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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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308.墓石とハバラキ

「今回探す石は花崗岩、御影石とも呼ばれている」

「御影石! お墓とかに使われている、あの……?」

「そう、古くは墓にも使われてたらしいな」


 今は使われていないんだ?


「今は木材が使われている。年一で手入しないと、自然に還るタイプだ」

「自然に還る……。それはまたなんと言うか……」

「アーティファクトだからな。管理する者のいなくなった墓は朽ちていくだけ……なら、自然に還るのはいい事じゃないか?」


 人の心が、形をそこに留めさせるのか……

 自然に還ったお墓も多いのだろうか。少し切ないような感じがした。


「毎年お盆の時期とかに手入れに行けば問題ないし、業者に頼むこともできるから、うっかり自然に還るってことは少ないだろう」


 少ないだろうって。


「昔墓石に使われていた花崗岩は、結界系のかなり力の強いアーティファクトの材料でな。その力が判明してからというもの、盗難が相次いだりして、ある時期に全て政府の管理下に置かれるようになったんだ」


 なんという。


「じゃぁもしかして、政府の重要な場所とかには……」

「もちろん使われている。結界アーティファクトの要として」


 墓石に守られている政府機関。


「ちなみにここはハバラキという土地で、再生の日に落ちた隕石が原因か、地面は隆起し山頂だった部分が地中に埋まったんじゃないかと言われている」


 ハバラキ、ハバラキ……茨城……?

 こんなとこにもニアミスのような名前の違いが。


「この洞窟入り口の大きなクレーターはその隕石の落ちた跡……なんですよね……」


 あんな大きなクレーター。どの位の大きさの隕石が落ちたのだろうか──

 どんなに昔のことだとしても、なぜだか祈りたい気持ちになる…………


「じゃぁもしかして、今いるここは昔地上にあった場所なんですかね?」


 大吉さんは、ここからは見えない空を仰ぐように上の方を見て言った。


「その可能性もあるだろうな……」


 同じように上を眺めると、真っ暗だけど何も見えず。星も月も見えないことが、ここは地上ではないのだなと実感させてくれる。


「次の降下先はここより狭いスペースの所だ。そこを壁にそって歩いていくと、また大きな穴がある。そのずーっと奥の方に、良質な花崗岩が採取できる場所がある」

「そんな奥の方……よく見つけれましたね……」


 ライトがあってようやく数メートル先がなんとか見えるような暗闇の中。何が何処にあるのかなんて、どうやって見つけたのだろう。

 ここに降りてくるまでに人が通れるくらいの岩の割れ目や穴が一つづつはあったし。その全部を確認したのか……


「俺は発掘の師匠みたいな人に連れて行ってもらって覚えたんだ。

 そういえば、初めはアーティファクトを使って探したって言ってたな、師匠」


 発掘のお師匠さん。


「今はその方は……?」

「ナラの方に住んでるよ。現役からは退いてるが、時々フラフラこっちの方にくるからそのうち会えるだろう」

「そうなんですか、ちょっと楽しみです」

「俺も会わせるのが楽しみだよ」


 どんな人なんだろうか。大吉さんが師と仰ぐくらいだから、きっとすごい人に違いない。


 その後もわたし達は、たわいのない会話をしながら休憩をとり、再び降下をはじめた。

 先ほどより長い距離だったようだけれど、大吉さんの降下速度が上がっていたようで、だいたい同じくらいの時間をかけて次の休憩場所までたどり着いた。


「藍華の作ってくれたライト、保ちが良くてホント助かる。今まで使ってたやつは降下中に一度休めないといけなくて大変だったんだ」

「いえいえ、大吉さんが細かく希望を教えてくれたので、出力する力をそこ一本に絞れたのが長持ちの要因ですよ。たぶん」


 形態は完全にわたしの好みだったんですけど。


「気にかけなければならない事が少なくなると、別の方に力が割り振れるから、これならまだまだ続けられそうだ。発掘業」


 そう嬉しそうに言う大吉さんを見て、わたしも嬉しくなる。


「それでも無理はしないでくださいね?」


 護衛もだけど、発掘も命の危険のあるお仕事。心配せずにはいられない。


「もちろんだ……と。そうだ、少し全部のライトを切ってみないか?」

「……?……」

「見せたい物がある」


 ランプの灯りで見える大吉さんの表情は、どこかウキウキしているようで、この暗闇の中で見せたい物って……? と思いながらわたしは頷いた。

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