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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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081.“きょうと”の人たち




アグネスが入れてくれたお茶をゆっくりゆっくり飲みながら、話を聞く。


アグネス曰く、“きょうと”はアーティファクトとレプリカのメッカ。日常から頻繁に使われるそれらはそこにいる人々の感覚も、能力も、それに見合ったように変化させているかのようなのだという。


アーティファクトに対する耐性が強いそうで。

つまり、アーティファクトを高出力できる人が“とうきょう”よりは多いのだそう。


その代わり、“とうきょう”方面の人たちは、体力的なことや持続力、果ては寿命もが長いのだそうだ。


「あたしもフェイも北の方の生まれだからな。

それにしては幸いアーティファクトの耐性が強い方で。

おかげさまでこんな職業も続けていられる。

藍華は“きょうと”の方の出なんだろ?」


「・・・はい・・・」


「アーティファクトの耐性が強いと言っても、あんなすごい力を使った後は、しっかり休んどかないとな!

精神力を使い切って倒れても介抱できる医者はここにいないから。」


ふと視線を上げると、血のついたシャツを洗い終えた大吉さんが、血抜き中の熊の横の木にそれを干しているのが目に入る。


「そうですね。。」


わたしの視線の先に気づいてか、


「・・・大吉とは長いのか?」


ぶふっっ!!


思わず吹き出してしまうが、“何が”とは言ってない。

落ち着け私。


「い。。。1ヶ月にも満たないですが居候させてもらってま。。す。。。。」


脳みそは一気にパンパン。心臓はバクバク。

口元を拭きながら答える。

1度跳ね上がった心臓はそう簡単には治れない。

が、顔の表面は冷や水を浴びたように通常を装う。


「ふーん。。。」


ニヤニヤと、何か言いたげな顔をしながらわたしを眺めるアグネス。


「若いってイイねぇ。」


そう言って自分のお茶を飲み干すと、


「あたしは食事の用意手伝ってくるよ。

藍華はメシまでゆっくりしてな!」


そう言ってかまどの方に行ってしまった。

本当はそこまで休憩とか必要ないのだが。。。


せっかくだから少しゆっくりさせてもらうか。。


そう思ってテーブルに突っ伏して心臓おさまれ、心臓おさまれ、と心を鎮めていると。


「大丈夫か?!」


いつのまにかこちらに来ていた大吉さんに、心配の声と共に頭頂部を撫でられる。


びっっっくううぅぅぅん!!!


手が離れていった反動で起き上がると、心配そうな顔の大吉さんと目が合ってしまう。


「だ。。。大丈夫です。。

少し気が抜けただけで。。。!

アグネスが休みなさいって。

自分では休憩なんて必要ない感じなんですけど・・・」


テーブルに右手をつき、少しかがんで私の左肩側から垂れてた三つ編みの先を持って、ゴムの部分を親指でそっと撫でつつ。


「まぁ、割と底なしみたいなのはわかってるが。。。

それでも。な。自分を過信しないで、今は言われた通り休んどくといいさ。」


ぽふ、と再び頭を撫でられる。


「頭取に保存用の袋をもらいに行ってくるから、その間だけアレみといてくれるか?」


そう言ってクマを指す。


「了解です。」


「サンキューな!」


そう言って未だ怒られ中の達磨頭取の所へ行った。



シャツ着ていない大吉さんの。わたしの精神に対する破壊力の方が酷いです。。。



っていうか大吉さんが戻ってくるまでアレを見てないといけないの??

血の滴り落ちているアレを???


めんどくさくなったので。というか見ている、ということの方が自分には疲れそうだったので。

そのままそこから動かずにベルカナのアーティファクトを発動する。


「ベルカナ。」


ぼぉぅっと薄い光の幕がつる下がったクマを覆い、滴り落ちる血はそのまま膜の外に落ちていく。


大吉さんが戻ってきた時に外せばいいや。

と、視線を沢の反対側の木陰に向ける。



木陰の奥で何かが動いた気がしたけれど、風で葉がそよぐだけのようで気のせいかと思い、視線を沢にうつす。




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