286. 身を守るためのアーティファクト
「どなたか試験官にお知り合いがいるんですか?」
「常に試験官やってるわけではないらしいが。ほら、藍華も知ってる。辛子だよ」
「辛子さん!」
そういえば。新しく作ったアーティファクトも登録の義務があるから。そのうちまたお会いすることになるだろう。
「あいつは鑑定アーティファクトの使い手だからな。それもクゥさんから直接レクチャーを受けているから、奴の右に出る鑑定士は多分キョウトにでも行かなければいないだろう」
クゥさん。一体何を、どんなふうにレクチャーしていったの。
「何度もキョウトの方に呼ばれてるが“めんどくさい”の一点張りでトウキョウを離れた事がなくてな。ならば試験官くらいはやってくれって事で、時々引き受けてるんだそうだ」
「じゃぁ、辛子さんが試験官を担当する時を狙って受ければ……!」
「いけるかもしれないな」
免許があれば、わたしもちゃんと仕事ができるようになる。
「これから作る新しいアーティファクトが完成したら、登録ついでに聞いてみるか」
「はい!」
出向かなければならない修復のお仕事もあるというから、そういうものも引き受ける事が出来るようになるし。
何より……それでようやく、ちゃんと大吉さんの隣に立てる気がする──
「よし、じゃあ新しいアーティファクトの計画するか。何か案があるんだったよな?」
「一応……今一番作りたいと思っているのは、防御系の物なんですよ。身代わり護りは、確かに護ってくれるんですが、文字通り“身代わり”で。最後の手段って感じなので……」
護る代償として石にヒビが入る。下手すれば割れ砕け、そこから先は使用不能になってしまう。
「そうだな、千切れてしまうともう使えなくなるから、護衛職の者なんかは常に数本持ち歩いている。アグネスたちだって、普段は身につけていないが持ってるはずだ」
「結構一般的な物なんですね?」
「あぁ。どこでも、ってわけではないが主要な神社仏閣に行けば御守りと共に売ってるし。編み方で効果や力の方向性が変わるから、全く同じ物って事は滅多にないが」
そこまで特別な物でもなかったのか。それで販売許可も簡単におりたんだな、と思い出す。
今度色々諸々のお礼に、二人にも作ろう。
「藍華のソレの場合、効果が異常だがな」
異常って……。
わたしは苦笑しながら続けた。
「で、話を戻して。わたしが作ったもう一つ、防御結界のアーティファクトですが、コレはチームで戦闘を行う時には良いかもしれないけれど、一人の時にはあまり役に立てないですよね」
「そうだな……物は使いようだとは思うが。この時代、この世界の人間は、通常一つのアーティファクトしか使用できないから、アルジズを起動していると他のアーティファクトの使用が不可。攻撃に転じるにも必ずアルジズを解かなければならない。そうなると相手が複数の場合、解いた隙を突かれる可能性は高いな」
「ですよね──そこで考えた案が二つあります。一つ目は、電池式の一定時間オートで結界を張ってくれる物です。アルジズ系の物にはなるんですが……」
そう言って、わたしは持ってきていた物の中からデザイン画を一枚取り出して見せた。
「デザインは少し変えると思いますが……」
ソレは一般的な、カン付きカボションベースに、ルーン文字のアルジズと、水晶、ワイヤー、金属片の電池ギミックに、モリオン(黒水晶)の細石を入れたイメージで描いた物だった。
「モリオンは、災難を防ぐというよりは、寄せ付けないんだそうです。なので、ルーン文字アルジズとの相乗効果を狙ってます」
「なるほど……コレは使えるな。俺も欲しいぞ」
やった!
「では、作ってみます。効果のほどは、お楽しみに、ということで。もう一つの案の方ですが──わたしは舞子さんが一人でも、もっと安全に身を守れるようにって考えてたんです」
大吉さんや蓮堂さんの様子から、そして、アグネスとフェイから聞いた舞子さんの武勇伝から想像するに、彼女は“戦える人”……。ならば、結界アーティファクトは拒否されるかもしれない。
「そうか……」
おそらく大吉さんも同じ事を思ったのだろう、難しそうな顔をして黙ってしまう。
「アグネス達から色々聞いたんですが、舞子さんは体術に長けてらっしゃるんですよね?」
「あぁ」
「そして、攻撃系や結界系のアーティファクトはあまりお好きではないと」
「そのとおり、ああ見えて肉体派なんだよ。あいつ……」
アグネス達に聞いたとおりだ。
「理由は、あの姿を保つため……ですよね……」
大吉さんは苦笑しながら頷いた。
後程デザイン画を入れにきます〜=͟͟͞͞ (¦3[▓▓]




