073.藍華の観察力
「ん───!」
のびをすると、さすがに身体中がバキバキする。
「寝れたみたいだな。」
「おかげさまで!多分もっと揺れが激しくても寝れると思うんで、次からは遠慮なく休憩とってください。」
思えば乗り物酔いになったことがないのよね。
炊き出し用意が始められ、護衛はチームごとに順に食事を取ることに。
はじめは護衛チーム。入れ替わりで私達。最後にアグネスとフェイ。
「藍華、注意点を話しとくぞ。
食事中は特に気を付けろ。あ、食べてる最中な。」
1番小高い岩の上にアグネスが四方を見渡すように登っていて、少し離れた岩の上にフェイ。
そして馬車の来た道の入り口に大吉さんと私。
「常に周りの気配を追っておけ。
何か違和感を感じたなら確認しろ。」
んな無茶な。
「まず違和感がわからない気がするんですけど。。。」
両親はいなくとも、一応これまで平凡に生きてきた身としてはそういう危機感知能力は低いと思っている。
「敵意センサーにも引っかからないような違和感を、ですよね。。。?」
「そうだ。敵意を持たれる前に対処するのが1番楽だからな。」
それはわかる。
わかるけど、そういうものからも逃げてきたからなぁ。。。と考えていると、
「多分大丈夫だ。俺とは違った面から気づけるはずだ。」
何をもってそういうのか。違う面って何とか。
根拠が知りたいが。
「藍華はよく人を見ているからな。
舞子のこともそうだが、辛子のこともよく見てた。
あいつにアレが必要だってよくわかったじゃないか。」
「。。。あぁ、メガネズレなくするためのチェーンですか。」
眼鏡を修理できるだけの道具が手元になく。
眼鏡屋もなかなか行けれないとのことだったので、急場しのぎに眼鏡チェーンではないけれど、メガネを固定して落ちてこないようにするものを細いゴムと派手ではない天然石ビーズで作ってわたしたのだ。
「いやー。アレは気になってしょうがなかったですから!」
眼鏡の位置を直す回数の多いこと多いこと。
「眼鏡屋行けるまでの急場しのぎですから。
あんなもの長いこと使ってたらダメですよ。」
「まぁとにかくだ。外の方は俺とアーティファクトに任せて、内部の人間の観察を頼む。」
「やってはみますけど。。。あんまり期待はしないでくださいね。。。」
言って一度目を閉じ意識をキャンプの方へと向ける。
生い立ちのおかげもあってか、人間観察はそこそこできる方だとは思うけど。わたしの生きてきた時代で通じたものがここで通じるかは。。。
やってみなくちゃわからない、か。
1回目の昼食キャンプは無事にすみ。
夜キャンプの場所へと到着した。
昼食キャンプの時から見ていて、話してみてわかったことが少々。
商隊の親子は仲が良い。母親は“きょうと”を拠点に店を開いているという。
こちらにくる際に襲われ、運んでいた荷を奪われた事をとても気にしていた。命が無事だっただけ儲け物だとも言っていたが。。
今運んでいる物品は必ず目的地に届けたいと話もしていた。
警護を頼むことで色々なものの販売価格が割高にもなるけれど、政府からの補助も出るらしく、金額的にはそこまでの痛手ではないそうで、人のことだけれどよかったと思った。
気になったのは、その話をしていた時の護衛グループの若い2人。
大吉さんと2人昼食のスープを頂いてる時だったけれど、他3人とは少し距離があるようだ。
新入りだから、かもしれないけれど。
2人だけで話していることが多いように感じた。
元々知り合いでもあったのだろうか。
「藍華、ここ持っててくれ。」
「はーい!」
簡易テントを広げながら人物観察を続けている自分に苦笑する。
テントは広げるものの、夜の夜警で1番手となっている私たちはまずは火の番をすることとなる。
っていうか。
今更気づいたんだけど。
2人きりのテントにて自分は無事に眠れるんだろうか。
眠ってる大吉さんの観察をしてしまいそうで。
萌え死ねそうなんだけど。
いかんいかん。意識を戻せ。これじゃただの怪しい人だ。
「いいテントが買えたからなー!
1人でも建てれるんだが。手伝ってくれてありがとうな!」
「いえ、自分も使わせてもらうので当然ですよー!」
テキパキと作業を進める大吉さんに、手伝ってと言われたことだけ手伝っていく。
次建てるときはもうちょっと役に立てそうかな。
今日の手順をできるだけ覚えておこう。




