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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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315.バラされた石像のその後

 綺麗な四角い形に切り出されている部分があったり、ゴツゴツとした大小の岩の塊になっているところもあったり。それぞれが得意の武器にて行った解体作業は十分程で終わった。


 すっきりとした表情の警官達が去った後、残されたのは──


 何の石像だったのかなんて影も形も残っていない大きめな花崗岩の塊たちだった。


「皆さん……ストレス溜まってたんですね……」


 細かくなってしまった欠片を拾い集めながらわたしはつぶやいた。


「こないだ琥珀糖を食べた後になぁ……署長が夜勤の指揮をとりに行ってしまってな……。

 現場かき回した上に事後処理押し付けてったんだ。まぁ上からの呼び出しだったからしょうがなくはあるんだが」


 そう言って蓮堂さんは苦笑し。わたしは、あははは、と空笑うしかなかった。


「おい蓮堂、ちょっとここでいくつか整えていっていいか?」


 大きめの塊を選り分けていた大吉さんが拳より大きめの塊群を指して言う。


「あぁ。少し待ってくれ」


 入り口の所に立っていた蓮堂さんは、振り向いて壁に埋め込まれているらしきアーティファクトに手をかざした。そして何かを小さな声で呟くと、ソレは大吉さんに向けて一瞬だけまばゆい光を放つ。


「大丈夫だ。やって良いぞ」


 なるほど? この室内での攻撃系のアーティファクトの使用を許可する感じなアーティファクトかな。


「蓮堂さん、今のアーティファクトて、事前登録も可能なんですか?」


 先程の五人には、今のアーティファクト発動をしていなかった。


「よく気づいたな、そうだよ」

「登録に必要なものは何ですか?」

「登録時にその場にいることと、名前だ」


 ふむふむ。あとは──使用できるアーティファクトの限定が可能、とか、もしくは回数制限か時間制限がある、とかかな。


 まだ知らないタイプのアーティファクトが沢山あるのだろうな、と思うとウキウキしてきてしまう。


 そんな会話をしている間にも、大吉さんは塊を綺麗なサイコロ状に仕上げていた。



 ◇◆

 わたし達は、かけらを全て収納袋に入れ、蓮堂さんにお礼を言うと、急ぎ喫茶店に戻った。


「そういえば、大吉さん。結界アーティファクトのレシピって、どんなのか見せてもらっても……良いですか?」


 カロンカロンとドアベルが鳴る中、この話が出てからずっと気になっていたソレを、わたしは思い切って聞いてみた。


「もちろん。荷物置いたら俺の部屋にきな」


 ドキン、と跳ねる心。

 だけどレシピを見せてもらうだけだし──


 大吉さんの部屋には何度か入ったことがあるのだから、ここで変に緊張してしまうのもおかしかろう。


「……はい!」


 意を決して元気よく返事をし自室に行くと、ウェストポーチを外し、中から収納袋を取り出した。


 ふと机の上を見ると、そこには考え途中のアーティファクトのデザインが描かれたノートが。


 オートで迫り来る危機を、攻撃を防いでくれるような物が作りたい──

 そんな物を作るためにも、もっと色々なアーティファクトを知りたい。今回の結界アーティファクト作りも、必ず何かのヒントになる──


 そう感じていたわたしは、一体どんなレシピなんだろうとウキウキしながら、いざ大吉さんの部屋へ。


 部屋に通され入ると、作業机の上には一枚の紙が置かれていた。


「それがレシピだ。みていいぞ」


 大吉さんは何やら探し物をしているようで、椅子の上に立ち、棚の上の方の箱をいくつか下ろしている最中だった。


「ありがとうございます」


 その紙は、黄ばみもないのだけれど何故かものすごく古い物だと感じる。


「これは……古いレシピなんですか?」

「あぁ。再生の日から十年くらいの物だそうだ。その頃から様々な方向に特化した結界アーティファクトが作られるようになっていったんだが、そのうちの一つだ」


 紙には、全体像と一部を拡大した絵が描かれていた。


挿絵(By みてみん)


 中央にサイコロのような花崗岩があり、その周りには“虹の欠片”が散りばめられ、全面に六芒星のシンプルな魔法陣が描かれているもよう。


「コレを……レプリカではなく、一から作るんですよね?」


 レジンを使うにしてもかなりの量が必要になりそうで、ちょっと胸がドキドキしてしまう。


「あぁ。昔一度だけ作ったことがあるんだが、今も無事に使われてるようだから、機能的には大丈夫だろう」


 大吉さんは、棚の上から下ろした箱を机の上に置いた。


「そろそろ点検の時期だから、一緒に行ってみるか? 昔作った物が設置されてる場所」

「はい! ぜひ!」

「点検といっても、ヒビが入ってたりしたら埋めることしかできないし、それ以上の問題があったら作り直しになるんだがな」

「そうなんですか……」

「ま、今回沢山資材が手に入ったから。心置きなく作り直せる」


 いい笑顔でそう言って箱の蓋を開くと、中から出てきたのは、金属製の何か。


「取手付きの金属製の箱……が二つと、四角い窪みのある蓋? ですか……?」


 蓋かと思った物は、内側の箱に中にピッタリで、どうやら蓋ではないようだ。それを取り出すと、その下には指輪タイプのアーティファクトが二つ入っていた。


「そう。中に入ってるのは製作に必要な道具と特別な生成用アーティファクトだ。

 あと必要なのは……ワイヤーとこれ」


 金色のワイヤーの束とレプリカを作る時使用する資材の砂袋を机の上に乗せた。


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