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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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317.助っ人五人

「全員来てくれ!」


 喜光さんの呼びかけに、吾郎さんと斎士郎さんに続いて、そこにいた全員が集まってきた。


 キョウトからの助っ人さんは。お年を召したおじいさんが二人に大吉さんや喜光さんと同じくらいの年の男性が二人と、雷喜さんよりも若そうな、男の子が一人。


「こちらは喫茶店兼アーティファクト屋の『碧空』の二人だ。今回、この現場のために結界アーティファクトの用意をしてくれた。コーヒーなんかの差し入れにも来てくれている」


 まずはわたし達の紹介を喜光さんがしてくれた。


「おはようございます、作業中失礼します」

「失礼します」


 大吉さんに続いてわたしも一礼をして挨拶をする。


「昨日到着したキョウトからの助っ人の五人だ。左から……桃源(とうげん)秀玄(ひでとら)、秀玄の孫の秀彦(ひでひこ)と、林太郎に宗次。

 特に桃源さんと秀玄さんは、もう引退済みの職人さんなんだが、有志で来てくれたんだ」


 なるほど、それで仙人のような風貌の方がお二人。


「ついでにトウキョウ観光でもしようと思っての。着いてきちまったわい」


 ふぉっふぉっふぉ、と笑いながら言う秀玄さん。


「初めは秀彦だけが呼ばれていたんだが……」

「猫の手も借りたいと言うじゃないか、ならジジイでもよかろうと思ってな」

「まぁワシら、喜光みたいな無理はできんから。本当に猫の手程度じゃがな」


 陽気そうにそう話す二人。

 ご本人達は猫の手と言っているけれど、どこか百戦錬磨的な空気を感じて、ワクワク感が増してきた。

 もしかして、物凄い作業風景が見れるのかもしれない、と。


「林太郎と宗次は、休暇中だったところを無理やり呼び出してきてもらったんだ」


 こちらの二人は、頭に手拭いを巻いていて、身長も大吉さんと同じくらい。林太郎さんは無精髭で筋肉質、宗次さんは線が細く、何故かバックに可憐な花を背負っていそうな儚い系。


「それは……せっかくの休暇中にご苦労様だな」

「いえ……滅多にある事じゃないんで」

「この仕事が終わったら振り替えで休みがもらえるし、ここの修復が終わったら東北の方まで足伸ばしてみることにしたので」

「まぁ一石二鳥ですよ」


 そう笑顔で答える二人。休日が突然返上になったのに、すごいなぁ……。

 わたしだったら生気抜けちゃって、こんな元気ではいられないだろうなと、あちらでの仕事状況を思い出してしまう。


「戻りましたー!」


 そうこうしているうちに、雷喜さんが休憩所から戻ってきて、職人さんがその場に全員揃った。


「よし、雷喜も戻ったし。これから、この現場がいきなり埋められないようにするために、結界アーティファクトの使い方を軽く説明してもらうぞ」

「藍華、出してくれるか?」


 昨日出来たてほやほやの結界アーティファクト。


 感知阻害機能付きの袋に入れて持ってきたそれを、わたしがポーチの中から出すと、一緒に引っかかって出た何かが地面に落ちた。


 チリーン


「……!……」


 澄んだ音を響かせて落ちたそれは。この間舞子さんの所から戻ってくる時にぶつかった子供の落とし物の金色のコインのような物。


 しまった、ここに入れっぱなしにしてたんだ!


 コインはコロコロと転がっていき、とっさに追いかけてくれたキョウトからの助っ人さん、宗次さんが拾ってくれている。

 

「大吉さん、どうぞ」と言って、わたしは急いで結界アーティファクトを入れた袋を渡すと、そのコインを受け取りに宗次さんのところへ行った。


「すみません、ありがとうございます!」

「いえ……なんだか素敵なコインですね」

「そうですね、預かり物なのでどういう物なのかは知らないんですけど──」


 そう言いながら受け取ると、何か不思議な感じがして、わたしはじっとコインを見つめてみる。


 この感じは……アーティファクトの……?


 そう思った瞬間、わたしの目はアーティファクトの光を捉えていた。


 コインから感じるアーティファクトの気配は、間違いがなかったようで、薄い……とても薄い光の膜が見える。


「……⁉︎……」


 けれどその光はすぐ消えてしまい、コインの表裏を確認するものの、何も反応は見られなかった。


 何故──後でしっかり調べてみよう……


「……どうかしましたか?」


 宗次さんが問いかけてくる。


「いえ……やっぱり綺麗な模様だな、と思って」


 とりあえず、もう落とさないように、アーティファクトをいくつか入れてある小さな巾着に入れ、それをポーチの中にしまった。


「藍華、発動するぞ!」


 結界アーティファクトの用意が完了したらしく、大吉さんが言った。


「はい! 戻りましょう、宗次さん」

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