハートを割るということに妙な抵抗があるし、かといって後者も同じくハートをかじるというところに罪悪感を覚えてしまう。だが食べると言ってしまった手前食わなければならない。そもそも手に持ったままじゃ溶けてしまう。意を決してかぶりついた。そこそこ分厚いチョコだったが、生クリームを結構混ぜ込んでいたようで、思いの外柔らかかった。口どけは濃厚で、とても甘い。一瞬なにか隠し味的な何かが喧嘩しまくってるような風味がしたような気がしたが、まあふでもつうに美味しいチョコレートだった。

「あの、三島」と不意に井上が左手の人差し指を見つめながら言った。「絆創膏、もらってもいい?」

「いいけど、怪我してたのか?」

 今日はそれなりに一緒に居たはずだったが気がつかなかった。それくらい彼女のことをよく見てなかったということか。そう思うとなんだか申し訳ない気がしてきた。

「ちょっとね」と彼女は苦笑した。

 キッチンの戸棚の中に絆創膏を常備しているのでそこまで取りに行く。箱から絆創膏を取り出したところで、ふとリビングの方を振り返ると、チョコを見つめながら井上が昏い笑みを浮かべていた。いやな予感がしたのと同時に、さきほどの妙な風味が脳裏によみがえった。

 いや、まさかな。湯煎する前のチョコを包丁で刻む過程でうっかりやらかしたのだろう。そう。きっとそれだけだ。

 リビングに戻って絆創膏を井上に渡した。

 彼女は受け取った絆創膏を指に貼りながら「チョコ、どうだった?」と訊ねた。

 俺はつい今し方思い至った可能性に戦慄しつつ、「美味しかったぞ」となるべく平静を装いながら答えた。

「じゃあ、食べちゃっていいよ」

 その口元に一瞬、愉悦とも言うべき感情をたたえた笑みを浮かべたのを、その目に恍惚とした艶が浮かぶのを、俺は不幸にも見てしまった。

 いや、考えすぎだ。そう思っているからそう見えるだけなのだ。そして疑念を晴らしたい一心で俺は訊ねた。

「そう言えばこれ、隠し味はなにかあるの?」

 井上ははにかんで、絆創膏を貼った指を撫でた。「秘密」

「どうしても?」俺は言った。

「秘密」と井上は答えた。もじもじと膝頭を擦りあわせながら。もう何も考えないようにしてチョコを食べた。

 一口ごとに隣で聞こえる息づかいが不自然に激しさを増して行ったような気がしたが、きっと気のせいだ。そうに違いない。

 美味しかったよ、と俺は彼女に振り向いて言おうとした。だがそうする前にソファの上に押し倒されていた。

「ごめん三島」と井上は言った。

「謝るならどいてくれないか?」

「それが出来ないから謝った」

 頬を上気させながら彼女は言った。二つの瞳が獰猛な光を湛えて俺を見つめている。完全に捕食者と被捕食者の構図である。

「私は三島が好き。三島のおかげでいまの私がある。だから、私は三島と一つになりたい」そう言って彼女は笑った。「チョコ、美味しかった?」

 怜が警戒していたのはやっぱり間違いじゃなかったんだなあ、と他人事みたいに考えながら「どうだろう」と答えた。

「私の事、嫌いになる?」

「なりそうだな」

「それは、嫌」

 そう言って彼女はジャージの上着のファスナを下ろしていく。彼女は素肌にそのままジャージを着ているのだ。そんなことをすれば胸元がさらけ出されるのは必定。

「三島に嫌われたら、私は多分、駄目になる」

「自分を大切にしろって言っただろ」

「言ったでしょ? 三島だからって。他の男の子にこんなことは出来ない」そう言ってから彼女は顔をしかめた。「そんなこと、想像しただけで吐き気がする」そして彼女は愛おしげに微笑んだ。「私が触れられるのは三島だけ。私に触れて良いのも三島だけ。三島は誰よりも特別だから」

 彼女は俺の胸板に崩れ落ちるようにして顔を埋めた。長く鼻で息を吸う音が続いて、ゆっくり吐き出す。呼吸をするごとに彼女の背中が上下して、腰がもじもじと揺れる。下着を着けないまま、サイズの小さいジャージを着ているからか、お尻の形が妙に生々しく見えて思わず目をそらした。

