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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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080.バックで血抜きしてる大吉さんが気になってしょうがない



本来狩場はもっと離れたところだったのだろう。

逃がすにも逃げられるにも、キャンプに近づかないようにするのが普通。

アグネスの非難する言葉にフェイさんは申し訳なさそうに答える。


「すまない。。色々あってな。。。。」


「アグネス、まぁ俺ら全員の責任だから──

スマン。。。!」


仕留めた熊を片手に担いで返り血にまみれた状態の大吉さんがこちらに向かってくる。


「あぁああそのままこっち来るな大吉!!竈門付近が血まみれになっちまうだろうが!

そっちの沢の下流で血抜きしてこい!!!」


アグネスさんに言われ、とぼとぼと熊担いだまま沢の方へ向かう大吉さん。


一方、大吉さんが出てきたあたりの茂みから出てきたばかりの達磨頭取が、馬を宥めて落ち着かせたユウリさんに怒られていた。


「もうちょっと考えてから鉄球投げてよ!お父さん!!

藍華さんがいなかったら商品も荷物も全焼してたかもしれないのよ?!!」


竈門に跳ね返された鉄球は達磨頭取の投げたものだったのか。。。


へたり込んだままな私のところに再びアグネスさんが来てくれて。


「大丈夫か?藍華。」


手を出してくれる。


「ありがとう、アグネスさん。」


差し出してくれた手をとり、なんとか立ち上がると、


「アグネスでいいよ、さんがつくとなんかくすぐったいわ!」


「じゃぁ・・ありがとう、アグネス」


呼び捨てだと私の方がくすぐったい気持ちだけど。


「しかしあの熊どうすんだ。血抜きだけでも結構時間かかるぞ?」


「やれるとこまでやって、あとは大吉のアーティファクトで保管しながら行くって聞いたぞ?」


フェイさんが答える。


「保管する箱か袋がないといけないはずですけど。。」


「達磨頭取が持ち合わせがあると言っていた。」


「・・・・・」


あぁ。。なんとなく話が見えてきた。。。

思わぬ大物にどうしよう、と言う話になって。


大吉さんは、

腐らせずに保管するためのアーティファクトはあるが、大きすぎて、密閉しながら運ぶ手立てがない。


達磨頭取は、

運ぶための袋はあるが冷蔵アーティファクトはすでに使用していて、腐らせてしまう。


2人の物を合わせれば京都に着くまで保つんじゃない?

ってことになって、とりあえず仕留めることになったと。


いい歳こいた大人たちがはしゃいだ結果がコレか。


少々焼け焦げ穴の空いた馬車の屋根をながめる。



「じゃぁまぁ。大変なところは、はしゃいで大変なことにしてくれた奴らに任せて。あたしたちはちょっと休憩な!」


手を引かれてつれて行かれた先は。


小さなテーブルにポットとカップを設置してある場所。

大吉さんが血抜きしている沢の上流に位置していて、

血抜き作業丸見え。

内臓を出した後だろうか、血まみれの手を沢で洗っていた。


・・・ぅわー落ち着けない・・・


大きな木の枝に、ロープで脚部分を縛り頭部の方を下にして吊る下げている。

クマの体温を下げるためか、大吉さんの腰のあたりで雪の結晶入りアーティファクトの気配が強くなる。

光が冷たい氷のような色をしているのだ。


「はい、ここ座って。

しっかり休め。今茶ぁ入れるから。」


促されてテーブル横の誰が使っても良いように置かれていた折り畳み椅子にこしをおろす。


「ありがとうございます。」


「こっちこそありがとうだよ。

あんなものすごいのは久しぶりに見たよ。」


アグネスは大吉さんの方を背に座り、ポットについたレプリカを発動させて、お湯を沸かせてながら言う。


「すごいのはアーティファクトですよ。

同じアーティファクト持ってれば誰が使ってもできる事じゃないですか?」


カラっと言うと、

目を丸くして見られた。


「・・・ある程度まではな。

もしかして大吉以外のアーティファクト使いをあまり見たことがないな。。。?」


言われて高鳴る胸。

事実、みたことがない。


が。それよりもちょうど視界に入るモノが気になってしょうがなく。血に濡れたシャツをバサァっと脱いでる瞬間が目に入ってきてそちらに意識を取られる。


程よくついている腹筋に見惚れてる場合ではない、と意識をアグネスに引き戻す。


「・・・そうですね。。“きょうと”にいた頃もそこまで人と関わって生きてきたわけではないですし・・・」


「誰もが最大限そのアーティファクトの力を引き出せるわけではないんだ。

相性ってのがあってな。まぁあと訓練量も関係してくるんだが。」


今度は私が目を丸くする番だった。

初耳なんですけど。


「特に───なんだ。“きょうと”の方から来るやつはそこの感覚が違うな。」


アグネスは笑いながら言った。


「大吉もあたしから言わせて貰えば規格外だ。

さっき、あんなのは久しぶりに見たと言ったろ?

何を見たかって言うとな、大吉の広範囲系のアーティファクトの力だよ。」


広範囲系。。?

確かクゥさんの手記に何か書かれているようだったけれど、まだ読んでない。結界防御には関係なさそうだったから。


「それを借りてな、使ってみたけど効果の範囲の少ないこと!!

大吉が使うと広範囲、でも私が使うと小範囲。

例えば竈門の火をさっき起こしたが、あたしが操れる火の大きさは竈門の2倍くらいまでが精一杯だ。

さっき馬車に火の粉が飛んでって凄い勢いで燃え上がったろ?あのくらいの大きさのまでなら火を移動させたりすることは出来る。

できるが、火を移動してもそこにわずかな火種は残っちまうからすぐ動けなかったんだが。。」


申し訳なさそうに言うが、わたしが何もできないでいたならきっとアグネスはアーティファクトを駆使してなんとか火を収めただろう。


「で、そんなことができるこのアーティファクトでも、フェイが使うと、タバコの火種程度しか操れないんだ。

火系のアーティファクトと、とことん相性が悪いらしくてな。

どんな人間でも扱えるアーティファクトやレプリカだが、最低限の力は誰でも引き出せるが、最大限の力は誰でも出せるわけじゃない。

それを補うアーティファクトやレプリカも研究されてるらしいがな。生活していく分には困らないことだからそこまで発展はしていない感じだな。」



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