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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 一章 ある日マンホールに落っこちたら
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008. まさか失敗作が、立派なアーティファクトに……

「マジでか……ぜんっっぜん気付かなかった…………!」


 まさか、自分の失敗作までがアーティファクトとして使われているとは…………。

 こっぱずかしい‼

 頭の中は“あ”と“え”で埋め尽くされている感じだ……。


「ちょっと見せてもらっても良いですか……?」


 何年経ってるかわからないけど、状態から少しは何か読み取れるだろうか


「あぁ、いいぞ。っていうか是非見てくれ」


 カチャカチャと留金を外し、ソレを渡してくれる。


 あぁ……懐かしい。とは言っても、レジンを手に入れて初めての作品で、わたし自身からすると作ってから何年も経ってないのだけれど。明らかに経年による変化が見受けられる。

 黄変は思ったより進んでおらず、100年以上経っているとは思えないけれど……。


「確かにわたしの作ったものです。

 忘れもしない…………。

 このホコリを見つけたあの瞬間を…………!」


 キレイにできた! と思ってウットリ眺め回していたときに見つけて。その衝撃ときたら…………!

 そしてその後いくつも作るものの、どれにもホコリが入ってしまって、めげそうだった苦い思いも思い出されてきて胸が苦しい…………。


 大吉さんにソレを返して両手で顔を覆い悶えたいのを必死で我慢する。


「そうか……。じゃぁ藍華の腕はコレで保証されたようなものだな。

 見ててみろ」


 左手のひらにソレを置き右手をかざすと、それは淡く光りだし、埋められたシートと同じような文字盤が空中に現れ現在時刻だろう六時半を指す。


「…………⁉…………」


 混乱の極み。


「なぜ⁈

 なんでどうやって⁉

 いったいどういう仕組みに…………⁈」


 ただのレジンに文字盤シート。

 そしてバックはネイルの着色にちょっと一工夫をして、っていう普通の、ごくごく普通のレジン作品が何をどうしたらこんなことができるように⁈


 ホログラム のようなソレは三十秒ほどで消えた。


「今の時代、手巻きの時計か、アーティファクト、レプリカの時計で時間を知ることができる。

 仕組みは…………

 アーティファクトの謎に迫らないとわからないんだろうな……。

 ただ、確かにコレは時計のアーティファクトで、正しい時を教えてくれる優れものだ」


 失敗作に悶えたいが、役に立つと言われて嬉し恥ずかしこの微妙な感情の名はなんというのだろうか


「ちなみにこれは、発掘に行った先で出会った盗賊が持っててな。戦って勝った時に手に入れたんだ。

 発掘したものは役所に届け出て、ソレが何か特殊で貴重なものだったら、役所が買い取る仕組みになっているんだが、これは盗難品で、しかも出所がわからず。普通の時計だったから俺の手元に戻ってきたんだ」


 へーそんな制度になってるんだー、

 そう思う反面で、失敗作すらも重宝されているという事実に苦虫を噛み潰したような表情になる。。。


「発掘って、大吉さんは発掘にも行くんですか?

 アーティファクト屋と喫茶店だけでなく?」


「んー……アーティファクトを販売する上で、修復の為とかに色々必要になるんだよ。それが発掘先で手に入ることが多くてな」


「なるほど」


「盗掘されたものが闇市で売られていることもあるが……ここは表の店で、俺もコソコソしたやりとりが苦手だし、まぁ幸運にも表だけで生きてけてるって感じだな。」


 きっと色々な事のために闇市の情報も仕入れているのだろう。


 もしかしたら碧空さんの作品を集めてたりとかもしてるのかな……?


 目の前にいる人が思い悩むその様子は、この世界の、時代の現実の一部を教えてくれる。


「なんというか……ソレ……

 そのホコリが入ったことで、処分寸前のものだったんですけど。

 役に立ててるなら嬉しいです……」


 しかし。

 押し入れの奥底からどうやってどういうルートを辿って盗賊が持っていたのか。


 謎だけど遥かな時を超えて存在してしかも用途(?)は違うけれど、現役(?)で使用されているというところは素直に嬉しい。


「何か“縁”を感じるな」


 そう言って微笑む大吉さん


「さて、まだ腹が減ってないなら、先に藍華の部屋に案内しておこう。ちょっと片付けるのも手伝ってくれ。半分くらい物置になってるから」


 立ち上がり店のカウンター奥の扉へ向かう


「はい!ありがとうございます!」


 残っていたコーヒーを飲み干し、後に続いた。

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