064.クゥさんにも発動できなかったアーティファクトが
箱の底には敷き詰められた水晶の細石がレジンで固められていて、中央にはワイヤーでくるくると包まれ先だけ外に出た状態のワンポイント水晶。
そして細石の上に歯車の金属パーツ。
一応わたしが知りうる限りでは良いオルゴナイトの作り方をしている。
「半永久充電箱ってイメージですかね。。。すごい。。。」
「そうなのか?
え、もしかしてこの箱の方が特別。。。?!」
ガバッと覗き込む大吉さん。
「可能性ありですねー。
この鳥さんのアーティファクトはどういう能力で?」
「・・ぁあ、ペアになってるアーティファクトとリアルタイムのやりとりができる。声で。
後は、鳥を召喚して手紙を送ることもできるが、距離が離れすぎていると途中で戻ってきてしまう。
たしか最長で20キロ程度行けた。」
携帯電話とアーティファクトっぽい能力のコンボか。。
鳥が顕現するのは手紙以外の小さなものも運べるから、だろうな。。
「一度クゥさんの残していった物を全部見せてもらうのが早そうな気がするので。。。
見せてもらっても良いですか?」
使えるものは全部使おう。
知れることは出来る限り知ろう。
「もちろんだ。」
真ん中の部屋の鍵付きの棚からと大吉さんの自室から、書類の束といくつかのアーティファクトを持ってきてくれる。
袋からまず取り出してくれたのはおそらくバラの花びらであろうものが三日月を象るように入っていて、その内側に金の模様、そしてオパール の丸玉。
薔薇の花びらのところには、キラキラとした粉がまぶされている感じ。
「綺麗。。。!!」
次に出てきたのはわりとガッチリとした腕輪。
「この腕輪。。。!」
ボーナスが出たら是非オーダーしたいと思っていた一品がそこに。
「名前は時を旅する魔法具、だがコレはクゥさんにも使えなかった。光りはするけれど───ってやつだ。
もしかしたらコレも何かとペアで発動するやつかもしれないな。」
ペアで。。。。。
「碧空作品の中に、コレと対となるネックレスがあるんですよ。もしかしたらそれがあったら発動するかも。。。?」
持ってみて力を発動しようとしてみるけれど確かに淡く光るだけで何も起こらない。棒人間の指輪ではないということだ。
「それがな。。。クゥさんがほぼ同じ材料でそれを作ったり、それのレプリカ作ったりしてたんだが発動しなかったんだ。。。
本人は。。。まぁ楽しんでたが。。。」
みたところ歯車と夜空を表現するネイルとABタイプのスワロがあったら似たようなものは作れそうだけど。。。レジンの消費も激しそうだからあまりたくさんは失敗できない。
「それについては日記が残ってるからゆっくり読むといい。」
書類の束と一緒になってる分厚めの本を指して言う。
推しの日記。。。。。?!!
読みたいけど読みたくない。。。。!!!
「コレを今受け取るとまた徹夜になりそうなので。。。ひとまず今日はしっかり寝ます。。
出発は水曜で、明後日ですよね?」
「預けておくから好きな時に見たらいい。
本人からの許可もある。ホレ。」
そう言って出したのは、たしか碧空証の箱に入ってた封書。
そこから便箋を取り出し、見せてくれる。
『コレを君が読んでる時おそらく私はもうこの世界にいないんだよね。なんだかちょっと寂しいな。
でもまぁ無事に帰れてることを祈ってて!
残してったものは全部好きに使ってイイヨ!
日記も、いろんなアーティファクトの構想とか書き込んであるから、みていいよ。
参考にするもよし、これから発掘されるであろうアーティファクトと照らし合わせるもよし。
気になることやここでやりたいことは山のようにあるけれど、多分叶わないんだろうと思ってる。
まぁそれは私の勝手な欲望だから気にしないで。
いきなりきてしまったこの世界だけど、大吉さんのおかげでとても楽しかったよ。ありがとう!
じゃ、元気でね! byクゥ』
あっさりとした文章。
SNSでの文体とほぼ同じ。
なんだかとても不思議な感じ。
「気になることややりたいことっていうのが気になりますね。何がやりたかったんだろう。。」
「そうだな。。。」
アーティファクトで色々したかったのかな。
その日はひとまずクゥさんの残していったそれらを預かり翌日眺め回すことにして、就寝した。
朝の仕込みだけ手伝うことにして、お昼まで休みをもらったので、大吉さんに呼ばれるまで部屋でじっくり読ませてもらおう。。。




