087.2人ともやっぱり有名だったのね
「ちっ・・・そこの2人はアグネスとフェイか・・・!!」
舌打ちと共に言うハゲ。
やはりと言うかなんというか、2人とも有名だったのね。
「お・・・お頭!!今ので術師が2人・・・!!」
アグネスの攻撃が放たれた方角から聞こえた声により、ハゲはお頭だと判明。
うん、まぁそうだろうとは思ってた。
「まだ1人残ってるだろうが!!やらせろ!!!」
盗賊たちがざわついている間に、屋根にいた大吉さんがフェイたちとは反対側へと飛んだ。
結構振動が。。。って棒人間の指輪使ってるよね、あんな遠くまでジャンプして。。
向かって左側の、盗賊たちが出てきているほぼ中央に向かって飛んでいった。
その手には。。。日本刀。。。??
大吉さんの手には黒光りする、おそらく抜き身の刀が握られていた。
結局見せてもらいそびれてたけど、アレが大吉さんの常用すると言ってたレプリカ。。。?
「はああああああっっっ!!」
血飛沫が上がると思い覚悟して目を細め見ていたら、切られた盗賊はその場に倒れ込んだだけで、生きてはいるようだ。
「あれが噂の雷神の刀ですか・・・
すごいですね・・・」
同じように飛んでいった大吉さんを眺めていたユウリさんが言う。
「雷神の刀って。。。」
「はい!一太刀受けたら一刻は目覚めることができないと言われてるのです!!」」
握り拳で力説するユウリさん。
何そのカッコイイの。
バタバタと5人ほど倒していくが、6人目に手強そうなのがいた。
大吉さんの剣戟を受け止めて立ち回った盗賊がいる。
一方。フェイ、アグネスの方にも数人根性のありそうなのがいる。
アグネスの槍と渡り合ってる者がいるようだ。
護衛チームは後方から左右に分かれて加勢に向かっているようで、後方から小競り合いをしている音が聞こえる。
数秒が数分にも感じられる・・・
「・・・・・・!!」
ずっと遠くで誰かが何かを叫んだ気がした。
もう戦闘の音が入り交じっていてあまり遠くの声とかは聞き取れない。
聞き取れないが。。。
突然、赤い光が馬車の頭上に現れる。
なんだろう?と上を見上げた私たちは、同時に固まってしまう。
何故ならば、頭上には巨大な火の玉が迫っていたから。
「「?!!」」
「火のアーティファクト使いがいる!!」
アグネスがそう叫び
「藍華!!とにかく防げ!!」
大吉さんがこちらを見ずに叫ぶ。
「了解ー!!」
結界か?!解いて水のアーティファクトか?!
あんな大きな火の玉を一度に消すにはどちらかだけでは不安が残る・・・かくなるうえは・・・!
バレることを覚悟でアーティファクトの同時使用をしようとしたその瞬間、
「火よっっっ!!」
アグネスが手を伸ばし、火のアーティファクトで巨大火の玉を2分の1くらいに抑える。
すごい!!あんなに大きな火を?!
聞いてた話よりアグネスのアーティファクトの効果が大きい気がする。。!
でもあの大きさの火ならば
「水球!!」
すぐさま結界を一度消して水のアーティファクトを使う。
ジュワッッッ
少しの蒸気を残して一瞬で消える火の玉。
「フェイ!そいつが術師だ!!仕留めろ!!!」
アグネスがそう言っているのが聞こえる。
「藍華!後方にいる奴らのところに火の元がある!!
そこに集中放水するんだ!!今のと同じくらいで事足りる!」
「了解!!」
敵意レーダーで確認したあの方向ね!!
アグネスの助言に従い力の大きさと方向をイメージして
「小型水龍!!」
胸の紫水晶の小瓶とその方角に手をかざし、言葉を放つ。
手から飛び出ていく小さな水龍は割と早いスピードで飛んでいく。
「火の元を探して鎮火せよ!」
火の元さえ消してしまえば奴らに火のアーティファクトを使用する術はなくなる。はず。
「・・・!!」
「・・・!」
盗賊たちが何かを叫んでいるが、結構遠いのと戦闘のざわめきで何を叫んでいるのかは聞こえない。
うまく鎮火してくれるといいのだけれど。。。!
待つこと数十秒くらいだろうか
「成功だ!サンキュー藍華!!」
アグネスからの返答に胸を撫で下ろし、すぐに解いた結界を張り直す。
戦闘が始まり周囲の空気が明らかに変化した中、ユウリさんともう2人の御者が上手くやっているようで、馬たちは落ち着いたものだった。
盗賊たちも再びこちらに何かをする余裕は無さそうだと、結界を維持することに集中した。
息を呑む戦況を見守り、自分たちに何が起ころうとしているのか気付きもしなかったのは、完全に経験不足と油断が原因だろう・・・
座ってる位置もこの時に限っては運が悪かった。
わたしとユウリさんが戦況を注視している時。
ふと冷たい嫌な予感を感じた私は背後を確認する前、反射的に
「ユウリさん!!!」
自分の右側に座るユウリさんを御者席から突き飛ばし同時に強力な結界で包んだ。
それとほぼ同時に後頭部への衝撃で意識が飛んだことでその判断は間違ってはいなかったことを理解した。
「ちっ・・・!」