「三島が悪いんだよ」彼女は言った。赤信号を無視したお前が悪い、と言うのと同じくらいの非難と、だから自分は何も悪くないというくらいの責任転嫁が込められた言葉であった。「その気がないくせに。私を弄んだ罰。責任とって。私の青春は三島に奪われたんだから。相応の誠意を見せて」

「欲望に流されることを誠意と呼んでいいのか? 井上は本当にそれでいいのか?」

「名前で呼んで。あのときみたいに」

「なあ井上」

 俺がそう呼んだ瞬間、右肩の辺りに痛みが走った。

 井上に噛みつかれたのだ。

「ねえ。呼んでよ」

 歯を見せて笑っている。なのに目は傷ついた捨て犬みたいに悲しげだ。またこいつ自分でやったことで傷ついてやがる。

「呼んでくれるまで何度もするから。お姉さん、見たらどう思うだろうね」

 泣きそうな顔になっているのに本人は気付いているのだろうか。

「判ったよ。奈々子。けど、いまだけだぞ」

「うん」

 彼女は嬉しそうに、けれど悲しそうな目で頷いた。

「で、奈々子。そろそろどいて欲しいんだけど」

「嫌」

 このままでは埒があかない。俺は強引に彼女を払いのけようとした。いつの間にか両手を押さえつけられていたのでまずはそれをどうにかしなければならない。だから俺は力任せに振り払おうとした。だが、体勢が悪いのか力を入れた瞬間に右肩に痛みが走った。そして反射的に体に変な力が入って、刹那腰から鋭い痛みが返ってきた。

「駄目だよ。変な体勢で力んだら」獰猛な笑みを湛えて彼女は言う。

 いよいよここまでか、と諦めかけた時だった。ふと視界の端に何か白いモノが見えた。テーブルの隅のペン立ての横。綿棒がぎっしり詰まった円筒形のプラスチックケースである。

 井上が顔を近づけてきた。一瞬身構えたが、彼女の唇は俺の耳のそばに沈んでいく。そうなると当然彼女の耳元が俺の顔の目の前に迫ってくる。井上が何事か囁こうとした。その前に俺はほとんど反射的に彼女の耳に息を吹きかけて、ついでにさっきのお返しとばかりに軽く噛んだ。

 ひゃん、と悲鳴を上げて井上の体がびくんと震えた。そしてぐったりと弛緩した。これ幸いと俺は彼女の下から抜け出して、カーペットの上に転がり、そしてゆっくりと立ち上がった。少し痛みはあるけれど、思ったより腰の状態は悪くなさそうだ。

 俺は綿棒のケースを手に持って言った。

「妥協案を出そう」

 もそもそと体を起こした彼女は、ぼーっとした顔でこちらを見ながら「妥協案?」と首をかしげた。

「耳掻きだ」俺は言った。

「……いや」渋い顔で渋い返事をする。

「膝枕」

「くっ」

「耳、弱いんだよな」

 俺がそう訊ねると彼女は真面目な顔になった。

「三島が私の弱いところの穴をほじくる。つまりそれは最早セッ」

「わかった。つまりそれでオッケーということだな」

 突拍子もないことをいいかけていた気がしたので俺は彼女の言葉を遮って、強引にそう結論づけると、言うが早いか、彼女の隣に腰掛けて、そして膝を叩いて早く寝転べと催促した。

「三島。私、ママ以外に耳掻きしてもらうの、初めてだから」

「おう」こいつ母親のことママって言うんだな。と意外な事実に驚きつつ俺は頷く。

「あの、だから、よろしくお願いします。私の初めてだから」

「紛らわしい言い方するなよ」俺は苦笑する。

「……何を連想したの?」そう言ってくすっと井上は笑う。本人は何か蠱惑的な笑みでも浮かべているつもりなのかもしれないが、実際には口元だけ歪んだ非常に不格好な笑みになっていた。余裕がないのに無理をしてるんだな、と思うと今度はこっちが優位に立っている感じがして焦っていた気持ちが落ち着いてくる。

