33 騎士団の昼食
鏡の前で洋服と髪型のチェックをし、ママには出かける場所の了承を得ている。
「ママ、行ってきます!」
「スオウとマロンが一緒だから大丈夫そうね。
行ってらっしゃい。
気をつけてね!」
「はぁい!」
小走りでドルバルとレイブンの横を通り過ぎる前に「行ってきます!」と告げて外へ出た。
「気をつけるんだぞ?」
「おっ、騎士団の参謀様に会いに行くのか? それともデートかぁ?」
そう聞こえたが、頬を緩めながら小走りでスオウとマロンと外へ出た。
スオウは小さいまま私とマロンを背に乗せ、元の姿に戻り、立派なドラゴンの翼をバサッと広げ飛んだ。
「騎士団へ行く前にこの国を見て回ろう。
ルナには見ておかなければならないからな」
この方向はローバル国とスリチア国との国境だ。んっ? あれは……なんでここにローバルの騎士と王子、それにブリアンがいるの!
「スオウ……あれって、このスリチア国へ入ろうとしているの?」
スオウは空中で止まり、アレが何をしているのかを教えてくれた。
『アレはな、スリチア国へ入りワレとマロンの主になろうとしているんだ。
アレは発情期なのかは知らんが、サカリがついたメスそのものだな。恐ろしい幼子だ』
「ぷふっ。ちょ、サカリがついたメスって……でも、そうだね。
スオウとマロンも気をつけてね『サカラレル』と危険だから…ぷふふふっ」
ここから離れ、ぐるりとスリチア国を見て回るとお昼になっていた。この時間帯はお昼休憩で少しだけお話が出来るかもしれないと期待の気持ちが高まったまま騎士団の鍛錬場へ降りると、1人のケモ耳さんがこちらへ近付いて来た。
「こんにちは。
鍛錬の見学ですか?」
「はい!
でも、今はお昼休憩時間ですよね?」
なぜか困り顔になり、今問題が起きている事情を話してくれた。
「そうです。お昼の休憩なんですが、問題が起きてしまって……今日はお昼抜きになるかと……」
「えっ、それは大変!
わたくしを休憩所まで案内して下さい!
そのお昼抜きの問題が直ぐに解決出来ますので!!」
ぱぁぁぁぁ! っと顔が明るくなり、ケモ耳がピョコピョコと動く姿が可愛い。
「本当ですか!
休憩所へ案内します。
こちらです」
「はい。スオウ、マロン行こう」
案内してもらった休憩所では、皆さんが暗い表情で机に突っ伏す方やガックリと項垂れて床に座り込んでいる方が、こちらを見て、勢いよく立ち上がり挨拶をしているが、声に覇気がない。空腹で力が入らないのだろう。
さあ、スキルのお時間です!
前方に大きなテーブルが目に入り。あのテーブルに食事などを置いて、セルフで取って食べてるんだろう。
なら。
「どんな物がいいかな?
筋肉を鍛えるのだから肉・お野菜・汁物・果物……白米って、この世界にはないのよね。
焼肉丼・サラダ・かき玉汁を50個出して」
みるみるうちにテーブルの上には大量の焼肉丼・サラダ・かき玉汁で埋め尽くされていた。
「皆様、お昼休憩がなくなってしまう前に食べてください。
見たことない食事ですが美味しいですよ」
いきなりリュックに入ってるアイテムボックスから見たことない食事を出されても戸惑うのは当たり前。私でも同じ行動になるだろう。それに、ここは毒味が必要よね。リュックに手を入れ私の分を出し、みんなが見ている前で堂々と毒味という名の昼食を美味しそうに食べていると。
「お前達、何を放心状態になって見ているんだ!
エメルロ嬢、自ら毒味をしてはいけません。ですが、お優しいエメルロ嬢は我ら騎士団のことを放っておけなかったのですね。
お気持ちありがとうございます」
「いいえ、あの、わたくし……。皆様を放っておくことができなかったのです。昼食が無くては午後からの鍛錬に支障が出てしまいます。
それに、もし。鍛錬中にお呼びがかかり、そこで力が出せなかったら? 戦いだけではなく何かの判断に支障が出てしまっては後の祭りです!」
『そうだな、ルナの言う通りだ!
騎士は守りだけではないであろう?
この見たことない料理はルナの世界の物、食べてみるがいい。美味くて何度も食べたくなるであろう』
『ピピッッ! ビピュウッ!!』
珍しい、マロンが怒っているわ。
『マロンが言っているぞ。
黙って食えっ!! とな』
ノワール公爵様は私の手を取り膝をつき、感謝の言葉をかけてくれた。
「エメルロ嬢、我ら騎士団に料理を提供して下さりありがとうございます。
感謝しても足りない。先程エメルロ嬢が申してくれた言葉を胸に刻み、鍛錬に励みます」
笑顔でうなずき、早く食べてもらいたくて、ノワール公爵様に料理を渡した。
「温かいうちに食べてくださいね?」
「はい、ありがたく頂戴いたします。
お前達もエメルロ嬢に感謝して食べろ」
次々に料理が無くなり、お肉とタレの匂いに食欲がそそられたのか、一口食べると……。
「……んんっっ!」
【美味いっっ!!!!】
と、みんなの声が重なった。追加の料理を出してた方がいいかも。
その追加の料理も一瞬で無くなった。
「エメルロ嬢、本日の昼食。本当にありがとうございました。
また改めてお礼をさせて下さい」
ブンブンと顔を横に振り。
「いいえ、わたくしが勝手にしたことです。
もし、良ければなのですが、これからも鍛錬場に来訪してもいいでしょうか?」
「もちろんです! いつでも来てください」
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