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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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328.トウキョウの結界とアーティファクトの意志

 そしてその日の夜、店を閉めたわたし達はそれぞれにやる事を進めていた。

 わたしは琥珀糖の乾燥に向けての作業を、大吉さんは明日の準備と差し入れの用意を。


「喜光さん、あまり困ってはいないような素振りでしたけど……違いますよね…………?」


 これまでの店に来た時の様子、雰囲気と比べて、元気の無さが気になってわたしは大吉さんに聞いてみた。


「現場の責任者だしな……そんな現象が起こる現場、もしかしたら原因が解明できるまで一度封鎖することになるかもしれない」


 事は、かなり深刻な状態なようだ。


「そうなると、寺院の修復は随分と先になってしまうだろうし……あそこも一応トウキョウの結界の一部を担う寺院だから、別の手段を講じなければならなくなるだろうしな」

「トウキョウの結界?」


 初耳な情報に、耳がダンボになってしまうわたし。


「あぁ、キョウトもそうだが、主要都市を守るための結界があってな。建物自体が、その力を保有していると言われている」


 そういえば、あちらでもスピ系の話でそんな説があったようななかったような……


「それもアーティファクトの一種……なんですか?」

「そうだ。双葉ーちゃんの所に行った時とか、お社が光って見えなかったか? 一般の人間には感知できないが、視る力を持ってるなら――」

「たしかに……一帯が光って見えてましたが…………」


 まさかそんな力を持っているとは。


「実際、地震とかが起きても、結界の要と言われる神社仏閣はいつも難を逃れているし。再生の日を越えて残っているところをみても、天変地異をある程度は防げるらしいな」


 改めて神社仏閣の建造や、その全てに携わる人達を凄いと思った。


「別の手段って、そんな凄い寺院の代わりになる“何か”があるんですか?」

「あぁ、それこそこの間話に出てた、神宝(かんだから)がそれに当たるな。ただ、厳重な警備と共に送られてくるだろうから……。そうなると喜光とはまたすぐに会えるだろうが……」


 と、いうことは……特殊部隊が――


「一応……そんな事態にならない事を祈っておきます……」


 そう言った自分の顔は、多分無表情だったであろう。


「明日行った時、なんとか力になれると良いんだが……」

「わたしも感知力、上げていきます」

「それは心強い。何かわかったら、こっそりで良いから教えてくれ」


 吉光さんに変に思われないよう考えて、そう言ってくれたのだろう。

 けれど、みんなの命に関わるようなら、わたしはきっと自ら――


「場合によりけり。で、了解しました」


 わたしの意図を汲んでくれたのか、大吉さんは少し驚いた顔をした後、優しくわらい言った。


「ありがとうな」


 ずうっと隠しておける事でもないと思っているし……何より胸を張ってココで生きていきたいから――


「いえ――――」


 切り分け並べ、乾燥の準備が完了したわたしは、食糧庫の一角に作らせてもらった乾燥のためのスペースに琥珀糖を移動させた。


「じゃ、後は上に行って作業しつつそのまま寝ます」

「おう、お疲れさん!」

「どうもです!」


 通報アーティファクトの改造を、早いところしてしまいたい。

 デザイン用ノートに計画案を描き込んで、そのまま試してみようと思っているのだ。


「あ、カードの修復もしようと思うんですが……接着し直すだけか、接着後上からコーティングもしようか迷ってるんですけど……どう思います?」

「上からコーティングか……。それ、何かの鍵になるアーティファクト何だよな?」

「はい。鑑定した結果、◯◯◯◯の鍵って出てましたから……」


 それ以上は、わたし達の持つ鑑定アーティファクトでは判別がつかず。


「そうすると、コーティングが鍵としての役目を阻害する場合があるから、俺としてはやめておいた方が良い気がするんだが――」


 大吉さんがそこまで言った時、突然カードとコインが光り出した。かなり眩しく。


「――⁉︎――」

「……どうした?」

「ものすごく光り出したんです……!」

「なんだって……?」


 そう言うと、不可思議そうな顔をしてカードを眺める。


 普通に眺めている、ということは……大吉さんにこの光は――


「俺には見えないが……」


 やっぱり!


「じゃあなんでこんな…………」


 カードとコインを合わせて、ようやく見えるくらいだったアーティファクト特有の光。それが今何故か、まるで強い力持つアーティファクトかのように光り輝いている。その理由は……


「もしかして……コーティングに関して……」


 わたしがそう呟くとなんと、その光が点滅しだした。


「何か言いたい事があるみたいです……!」

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