「馬鹿なこと言ってないでさっさと横になれ」

「健全な男子中学生はああいうので魅了されるって、聞いたのに」

「生憎そんなに健全じゃないんだよ」俺は肩をすくめた。

「言われてみれば、確かにそうかも」と井上は頷く。

「納得するなよ」

 俺はため息をついた。

 くだらないやりとりもそこそこに、井上は「おねがいします」と改まって言ってから、横になり、遠慮がちに俺の膝の上に頭を乗せた。

 他人の耳をまじまじと観察する機会などそうある物ではない。恋人である怜に限ってはそうでもないが、それ以外となると一生に片手で数えるくらいしかないのではないだろうか。或いは耳フェチであるなら話は別かもしれない。けど俺は別に耳に拘りはない。そう、耳とはあくまで顔の横についているもので音を集める機能があるとかそういう知識くらいしかないし、その美醜を巡って切り落とそうとか考えたことも当然ない。だがどうだろう、井上の耳を改めて観察してみると、なんだかとても綺麗に思えた。耳殻に走る溝が描く曲線とその陰影はまるで水墨画の様な静謐さと力強さを感じさせる。光を受けた産毛の一本一本が幻想的に煌めく様は早朝の露草を思わせる。普段は物静かな癖に秘めたる物が無駄にでかい井上らしい耳をしている。

「三島、そんなに見ないで」と井上が恥ずかしそうに言った。すると今度は耳が赤く染まって、薔薇のように可憐になる。

「いや、いい耳だなと思って」自分でもよくわからないが、とりあえず思ったままを口にした。

「ありがとう。で、いいの?」

「多分」

 なんとも間の抜けたやりとりである。だがそれで若干固かった井上の緊張は解けたらしく、リラックスした様子で俺の膝枕に身を任せている。これなら耳掻きがやりやすい。

「それじゃ、いくぞ」

 綿棒を耳殻の溝に沿わせる。

 ふあぁぁ、と井上が気の抜けた声で喘いだ。

 耳の外側の溝。特に耳の穴の周辺は地味に汚れがたまりやすいのだ。案の定、綿棒の先はすぐに黄色くなった。上下入れ替えて念入りに耳の穴の周囲を綺麗にしていく。その間彼女は口を半開きにしたまま恍惚の表情を浮かべていた。幸せそうでなによりだ。これが怜だといちいちどこが良いか注文を付けてくるので、こんなふうにのんびりしてられないのだ。とはいえのんびりし過ぎていてちょっと寂しいかもしれない。なんてことを考えていると両方とも綿棒が汚れてしまったので新しいのに取り替える。

「それじゃあ耳の穴、行くぞ」

 井上は恍惚の中に意識がすっかり溶けていて「うん」と答えたその声は甘えるような幼さを感じさせた。

 耳の穴の浅いところを綿棒の先で撫でる。

 声にならない吐息が彼女の口から漏れた。半開きの口から涎が垂れそうになっている。

 結構穴にも産毛が多いタイプなんだなあ、とか思いながら綿棒の先で耳垢をからめ取っていく。外耳道に貼り付いて膜みたいになっている耳垢は厄介であるが、剥がして行く過程にはとてもやりがいがあるし、とれたときの感動は一入である。そして井上も大層気持ちがいいらしく、大物がとれると、第三者が聞けば確実に誤解されそうな声で喘ぐのである。雰囲気に飲まれてこっちも気が変になりそうだ。しかし理性でしっかりと踏みとどまらなければならない。などと考えながら綿棒を奥に突っ込むと井上の体がびくんとふるえた。

「すまん。痛かったか?」

「ううん。すごく、気持ちよくて」

 彼女の横顔は陶然としていて、最早心は遙か彼方の桃源郷にさまよっているかの如く目は虚ろであった。

 一通り綺麗にして綿棒を引き抜くと、井上は「あぁ」とどこか不満げに呻いた。

「もっと」だだをこねるように彼女は言う。

「やりすぎはよくないんだよ」

「じゃあ、あれやって。ふわふわ」

 梵天のことだろうか。しかし綿棒にそんな気の利いた物はついていない。

「ちょっと立ってもいいか」

 耳掻き棒を取ってこなければ彼女の要望には応えられない。だが、彼女は「だめ」と言って頭を動かそうとしなかった。

「じゃあ梵天はなしだな」

「いや」

「あのなあ」

 そのとき俺はふと気がついた。井上のほっぺたが膨らんでいた。拗ねているのだろうか。しかし夏井とかならともかく井上がこういう表情をするのは意外だった。或いは、彼女は家の中では普段と違うキャラクターなのかもしれない。それがここで出たということは、それだけリラックス出来ているということなのだろう。

「三島」と彼女は拗ねた顔のまま、「耳、ふーっとしてくれたら、許す」

 許すって何様だよ、と思いつつ俺は体を屈めて彼女の耳に唇を近づける。そして、そっと息を吹いた。

 既に脱力しきっていた井上は、まるで魂が抜けたみたいにぐったりして、しばらく戻って来なかった。

 

