表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
80/343

079.頭取達磨が投げたものは


ガオオオオオオオ!!!


「いかん、そっちはキャンプの方だ!!」


雄叫びに続いて、少し遠くから大吉さんの叫ぶ声。


「ワシに任せろ!

せいっ!やっ!とぉ!!」


今度は達磨さんの声。


あの雄叫びの獣がキャンプの方に来るのは勘弁願いたいな、と緊張しながら聞き耳を立てていると、ガサっと茂みから上半身を覗かせた黒っぽい何か。


「熊?!!」


思わずもれた声に、熊っぽい何かは耳を動かし反応するが、飛び来る己の“敵”に集中していて微動だにせず。

ある1点、いや1方向を見ている。


ガアアアッ!!


そして叫びながら飛び来る何かを次々と跳ね返した。


3つの鉄球が、熊らしき動物に跳ね返され、少し間を置いて竈門の方に飛んでくる。


「「「え“!!!」」」


ハモる私とアグネスさんとタイラさん。

反射的にそれぞれそこを飛び退き離れるが、惨事はそれだけで済まなかった。


水の入ったバケツは1球目で吹き飛ばされベコっと凹みができたのが見えた。

2球目が燃え上がったばかりの薪に直撃して、火の粉と火のついた薪を四散させる。

3球目は幸い何もないところに落ち、小さなクレーターを作る。


ボッッ!!

ボボッッ!!!


2球目によって飛び散ってしまった火付きの薪が馬車にいくつか飛んでいき、降ろしてあった食料などの荷物にも燃え移ってしまう。


ただ、火の勢いがおかしい気がする。

そこまで燃えやすい素材には見えなかったのだが、あっという間に勢いよく広がっていく。


「なんだ?!あの火の勢いは?!!

アグネスさん!そのアーティファクトで火を消すことできますか?!」


タイラさんの叫びに、アグネスさんは答える。


「それは無理だ!このアーティファクトは火を増幅し操るが、消すことはできないんだ。。。!!」


このままだと森も燃えてしまうだろうか。。。

水は十二分にある、水のアーティファクトを。。。!!


そこまで考えたところで、熊っぽいののずっと後ろの方の茂みからザッと出てきた大吉さんが見えた。


「大吉さん!使います!!そこに大量の水もあるし!!」


「・・・頼んだ!!」


その返事にはためらいの色を感じるものの、goサインは出た。


大吉さんの投げた何かが熊を転倒させたのを目の端に捉え、熊は大丈夫。大吉さん達が何とかする!と自分に言い聞かせ湖の方に意識をやり、目を瞑りイメージする。


ピンポイントで火を止めないと水場も汚してしまう。

水の散弾?いや、もっと自在に動いてまとめて湖の水を汚染しないよう───


よし、決めた!


『水龍!!』


ポケットにしまってある水のアーティファクトが強く輝き、湖の水が盛り上がる。


ゴゴオオオオオオオオオオ!!!


龍の形になった水の塊はトグロを巻くように空に登る。


「な?!水の龍?!!」

「で・・・でかい・・・!!」


アグネスさんとタイラさんが口々に言う。

その他遠くの方で護衛チームの人たちが何か言っているけど、私の耳には届いていなかった。


「行けっ!!」


1番火の勢いが強かった荷馬車を指し、水龍を向かわせる。


ジュオオオオオ!!!


一気に消し止め、荷馬車内には数滴の水が落ちる。

食料などの荷は少し湿らせちゃった程度で済むといいな。。。!


水の龍は次々と燃え移った火を飲み込んでいき、飛び散った火の粉すらも、もらさず飲み込んでいった。



「他にっ・・・燃え移ったとこはっ?!!」

(大変なフリをしてます)


「多分大丈夫だ。。。!!」


タイラさんがそう叫ぶ。


「水龍よ!森にその身を散らせ!!」


水龍は、適当に指した方向の空高くへ飛んでいき、頭部から、さぁぁぁっと霧状になって消えていった。


おそらく龍の消えていったあたりに雨を降らせているだろう。


力を解除すると、アーティファクトの光もスゥっと消えて。


燃え上がる前に消せた安心感と、熊(?)怖っという遅れてきた恐怖にその場にへたり込む。


「・・・藍華・・・あんたすごいじゃないか!!」


アグネスさんに思いっきり抱きつかれて、革鎧の向こう側にある二つの柔らかいものが目前にきて、意識昇天しかける。


コレハオトコデナクテモシアワセダわ


「・・・アグネスさん・・苦し・・・」


自分のおかしいテンションに気づいて早く離れなければと思い言葉を絞り出すと


「アグネス、離してやれ、藍華さんが圧死する。」


フェイさんに首根っこ引っ張られわたしから引き離されるアグネスさん。


「フェイ!

何やってんだよ、あんな熊キャンプに近づけやがって!!?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