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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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306.現着、ミニチュアアーティファクトと燻製のお話

 わたし達は『棒人間の指輪』を使い、途中休憩も取りながら通常二日程度かかるらしい道のりを半日でやってきた。


 そして到着したのは、地面が隆起して崩壊したのだろう街の廃墟と、大きなクレーターのある場所……


「通常はな。洞窟前で一晩あかして明け方入ればその日のうちには出てこれるが、今回は少しでも早く戻りたいから、内部で一晩あかす。すまないな」

「大吉さんと一緒なら、平気です。慣れてるんですよね?」


 色んな意味で平気じゃないかもだけど。


 発掘で地下に潜り、内部で一晩二晩過ごすのはよくある事だと以前聞いたので、わたしは今回も当然のようにそうなると思っていた。


「体力的なモノはわたしの方が確実に劣るんで、アレですけど……適度にアーティファクト使ってチートするんで、大吉さんは気にせず進んでください」


 大吉さんは苦笑しながら「わかった」と答えた。


 昼ごはん休憩をしっかり取って、太陽の光をしっかり浴びてから中に入ることにしたわたし達は。クレーターの中腹にある、地の底への入り口横に腰掛けて、昼食と中に入ってからの食事の用意をし始めた。


「藍華の作ってくれた収納袋、冷蔵機能というか素材を入れた時の状態に保つ能力もしっかりあるみたいだな!」


 店の冷凍庫から持って来た氷の袋を収納袋から取り出すと、大吉さんが言った。

 コップに一粒づつ入れ、戻すと


 その袋があれば、店で調理した物も持って来れるようになるから、発掘の楽しみが増える」


 今度は嬉しそうに何か煙の出る木を燃やし始める。


「じゃぁ食料は全部袋に入れる感じでいきますか?」

「そうだな……非常食セットだけは俺が持つから、他のは頼もうかな」


 煙が先ほどより強くなってきて、何か焼いているわけでもないのに美味しそうな香りがしてきて、わたしは聞いた。


「ところで、それは……何かを燻製にしようとしてるんですか?」


 わたしが食べた事ある燻製のものというと、就職祝いにいただいた燻製生ハムくらいなのだけど。その時とよく似た香りがして、あの感動が口内に甦ってきて、思わず生唾を飲み込んだ。


「あぁ、さっき市場で買ってきた野菜と肉だよ。普段なら体を休める目的もあって、時間かけて長持ちする温燻にするんだが。

 今回は潜る期間も短いし、熱燻(ねつくん)にしようと思って」


 金属製の台に、籠というには随分浅い、網を乗せながら大吉さんは言った。


「燻製って煙で燻すだけじゃないんですか? 温燻とか熱燻……? って何か種類が違うんですか?」

「おぉ、違うぞ〜。温燻ってのは低温の煙で長時間、最低でも四時間はやりたいな。熱燻は高温で三十分くらいからだ」


 もう。煙からいい匂いすぎてお腹が……


「卵もやってみるか?」


 ぐぅぅぅうううう


 タイミングよくお腹が鳴ったことでそれを返事とし。わたしは無言のまま頷いた。


「よし、じゃあやろう」


 くっくっく、と笑いながら大吉さんは自分の持つ食料袋からゆで卵を出し、他の材料も網の上に並べていく。

 そして、左ポケットからアーティファクトセットのついたチェーンを引っ張り出し、先についていた、銀色の四角いアーティファクトを外した。


「これは、こういう外での燻製にちょうどよくて、もっぱら燻製用に使ってるアーティファクトなんだが。本来は別な使い方をしていたらしいんだが……藍華はコレがなんだかわかるか?」


 大吉さんがそのアーティファクトを起動させると、昔懐かしい(?)ラーメン出前によく使われていそうなオカモチが具現化した。


「えーっと……」


 ミニチュア作家さん達の作品も大活躍、ってことかしら?


「ラーメンを配達する時の箱……ですかね」

「ほぉー、昔はこういうのに入れて配達してたのか! 面白いな」


 今はどんな風に配達しているのだろうか。


 次々と燻製にしていく中、お腹が鳴るのが止まないわたしに、大吉さんが一品だけなら今食べていいぞと言ってくれた。じゃぁ、とわたしは一番気になっていた卵を一つ、いただいて。あまりの美味しさに、言葉も出ないほど感動したのだった。


 ◇◆


「さて! じゃあ出発するか!」

「はい!」


 時刻は十四時半。

 燻製にした食材は予定通り収納袋に入れて、わたし達は改めて洞窟入り口に立った。


「では、お渡しします。

 手放しライトの額飾り〜!」


 ウェストポーチの中に入れてあったミニ缶から、チェーン素材を使用したそれを取り出して渡す。


 金古美色のチェーンはちゃんとサイズを変えれるようにアジャスター部分を長めに取ってあり、アジャスターの先には前後でバランスを取れるように額にくるメインのトップ部分と同じくらいの重りが付いている。

 手放しでつけれるライトと言ったら、額に着けるでしょう! と思いたち作ったそれだったが。まぁ確かにちょこっとだけ少女趣味ではある。


 ぴろーんと広げて、それを見る大吉さん。


「コレを頭に……?」

「はい!」


 ニコニコ笑顔で答えるわたし。

 大吉さんは少し考えるような間の後、聞いてきた。


「見たところ、メインはこの部分だな?」


 そう言って、直径二センチの半球部分を指す。


「……そうですけど」

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