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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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085.そしてソレは来た



その夜は静かなものだった。

砂漠地帯とは違って、虫の音がしているのが心地よかった。


獣よけに松明をキャンプの周りに置いたので、時々燃やすための燃料を追加しにいくことにはなったけど、2人一緒に回ることで問題なく済んだ。


ただ、敵 (?) は火を操るアーティファクトを持っているはずなので、そこが心配だったのだが。


「昼のあのレベルの火をなんとかできるんだ。向こうも警戒して同じパターンのことはしてこないだろう。水場も近いからな。ここ。」


と、大吉さん。


なるほど。


どんな目がどこにあるかわからない、ということでアーティファクトの練習はやめて。

組手と称した訓練を少ししてもらい、残りの時間は雑談をして時間は過ぎて行った。







翌日、出発してしばらくした頃。



「来たぞ!!」


草原エリアも中盤に差し掛かったらしいその時にそれは来た。


正面十数メートルのあたりに突然少々の土煙と共に大岩が現れ、先頭車の荷台に火のついた矢が射かけられたのだ。

だが、敵意レーダーでそれを察知した私達は先頭車の頭取にそれを伝え。


アグネスとフェイの援護証言(彼等はクゥさんのことも、敵意レーダーアーティファクトのことも知っていた。というか過去にレプリカ版を大吉さんから購入もしていたため)もあり、襲撃に備えた用意はできていた。



貴重な水を消費するわけにはいかなかったので、タイミングを見てフェイが、自前の風を起こすアーティファクトで矢を吹き飛ばし。

そしたらついでに火も消えたので、敵の想像していた被害状況よりも随分と軽い被害だったに違いない。


ただ、後方がストップするのが少し遅れて2号車の左隣に半分並ぶように3号車が止まった。


ここは草原地帯の岩場。貴重な日陰もあるが、敵の潜める場所も多い。


「藍華!ユウリさんを守れ!

ウマをできるだけ刺激しないように気をつけろ!!」


そう言って大吉さんは荷台の上に登った。


「了解!!」

答え、すぐに御者席にいるユウリさんの隣に座る。


左右から囲むように岩陰からワラワラと出てくる人影。

ざっと見て30人前後か。


「月並みなセリフで悪いが。積荷をあらかた置いていってもらおうか。」


前方から出てきた、大きな三日月のような形の刀を構えた男がそう叫ぶ。

逆光になっていてどんな風貌かはよく見えないが、髪の毛がほとんどないので反射して余計に顔が見えにくい。


「そう簡単にそれを許すことはできないな。」


「何者かに依頼されての犯行ならやめておいた方が得策だぞ?」


大吉さんに続いてフェイが言う。


フェイは進行方向に向かって右側に出てきていた。


アグネスはフェイの横に立ちアーティファクトでもう何かを始めている。


「起動!」


敵意レーダーで確認すると、少し離れたところに3人。

馬車に周りには35人いるようだ。


「ストップ」


レーダーをオフにしてコウモリの通信用アーティファクトで大吉さんに伝える。


「大吉さん、総数は正面3、向かって左側に16、右側に16。右のずっと奥の方15メートルあたりに3人のようです」


『了解、サンキュー!』


最後尾の馬車から出てきた護衛チームは、左右に分かれて展開しているらしい。


「大吉さんと連絡を?」


「はい、アーティファクトで。」


ピアスアーティファクトで連絡している私に、割と冷静に質問してくるユウリさん。

しかしその額にはジワリと汗が滲んできている。


「近距離ならタイムラグなしで連絡が取れる物なんですよ」


自分も冷や汗いっぱいのくせして、ニッコリと平然な風を装って言う私。


もどかしい。戦うことのできない自分が。


「今私にできることは的確に敵の位置を知らせること、あとできれば商隊に敵を近づけないこと。。。」


自分にできることをする。


「守ります。。。!!」


結界(ガード)を強く張ると内部の者も外には出れなくなってしまうから、ひとまず薄く張ってみよう。


『大吉さん、大きな被害が出ないように薄く結界(ガード)を張ります。内部からは出ることが可能なのでその旨皆さんに伝えてください。』


『了解』


「今から結界が張られるが内部からは出られる!各々の判断で動いてくれ!」


「わかった!」

「了解した!」


返事がいくつか帰ってきたのを聞き、すぐに結界(ガード)を展開する。


「展開!!」


目をつぶり、イメージする。

商隊全体。馬車3台分を覆うイメージを!


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