    ※※※


 どうしてこうなったんだろう。彼の膝の感触を頬に感じながら、彼のにおいに包まれながら、私は心のドコかで、やってしまった、という後悔に苛まれていた。

 チョコを渡した辺りで、理性が軽く吹っ飛んだことに関しては反省している。けど、だからといってまさかこんな恥ずかしい状態になるなんて思ってもみなかった(もっとも今考えればこれ以上に恥ずかしいことを無理矢理迫っていたのだけれど)。これが天国のような何かであることは確かだ。けれど、だからこそ終わってしまうのが怖い。いま彼を独占していても、それはあくまで彼の情けによる施しにすぎないのだから。正気に戻ったらきっと私は悲しすぎて泣いてしまう。

 それでも私は彼の言うとおりに寝返りを打って反対側の耳を差し出す。まだ彼の吐息の余韻が残る右耳を彼の太股に押し当てて、目と鼻の先に見える彼の股の辺りをそれとなく見つめる。

 エッチなことにたいする興味は昔からあった。けど同時にそれを酷く嫌悪していた。

 私が所属していたバスケ部には結構遊んでる子もいて、そういうことをしたという話はよく耳にしたし、私が彼氏がいないと言うと紹介しようか、なんて言ってくる子もいた。でもたとえどんなイケメンでも見ず知らずの誰かを紹介されたって、気持ち悪いだけだ。私がまともに接することが出来る男子はごく僅かだ。三島と、栗原だけ。正直街中や校内を歩いているときに向けられる視線ですら少し気持ち悪い。都会で暮らしていた頃の、あの人がすし詰めになった空間で覚えた感触が、どこからか聞こえて来る息づかいの生臭さが、記憶の中から蘇るのだ。だから気持ち悪いし怖い。

 でも同時に私の中には三島にすべてを委ねたい欲求がある。沸き上がってくる青い情欲を彼に肯定してもらうことで、もしかしたら私はその忌々しい過去を塗りつぶしてしまいたいのかもしれない。

 綿棒が耳の穴をくすぐる。私は耳が弱い。満員の電車の中で、耳朶に触れた何者かの息を思い出す。気持ち悪い。彼が私の耳に触れる。それは気持ちいい。嫌な記憶はいらない。彼が与えてくれる甘い記憶だけでいい。だから、もっとしてほしい。もっともっと。そうやって私の中にある汚い物を綺麗に塗りつぶして欲しい。私を綺麗に、浄化してくれるのは、三島しかいない。

 恐怖で喉が凍り付いたいつかの記憶を踏みつぶすように、私の喉は嬌声を上げる。自分でもみっともなく思えるくらいに恥ずかしい声。彼は平気な顔で私の耳を弄ぶ。それが悔しいからもっと声を出す。あるいはそれは悲鳴なのかもしれない。私は救いを希って、淫らに鳴いている。耳に息がかかる。その瞬間、思考は真っ白なもやに包まれたみたいに濁って、体はふわふわとして、心臓が一瞬止まりそうになったあと、早鐘を打つ。

 気がつくと私は体を起こしていて、彼の膝の上に乗って至近距離で向かい合い、困惑する彼を見下ろしていた。背は私の方が高い。背が高い私を肯定してくれた彼は、私よりも小さい。でもそれでいい。だからこそ、私は自分を肯定できたのだ。彼を上から見おろすとき、いつもそう実感する。膝枕をしてもらって、下から見上げる彼も素敵だったけれど、こうして見おろすともっと素敵だ。

 ある種の熱病に浮かされていたのだ。或いは、体が冷えたせいで本当に熱があったのか。わからない。ただ頭はぼんやりとしていて、けれど重なり合った唇の感触は痛いくらいにリアルだった。強引に彼を抱き寄せて、ほとんど無理矢理唇を奪い取った。そうしてあの電車の中の事故としか言いようのないファーストキスを上書きした。


