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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
312/343

311.お互いに影響し合って

 入り口から少し奥に入った壁際に荷物を下ろし、休憩したわたし達は、夕飯前に作業を済ませてしまおうと、出発した。


 入ってきたのとは違う割れ目が二つあり、大きい方へと入り数分間進むと、昔は水が流れていたのだという所に到着した。


「あっちの方から水が流れてきていたんだ。その頃には魚とかも取れたらしい」

「地下の川……。飲めたんですか? その水」

「蒸留すれば、な」


 なぜなくなってしまったのだろう。

 水の残した跡を追いながら、またその先へと進んでいく。


「ここだ」


 大吉さんがそう言って立ち止まったのは、水源の方に向かってしばらく進んだ所。ガレ場と呼ばれる岩がゴロゴロ転がっている場所だった。


「良質な花崗岩を含む岩ではあるんだが、大きすぎるのと質が安定していないのとで捨て置かれてるんだ」


 小さいものは三十センチ程、大きいものは数メートル、といった岩。

 その中の小さい岩を一つ手に取り、大吉さんは続けた。


「そこでだ。これらの岩の中から、必要な質の部分を削り取って帰る」

「……!……」


 削り取って帰る。それはもしかして──


「藍華の発想からヒントをもらった。ありがとうな」


 傷ついた細石も、レプリカ技術を使えばトリプルAのクラスの石にできる。

 先日大吉さんの目の前でやったそれは、元はといえば、大吉さんがワイヤーの切れ端を再利用しているところから着想を得たもので……。


「そう考えると、一手間はあるものの、ここはまだ立派な採掘場で、ある意味お宝の山だな」


 大吉さんは、まるで少年のような笑顔でそう言った。


 その顔を見たわたしも、どこかくすぐったいような、嬉しい感情が湧き上がってきて笑顔になる。


 こうやって……お互いに影響し合って生きていけたらどんなに幸せだろうか────


「実証したらこの事も報告しないとな。乱獲されて山が崩れたりしたら大変だから公にされるのはだいぶ後になるだろうが」

「レプリカの元となれる原石に心当たりがあるんですね?」

「あぁ。任せとけ」


 自信満々な大吉さんの返答に、わたしの心配は吹き飛ばされ。


「じゃあそれぞれ鑑定しながら採取しましょうか!」


 わたし達はどんどん作業を進めていった。



 ◇◆


「高度の強めの部分て指定で集めましたけど……結構あるんですね」


 わたしは一つの大きな岩に狙いを定めて、そこから採取したのだけれど。その岩を半分ほど処理したところでもうすでに数十キロ分くらいの物が採取できていた。


「そうだな。だがレプリカの本体となるヤツが大きいサイズなんでもう少し欲しいかな……」

「何キロ分くらい欲しいんですか?」

「んー…………八百キロくらい……?」


 はっぴゃく。

 想像もつかない。一体元となるものは何なのだろうか。


「石像かなんかですか……?」

「それは……秘密だ。面白いから」


 面白いって。


 その後も作業を進め、大きな岩を四つ、砕き切ったところで大吉さんがオッケーを出した。


「これだけあれば十分だろう。藍華、収納袋を出してもらえるか?」


 そう言いながら、大吉さんは小さい袋に大きめの塊をいくつか入れていた。


「はい。その袋に入れてるのは……」

「コレは予備だな。もし予定してるとこのが無理なら、の」

「そうなんですか……。でもそれだけで済むなら、そっちの方を第一候補にした方が良いのでは……?」


 もしかして、政府の要所に行かないといけなかったりして難しいのだろうかと思ったけれど、聞かずにはいられなかった。


「まぁな……ただそっちはちょっと難しいとこにあってな……」


 やっぱり


「っていうのと、どうせやるなら面白い方が良いだろうと思ってな」


 何がそんなにお面白いのだろうか。


「……わかりました。じゃぁその時まで楽しみにしてます」


 無理に聞き出すのもアレなので。わたしはそう言って諦めた。


 重さを感じないとはいえ、自分の楽しみの為に大量の石の詰まった袋を持ってもらうのは気が引けると言うので。

 収納袋は大吉さんが持つことに。


「さて、じゃぁ確認してもらえるか?」

「はい」


 砕いた岩の前で、わたしは先ほど見つけた新たな『資材』となる岩があるのか確認するために、視る力を解放した。


 閉じていた目をそうっと開くと、ポツポツと光が見えた。


「多少見えますが、アソコより随分少ないし小さいですね……。砕いたところには砂つぶ程度の物しか無いみたいです」


 あたりを見回すと、水の流れていたという所にもチラホラとその光が見えた。そして先の方を見ると、ハッキリとは視えないけれど、何かゾクリとするモノを感じる。


「水の流れていっていた先の方に行ってみても良いですか?」

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