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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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318.発動、結界アーティファクト

 戻ると、そこには即席の台が用意されていて、その上に大吉さんの作った結界アーティファクトが設置されていた。


「みんな、この台を蹴飛ばさないようにだけ注意してくれよ?」


 喜光さんがそう言うと、斎士郎さんが言った。


「それを蹴飛ばして動かせるのは喜光さんくらいしかいないと思いますが」


 その台は、どうやらコンクリートの塊のようで。まぁ確かに、普通に蹴飛ばしたら足の方が痛いのだろうなと想像がつく。


「それもそうか。じゃぁ台の上のコレを蹴らないように注意してくれ」


 そうは言うけれど膝ぐらいの高さまである台は、わざわざ蹴らなければ届かなそう。


「修復したやつを運び込む時は要注意っすね」


 そう言って斎士郎さんがまとめ、それぞれが頷いていた。


「で、誰が発動するんだ? 出来るだけ慣れてる奴が良いと思うが」

「一番慣れてるのは俺だろうな。こういう結界アーティファクトは何度か発動したことがあるから」


 大吉さんの問いに喜光さんが答えた。


「このアーティファクトは結界の精度を保つ為に、発動する人間によって誤差が出る。一応神職な喜光が発動したらおそらく六時間くらい発動したままになるだろう。が、それではアーティファクトが保たないから、四時間を目安に最低でも三十分は休ませてくれ。他の者が発動する場合はおそらく二時間位で張り直した方が安全だ。どれくらい保つかは光り具合でわかる」


 アーティファクトは基本、誰にでも発動が可能だけれど、合う合わない、得手不得手があるらしい。

 そしてそれはアーティファクトによって、効果の度合い、もしくは時間に差が出る。一定の効果を保つ為に、発動の時間に長短が出たり、時間は一定だけど、その効果に差が出たり、と。


 この結界アーティファクトは効果時間に差が出るタイプのようだ。


「四時間で止まるようにはできなかったのか?」

「結界アーティファクトは専門じゃないからな……今の俺には無理だ。そんな余分な機能付けたら大事な結界の方が不安定になる未来しか見えん。大体普通は無理なんだよ! 四時間以上も発動するのは!」

「そうか……」


 喜光さんも、色んな意味で規格外なのね……。


「まぁ……とにかく起動してみてくれ喜光」

「おうよ」


 大吉さんの言葉に、腕をまくるような仕草をしながらそう答えた喜光さんは。

 両手をアーティファクトに向けて翳して目を閉じた。


「……オン……!」


 どういう掛け声だろうか、オンって。

 と思いながらも、それが喜光さんの気合いの入れ方(?)のようなものか、と理解した。


 何故ならアーティファクトが発動する時、その力に物凄い安定感のようなものを感じたから。


 直後、結界アーティファクトから発生した力の波は、一瞬でその場を包み込んだらしく、すぐに自分が結界内にいるということがわかった。


「これは……スゴイ……」


 誰かが感嘆の声をもらす。


 例えていうなら、双葉ーちゃんのいる神社の境内に入った時のような雰囲気が、そこに出来上がっていた。


「こんなとこか」


 ふん、と腰に手を当てて喜光さんが言った。


「さすがだな、一瞬で“場”ができたぞ」


 大吉さんが感嘆の声を上げると、雷喜さんが辺りを見回しながら言う。


「昨日まで来てくれていた警察の方の結界アーティファクよりずっと……なんか頼りになりそうな感じですね……」

「お前、それは比べたらいかんとこだろうよ。

 コレは神社仏閣に使われているものと同じタイプ。昨日来てくれた警官のアーティファクトは持ち運び型の物で、本来こんな大きな場をカバーできる物ではないんだ」


 持ち運びタイプ。気になる──

 喜光さんの言葉に思わず反応してしまう。


「あぁ、そういえばそんなこと言ってましたね」

「そうか、警察の方から結界師がきてくれてたんだったな」

「大吉の事を話したらお元気ですか、って言ってたぞ」

「結界師の方とお知り合いなんですか?」


 大吉さんが知り合いと聞くと、思わず食いついてしまうわたし。


「あぁ、アーティファクトのメンテナンスを何度かさせてもらってるから……な」


 わたしからの視線の意味に気づいたようで、大吉さんはわたしの頭をポンポンとしながら言う。


「帰ったら、どんなアーティファクトだったか話そうか」

「ぜひー!」


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