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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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324.大吉さんと舞子さんの出会った時

  そして昼少し前。早めのお昼ご飯をとったわたし達は、先に舞子さんのお店へと向かう。


「いらっしゃいどうぞ〜!」


 クリスタルランプ下の紐を引っ張ると、すぐに舞子さんの返事が聞こえ。わたしはドアを開けて元気よく挨拶をした。


「こんにちはー!」

「邪魔するぞー」


 奥の方からパタパタと出てくる舞子さん。

 カウンターの方へ来るとすぐに、冷えたお茶を用意してくれた。


「どうぞ」

「ありがとうございます」

「サンキュー。昨日はあの後問題なかったか?」

「なかったわ。あえていうなら、もうちょっとお客さんに戻ってきてほしいわねぇ」

「はっはっは、大丈夫そうでよかった」


 なかなか思い通りにいかないのが、商売ってモノよね、と言いながら自分に用意したお茶をクイっと飲む舞子さん。


「あなた達、これから教会に行くのよね?」

「はい」

「じゃぁ、ちょっとコレを持って行ってもらってもいいかしら?」


 そう言ってカウンターの下から何か箱を取り出した。


「こちらは……?」

「差し入れよ。昨日あなた達が教会に行くって聞いたから、うちのコックに頼んでつくっておいてもらったの」

「冷蔵は必要か?」

「いいえ。ただのクッキーだから必要ないわ。

 アソコではどのみち瞬殺だろうから、冷蔵物でも良かったかもしれないけど」


 そう言ってカラカラと笑う。


「よく……差し入れされるんですか?」

「私も教会にはお世話になった身だからね」

「お世話に……?」

「両親がねぇ。仕事で外国に行くことになって、連れて行けないからって預けられたのよ。小さい頃」


 そうなんだ。

 明るく話す舞子さんだけれど、色々な事があったんだろうなと感じた。


「そういえばおばさん達は今、どうしてるんだ?」

「仲良く元気にしてるみたいよ。数ヶ月に一度連絡がくるけど、先月の連絡では痴話喧嘩も見せられたから」


 そう呆れたように話す。

 痴話喧嘩も見せられた。ということはビデオレターみたいな物なのかな。


「両親が外国に行ったっきり、帰ってこないのに、お前は偉いよなぁ。こんなに立派に(?)強くもなって……」


 何故か腕を組んで目を瞑り、しみじみと言う大吉さん。


「まぁ、色々強くもなるわよね。親がいるのに孤児院にいた私は超特殊なケースだったから。

 イジメや仲間はずれはいつもの事で、はじめの頃はよく抜け出してたもの〜」


 あっさりと笑いながら言える舞子さん、すごいな……。それらの事は、きっと彼女の中で完全に“越えた”事なのだろう……


「その抜け出してきた時なんだよな、俺たちが初めて出会ったのって」


 大吉さんが子供の頃……髪の毛はやっぱり今と同じ感じに天然パーマだったんだろうな、なんて勝手に想像してウキウキしていると、舞子さんがわたしを見て言った。


「ふふふ、今度昔の頃の記録、見せてあげようか?」

「……ぜひ!」

「あんまり面白い物じゃないと思うが……」

「面白いとか面白くないとか、そういうモノじゃないのよ。これは」


 そう言うと舞子さんはわたしに右手を差し出してきて「約束ね」と言う。


 乗り気ではなさそうな大吉さんを横目に、ちょっと申し訳ないなと思いながらも、わたしは舞子さんの手を取った。


「ありがとうございます!」


 スミマセン。子供の頃の大吉さんの記録、見てみたい……!


「……まぁ止めはしないけどな…………」


 あまり見られたくない何かがあるのだろうか、ちょっと拗ねた感じに大吉さんは呟いた。


「そうだ藍華、修復の終わった物渡しておこう」

「はい」


 ちょっと不自然な笑顔で話題を変えてきた大吉さん。

 見せてもらえる時までに 少しは大吉さんの気持ちが少しはほぐれているといいな……

 そう思いながら、わたしはポーチから収納袋を取り出し、カウンター下で中から修復完了した物の袋を取り出し舞子さんに手渡した。


「こちら、修復の完了した物です」

「あら、もう? ありがとう!」

「七品ですけど。多分急ぎで欲しいんじゃないかな、というものから仕上げてきました」


 大吉さんと相談しながら作業をしないといけなか物もあったりして、そちらは避けて置いておいて。常用だろうものを修復して持ってきたのだ。


 舞子さんは袋の中を見て確認すると感動の眼差しでわたしを見て言った。


「本当に……良く気が利くわよね……!」

「いえ……自分に修復できる物を選んでしてきただけなので……」


 そう言いながら舞子さんを見ると、その頭に先日お渡しした髪飾りがあって、わたしは質問する。


「ところで。ピンと、外付けアーティファクトの具合はどうですか?」

「すごくいいわ! 気にかけなきゃいけないことが一つ減ると、色々なとこに余裕ができるのねって毎日実感中よ。本当にありがとう!」


 目を輝かせて言う舞子さんを見て、わたしも嬉しくなってしまう。


「それは良かった……で──」


 そこで、ある事を思いついてわたしは舞子さんの髪の、外付けアーティファクトに釘付けになる。


「どうした……?」

「外付けアーティファクト、警察の通報アーティファクトにも使えるかもしれませんね」

「通報アーティファクトに……?」


 大吉さんはしばらく考えるような顔をして、脳内でシュミレーションしているようだった。そして──


「多分イケるぞ……それ……!」


 そう言ってわたしをじっと見つめてくる。


「か……勝手に改造しちゃったらダメですよね……。蓮堂さんに許可を──」


 目を泳がせながらそこまで言うと、大吉さんはちょっと悪そうな、楽しそうな顔をして言った。


「事後報告でいい。もし失敗しても俺のがあるし、どのみち発注受けて、作るのも俺だから」


 喫茶店に戻ったら早速作業してみることにして、私たちは舞子さんの店を後にした。


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