     ※※※


 静寂のなかに、エアコンの稼働音だけが響いていた。雨音は聞こえない。雨はすでにあがったらしい。

 俺の膝の上に乗って突然の行為に及んだ井上はまるで夢の中にいるような顔で俺を見おろしていた。

 すっかり呆気にとられて動けないでいると、彼女はもそもそと尻を滑らせて、俺の膝の上から降りた。そして干してあった服と下着をとって、リビングから出て行こうとする。

「ちょっと待った」

 呼び止められた彼女は泣きそうな顔をしていた。

「アイロンかけるから待ってろ」

 俺の言葉を聞いた彼女は拍子抜けしたように脱力して、それから笑った。

「どうして三島はいつも通りなの。キス、したのに」

「いつも通りに見えるか?」俺は肩を竦めてそう訊ねた。「突拍子もないことが起こると逆に冷静になるんだよ。いいからブラウスとスカートをこっちに寄こせ。そんなしわくちゃな服着せて帰らせたんじゃ申し訳ない」

「そっか。勘違いされちゃう」

「そう言う意味じゃねえよ」

 アイロンとアイロン台を用意して、さくっと皺を伸ばす。

 井上は隣でそれを、ぼーっとした熱っぽい表情で見ていた。

「三島」アイロンをかけ終えた服を胸に抱きながら彼女は言った。「いま、改めて惚れたかもしれない。胸がきゅんきゅんしてる」

「アイロン掛けしただけで?」俺は苦笑した。

「アイロンを持ってる時の手の、筋張った感じとか血管が、すごくいい」

「いいからさっさと着替えろ」

 そう言って俺は一度リビングを出た。



 

「もういいよ」

 彼女が呼ぶ声に俺はちょっとだけ警戒しながらリビングに戻った。幸い彼女はちゃんと着替えていた。もしかしたら、と思ったのだが杞憂で良かった。

 二人並んでソファに座る。

「その、ごめん」

 開口一番彼女はそう謝った。

「冷静になったら、すごいことしてたから」そう言って彼女は目を伏せた。「嫌いに、ならないで」

「嫌いにはならないよ」

「本当?」

 井上は背は高いし、ごつい訳ではないが体格はいい方だ。力だって強い。けど、いまの彼女はいつもより一回りも二周りも小さくて弱々しく見えた。

 そして彼女は遠慮がちに「お願い、してもいい?」

「聞くだけなら」

 俺がそう答えると、彼女は一度深呼吸をした。

「三島に、依存していい? 好きとかそういうのじゃない。ううん。そういうのもあるけど、でも、依存したい」

「斬新な告白だな」

「迷惑はかけない……いや、かけます。迷惑をかけるし面倒だとも思う。でも、そうしないと、私は私じゃいられないから」

「いいよ。って答えられると思うか?」

「だよね」そう言って彼女は強がるような笑みを浮かべた。「ごめん。忘れて」

 寂しそうな横顔で、彼女は俯いていて、膝の上で握りあわせた両手が震えている。それが内なる感情の発露ではなく、たとえ演技であったとしても、そうさせるだけの何かはある訳で、そして俺はそれをそのまま放っておけない面倒くさい人間であった。救済する、などという偉そうなことではない。多分俺も嫌われるのが嫌なのだ。いや、嫌われるのが好きな人間などそうそういないだろうけど、でもそういうことじゃない。未だに、入院中、さくらさんを待って、待って、待ちわびた、あの恐ろしいほどの孤独が、こういう時に脳裏を過ぎるのだ。厄介な、本当に厄介な呪いだ。

「好きにしたらいいよ」俺は言った。「俺はそれに答えられないけど、気の済むまで、好きにすればいいんじゃないかな」

「また、そう言うこと言うんだ」そう言って井上は笑った。「ならそうする」

 俺は応えなかった。

「じゃ、帰る。これ以上長居すると面倒なことになるかもしれないから」

「気をつけて」

「見送りは?」

「寒い」

「そうやって安直に帳尻合わそうとするの、嫌いじゃない」そう言って彼女は笑い、ソファから立ち上がった。

 また明日。そう言って彼女は鞄を肩に掛けるとリビングから出ていった。

 玄関が開いて、それから閉じる音が聞こえた。

 一人になった途端、どっと疲れが押し寄せてきた。

 気が抜けたついでに魂まで抜けたような感じがする。

 動くのが億劫だ。濡れた床を拭かないと駄目だし、そろそろ夕飯の支度もしなければならない。でも体が重たくて仕方が無い。ああ、そう言えばシャワー浴びてなかったなあ。なんて考えているうちに立っているのが辛くなってきて、ソファで横になった。少しだけ眠ろう。そう思って目を閉じた。途端に意識は遠のいていった。



続く 

多分彼女はお色気担当

次回は11/3頃です

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