056.提出する理由
「また面倒なものを持ち込んでくれる。。。。。
前も言ったが俺はただの窓口で、決定権は俺にない。
が、最低限の手出し口出しはさせてもらう。
少なくとも、使用者の手を離れても力が継続することは必ず秘匿しろ。
他の誰にも知られるな。」
「何故だ?
っていうか、なんで“使用するな”ではなく秘匿しろ?」
「カンだ。」
「。。。」
「カンか。」
いや、ソレで納得するの?!
「わかった。気をつけよう。」
カチャリとメガネを直し、次の説明を求める智さん。
「で、他の棒人間の能力は確認したのか?」
「羽のやつは、羽が生える」
「「・・・・・」」
「光る羽が使用者の背中に生えて、空も飛べる。」
「誰の背中に生やしたんだ。。。?」
「・・・俺だ・・・」
「「・・・・・」」
ぶっふぉぉっっっ
小百合さんは豪快に吹き出し、智さんは俯いてプルプルしている。
「・・・40に差し掛かろうとしてる無精髭のオッサンの背中に光る羽生やしたわけか・・・」
今朝のあの光景が脳裏に蘇る。。。。。
「・・・なんか含みのある言い方はやめてくれないか。。。」
「いや、絵面が想像できなくてな。
言ってみただけだ。」
まるで見たかのようなそのものな表現だったけど。
「注目すべきは“羽で空が飛べる”っていうことだというのはわかってる。
凄まじいな。。。
羽の形のアーティファクトはいくつもあるが、空まで飛べるものは聞いたことがない。」
「あぁ、大抵のものは風を起こしたり羽の舞うイリュージョンが見えたりするものだからな。」
そうなんだ?!
「レプリカはどんな風になるんだ?」
「レプリカは。。。。。
選択権が使用者にはない。運任せのルーレットだ。。。」
「ルーレット」
小百合さんがおうむ返しに呟く。
「冗談ではないんだな?」
智さんは見た感じ冷静に問う。
あれ、絶対心の中で大爆笑してる。
方が震えてるもん。
「お見せしましょうか。。。?」
コト、とテーブルの上にレプリカを乗せて言ってみる。
「いや、変なものを出して大変なことになるのはまずいので。」
確かに。
「レプリカができてるならばひとまず預かるが。。。
コレは戻ってこない可能性の方が高いな。。。
研究機関が離さないだろう。
大丈夫か?」
「さっきも言ったが。。。
まぁちょっと寂しいくらいだ。
コレがアーティファクトの、レプリカの、研究・技術向上の助けになって、俺たち一般人に還元されるなら大歓迎だ。」
強い意志を感じる声色だった。
あぁ、なるほど。。。だから律儀に提出をしにきているのか。。。
やっぱり凄いな、大吉さんは。。。
「でも。。このアーティファクトがあったら、遺跡探索も護衛の仕事も格段にやりやすくなるんじゃ。。。」
「俺1人の成功率を上げるより、還元されて全員の成功率が上がった方がいいだろう?
まぁその時にはまた違った問題も出てくるんだろうが。
レプリカ作らせてもらってるってだけでも破格の待遇だと思ってるから、心配無用だ。」
小百合さんの言葉に力強く返答する大吉さん。
智さんが大吉さんの手にサバイバルナイフを返すと、ナイフは光を強くし、アーティファクトへと戻る。




