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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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292. 埋まる危険と差し出された手

「それにしても、よく見つけたな、藍華さん」

「偶然ですよ。地層が綺麗だなーって思って舐め回す様に見てたので……」


 露になっていたのはほんの一部で。瓦礫の向こうの地層が見たかったのも事実。ソレがほんのり光って見えなかったら気づかなかっただろうけれど……と……あれ? それならどうして喜光さんは気づかなかったのだろう。確か彼も未使用アーティファクトの光が視えるはず……


「大吉さん、その球体の物ってアーティファクトなんですか?」

「アーティファクトとは呼べないな。コレはただの目標で、あえて言うなら磁石的な物だ。特定のアーティファクトにのみ反応し、力を引き寄せる」

「なるほど……」


 じゃぁ、光って見えた気がするのは気のせい……?


 視てみようと思ったものの、それよりも気になった事があって、わたしはそちらを優先した。


「そういえば、消えた土はどこに行くんですか?」

「アーティファクトの作り出す亜空間に保管される。採掘後、土砂崩れなどを起こさない様元に戻せるのがこのアーティファクトの良いところだ」

「なるほど、じゃぁ瓦礫を退けて、その件のアーティファクトがあれば、地盤は元に戻せるってことですね」

「そうだな……」


 見つかれば、の話だけれど……。


「見つからなくても、なんとかする方法はある。もしそうなったら、何日かに分けてやることになると思うが、ぶっ倒れない様にしてくれよ?」


 喜光さんが斎士郎さんの肩を叩きながら言うと、


「さ……サポートはお願いします……」


 斎士郎さんは項垂れながらこたえた。


 どこか楽しそうに話している彼らの横で、大吉さんは少し深刻な顔をしていて。重そうに口を開く。


「喜光。出来るだけ早く結界を張ったほうがいい……。

 コレをやった奴が抜き取った地盤をいきなり元に戻したら──全部埋まる」


 ──‼︎

 そうか……残っている黒い半球は戻す時の為の目印みたいな物……とすると、この現場はいつ、何時、もとあった土が戻されるかわからない状態である、と──


「もちろんだ。と言いたいところなんだが、手持ちの物じゃ多分弱いな。

 おそらく……それを防ぐには、ランクA以上の結界が必要だろう?」

「そうだな……」


 結界にAランクとかあるんですか。


「お前の所にそういうアーティファクトは置いてないのか?」

「そんな神社仏閣級な結界アーティファクトが、一介のアーティファクト屋にあると思うのか……?」

「いやー、お前の所は色々と規格外だろう?」


 神社仏閣級がAランク。それは相当なレベルなのだろう。

 大吉さんは軽くため息をついて喜光さんを見た。


「レシピはあるが、材料がない」


 興味津々そのレシピ。


「どれくらいで用意できる?」

「明日出発したとして、四日……いや、三日だな。なんとか保たせれるか?」

「やってみよう。斎士郎、一旦引き上げだ」

「了解しました」

「大吉、藍華さん、すまないが作業見学は次回で頼む。安全が確保できない限り関係のない者は出来る限り立ち入らないようにしないといけないから……」

「あぁ」

「わかりました」


 わたし達は二人同時に返事をした。


 もし、突然抜かれた地盤が戻されたら……身代わり護りじゃとても助からない……


 そうは思ったけれど、自分と大吉さんの手首。そして光からわかる、喜光さん、斎士郎さんの懐に入れられている身代わり護りに、『皆んなの命を護って』と願わずにはいられなかった。


 持ってきた差し入れは、そのまま喜光さんに渡して。わたしたちは現場を後にして、蓮堂さんの働いてる警察署へと向かった。


「……何かイルな……」


 隣を行く大吉さんが呟いた。なんだかデジャビュ。


「敵意じゃない何か、ですか……?」

「あぁ。見てるだけの視線だ」


 お店の方でもあって、今ここでも。一体誰が、何の目的で……?


「常にってわけじゃないんですよね?」

「こないだと今だけだな」

「どうします?」


 わたしにはわからないその視線。危険な物じゃなければ良いのだけれど……


「わざわざ情報をやる必要はないが……今は署に行くだけだからほかっておこう」


 そう言って、左手をわたしの方に出してくる大吉さん。


「…………」


 まさか、この手は……


「……ん……」


 繋げと……?


 見上げて目を見ると、一瞬だけバチっと目が合いすぐに進行方向を見る大吉さん。瞬間、わたしの顔は蒸気した。


 大吉さんの手に自分の手を乗せると、ぎゅっと握られわたしの心臓は大きくはねる。


 しょ……署まで保つかなワタシの心臓…………

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