046.無心になるには
モヤモヤを祓うために、修行のように、煩悩を打ち払い、無心になれる作業から始めたけれど、いい加減お腹が空いた。
大吉さんからもらったお昼ご飯を食べながら考えをまとめよう。
まずはレプリカを作るためのアーティファクト。
これの考察から始めたいのよ。
アーティファクトのレプリカを作るのではなく、アーティファクトを作るための材料を複製することは“ここ”の理論上可能だと思うのだ。
初日に色々教わった中に、アーティファクトには内包物によってある程度の効果の方向性がわかる、ということだった。
だが例外もあるのだという。
特にレジンを使って作られた物のイレギュラー性が高いようで。理由は解明されていないと。
色々作って試したいところだけれど、材料は限られているから、まずはここに存在する様々なアーティファクトを知ろう。そして並行して硬化する前のレジンを複製する実験をしよう。
ふと思い出した言葉を呟いてみる
「人生危機的な状況に陥らないと見えないこともある。。。か。。。」
クゥさんももしかしたら同じところに到達したんだろうか。
たまーにそう呟いていたことを思い出した。
もう更新されることのないスマホのSNSを眺めながら思う。
今晩の作業はまだ遡れるだけ遡って写メっておくことだろうか。。。
幸いソーラー充電タイプのを常備していたから当分は使えるし。。。
残しておきたい文章とかを書き留めておくのもいいな。
遅めのお昼ご飯を食べながら、色々な考えを自分の中でまとめ、書き留めて。
お皿を持って店の方へ降りていったらちょうどお客さんが出ていくところだったようで、
「ありがとうございましたー!」
という大吉さんの声が聞こえた。
「遅くなってすみません!お昼ご飯美味しかったです、ありがとうございます!」
直しの終わったアクセサリー類の箱をカウンターに置き、皿を流しで洗い始めると
「藍華が昨日修復してくれたレプリカが売れたぞ。」
大吉さんは食器を回収しながら言った。
「おぉ。。。なんだか嬉しいですね。。。」
自分の携わった物が売れる。
初めての経験にちょっとジーンとしてしまう。
「どれが売れたんですか?」
昨日直しが終わったのは全部で5点ほど。
「ワンポイントブレスレットと、花のブローチ、
ワンポイントブレスは小さいお子さんへのプレゼントだそうだ。」
ワンポイントブレスは、ほんのり光るだけのスワロっぽいビーズのチェーンブレス。
「ブレスは娘さんが寝しなに暗すぎるのが怖くないようにって言っていたな。
花のブローチは婚約者へのプレゼントだそうだ。
いろんな花の香りが楽しめる嗜好品で藍華の修復で
香りが強くなってたのが良かったんだろう。」
花のブローチを思い出し、かけた部分をレプリカの材料で補強したことを思い出す。
「そういえばあれも花の横に気泡・・・神の息吹・・・?が入ってたですけど・・・お値段そこまで高額じゃなかったですよね。。。?」
あれはそんなに強い力も何もなかった。




