098.爆弾アーティファクト
「あの!私のアーティファクト類、宝物庫の方にあるっぽいです!」
爆煙が残る中、一応敵がいないか確認しながら進む。
レンガの通路で時々部屋があったり分かれ道があって、ここは地下なんだろうな、と言うことしかわからない。
換気とかどうなってるのかしら。
「大丈夫だ、そっちに今向かってる。」
大吉さんが耳のイヤカフを指して言った。
「??今矢印出てるんですか?」
「?あぁ。ホラここ。」
そう言って何もない虚空を指さす。
「。。見えないんですよ。ソレ。
もしかしたら使用者達にのみ見えるんですかね。」
「。。。ソレはまたすごいな。。。
っと・・・じっくり実験するのはまた今度、な。」
そう言って人差し指を立てて口元に当てる。
何か、誰かいるのだろうか?
出来る限り気配なるものを消そうと試みる私。
「ここから動くなよ。」
そう言って手を離して濃い煙の中に飛び込んで行く。
キィン!という音と、一瞬の光と感電してるであろう音とで大吉さんがアーティファクトを使ったのだとわかる。
どさっと誰かが倒れる音と同時に大吉さんが戻って来た。
「これで6人目なんだが。。全員と当たるのは流石に避けたいな。。。」
全員と当たるって・・・
「敵意レーダーはやっぱり使えないんですね。。」
敵意を持たれてないと反応しないから。
護衛には使えるけど、探索向きのアーティファクトではないのでは。。。
クゥさんは何故ソレを作ったのだろうか。。。?
「敵意があるものだけに反応するからな。まぁ気配に気をつけていけば問題はない。」
行くぞ、と言って再び左手で私の右手を取る。
「主要かな?っつー場所に爆発するアーティファクトを置いてきたんでな、それでこれまで6発爆発してるから残り10発だ。」
「爆発するアーティファクトなんてあるんですか。。。?!」
「あ、そこまで酷いやつじゃないぞ?少なくともこのアジトが壊滅することはない。
せいぜい扉壊したり、音と煙が出るだけだ。
遺跡探索用だし。」
「なるほど。。」
煙で私にはほとんど見えないので、手を繋いでないと絶対に逸はぐれる自信がある。が、手ぇ繋いでるだけでも嬉しい複雑な乙女心よ今は引っ込んでて。頼むから。
「よし、行くぞ」
「はい。」
この爆煙、思いっきり吸い込んだらむせてしまうので出来る限り静かな呼吸でいるのだが。緊張と疲れからか、だんだん息が荒くなってしまう。
ちょっと広めのホールのような所に出たようで煙が少し薄くなる。
「壁伝いに反対側まで行くぞ」
そう言って右の方の壁を伝いながら移動を始めた時、何かが弾ける音がする。
パァンッ!!
大吉さんも私も反射的に動きが止まる。
ともなくすると、うめき声と誰かの倒れる音がする。ホールの反対側からのようだが。。
すると煙が少し濃くなった気がした。
「息を吸うな!藍華!!」
何かに気づいた大吉さんが叫ぶが、
んな無茶な!!
一応吐く息をゆっくりしようと思った時にはもう身体中が痺れて立っていられなくなり、握る力も無くなってしまった手は、するりと大吉さんの手を離れその場に膝をつき倒れ伏す。
脳裏にあの男の情けない格好が浮かんで。根性で横向きに倒れれた自分を褒めたい。
あの格好はイヤ。
「藍華!!」
意識はしっかりしてる。けど目も虚にしか開けていられない。呼吸は早く痺れが増していく。
爆煙に体の痺れる何かが撒かれたのか。。。?
ってか大吉さんはなんで無事。。。
大吉さんは辺りを警戒しながら私を抱き上げてホールを抜ける。
ホールを抜けると階段があり、大吉さんは気配を確認すると一気に駆け上がっていった。
「ここはもう大丈夫だ。ゆっくり呼吸するんだ。」
心配そうに覗き込んでくる大吉さんの顔を眺めることしかできない。
情けないかな口開きっぱなしだし。
クソゥ。意識も痺れてくれればよかったのに。。。!
目を開かれ瞳孔の確認?
ほっぺた触って何の確認?
そのあと手を握られ、
「毒ではなさそうか・・・」
そう言って安堵の息をする。
「し・・・痺れてる・・・だけです・・・・・たぶん・・・・・」
身体は痺れてるだけで気持ち悪くもないし、別段違和感はない。
大吉さんは毒であると心配もしてたのか。。。
「俺は遺跡探索とかで慣れててな。息止めて数分は活動できるんだよ。。だから油断した。すまない。。。」
いや、それ普通無理ですから。
数分息止めてるとか無理ですから。
この階も煙がいっぱいで。その中、盗賊たちのざわめきが聞こえた。
「俺は下の方に行ってくる!」
「一応のユキノブの安否も確認してこい!」
こっちにくる。。?
体が自由に動かない分聞こえてくる情報量がおおいきがする。
大吉さんは1番近くにあった部屋の扉を静かに開けて中へ入った。
扉を閉じると
「誰ですか?!」
とても若そうな女性の声が静かな空間に響いた。
中は医薬品の香りが充満していて、明らかに普通の部屋ではないことがわかった。
部屋には医薬品棚と、若いというより幼い眼鏡をかけたおさげの少女とベッドに横たわる盗賊の頭。
・・・盗賊の頭がなんで・・・?
「!!」
「害するつもりはない。俺はこいつを迎えにきただけだ。今回の依頼は討伐じゃなくて護衛だしな。」
ベッドを守るかのように立つ少女に大吉さんは告げる。
少し安堵したようだが、変わらずそこに立ち続ける少女。
大吉さんはじっと頭を見て話しだした。
「そいつ、団員全員を同時に瞬間移動させる特殊なアーティファクトを使用した反動で意識を失ってるんだろう?」
そんなアーティファクトが存在するの?!
と、めちゃくちゃ突っ込みたいけど呼吸するだけで精一杯。
「頭ってだけあって丈夫そうだしアーティファクトの扱いも慣れてるだろうから俺の予測するよりもずっと早く目ぇさましそうだな。。」
敵に対しても、認めてるっていうか何というか、
すげぇなそいつ。といった風に言う。
「嬢ちゃんはここの医師か?」
「そうです・・・!」
緊張した空気が流れる。
「・・・・・」
「そうか。。。
痺れ止めの薬を用意しておけ、多分今下に行った奴ら全員ヤられるから。」
「・・・何か薬を撒いたんですか?!」
「・・・なんで俺が。。。」
呆れたようにため息混じりに言う大吉さん。
「俺だったら仲間に害がでないようにやる。下のホールのあたりで痺れ薬入りのなにかが破裂したんだ。
毒じゃなくて良かったよ。。。」
「え、じゃぁその人にも薬を。。。」
そう言って守っていたベッドから離れようとする少女。
お人好し属性持ちだな、この子。
虚な目のままだけども感覚はいつも以上にクリアな感じで、少女の性格を感じ取る。
「イヤ、結構だ。手持ちがあるから。」
そう言ってウェストポーチから小瓶を出す。
少々改稿しました。




