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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第二部 一章 寺院の修復とその裏で動く影
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283. 込める想いに遠慮はいらない

 食事をしながら、喜光さんは現場がどんな状況だったかの話を大吉さんにしていた。


「一体何がどうしてあんなふうに陥没したのかって問題だが……大吉はどう見た?」

「あんな規模の陥没、自然じゃありえないだろう」

「だよなぁ……だが、原因究明は俺の仕事じゃない。だからとりあえず考えるのはやめたが。どのみち地盤から立て直さないといかんだろうな。川の近くだし」


 そうか……やっぱりアレは自然に起きたモノじゃないんだ……。すると例の教会関係者 (※第一部参照)が…………?


「そういえば大吉、直後に現場に行ったんだって? その時何か見たり感じたりしなかったか?」


 聞かれて大吉さんが追加のチャーハンを炒めながら答える。


「あの時はなぁ……とにかく救助作業でいっぱいいっぱいだったし……」


 わたしもだ……。とにかく助けたい、という思いでいっぱいで、アーティファクトをあんなにばんばん使うのもあの時が初めてだったし。

 今なら何か違和感に気づくこととかもできる……かもしれないけれど……


「藍華はどうだ? 何か覚えてるか?」

「わたしもいっぱいいっぱいであまり記憶が……」


 その上空腹で倒れちゃったし……。


「そうか……」

「すまないな」

「いや、調査とかは警察も進めてくれているようだし、そちらに任せよう」


 追加のチャーハンが出来上がり、失礼してカウンターを挟んだキッチン部分にてわたし達も夕食をいただいた。


「で、どれくらいかかりそうなんだ? 修復」

「わからん。建物の修復だけなら二ヶ月、といったところかな」

「二ヶ月はキツイですよぉ。だれもかれも喜光さんと同じようには動けまへん!」

「俺たち五人、全員倒れずに……やるにはその倍の四ヶ月かかるかと……」


 雷喜さんに続いて康介さんも口を開いた。


「そうか……? ちょっと残業気味にやったらイケルと思うんだが……」


 これは……もしかして……


「喜光、修行バカなお前の体力についていくのは俺でも難しいぞ……?」


 喜光さんは修行バカ。


「通常移動含めて一ヶ月かかる資材調達を一週間でやってのけるお前には言われたくないな」


 いったいどんなチートをしたのか大吉さん。


「まぁ、冗談はそこまでにしておいて」

「お前が言うと冗談には聞こえんぞ」

「とにかくだ」


 大吉さんのツッコミを軽くあしらい喜光さんは続けた。


「上から期限を言い渡されててな。それが二ヶ月以内なんだよ。特殊部隊の任務だって、そうそう休んではいられないし。

 もうすでに現状等の報告をあっちに送った。期限内に終わらせるなら、最低でももう五人は必要だと。あと、こちらでの人材の調達を許可してくれ、とな」


 言い終わると、喜光さんはチャーハンの残りを口の中にかきこんだ。


「アーティファクト作業だから、宮大工が立て直すより簡単だと思われてそうな期限の決め方だな。実際は部品一つでも足らなかったらその部分は一から作る作業になるというのに」


 大吉さんのその言葉に、改めて大変そうだとわたしは思った。


「大吉、日本酒あるか?」

「料理用のあまり良いやつじゃなくても良ければ」

「それでいい、三人分頼む」


 大吉さんが食糧庫の方に行ったので、わたしは棚の上の方に置かせてもらっていた物を取り出した。


「喜光さん、お食事中失礼しますが忘れるといけないので……こちら朝頼まれた物です」


 大吉さんにお願いして、お店の紙袋をいただき、包ませてもらったそれを喜光さんにお渡しする。


「おぉ、ありがとう!」

「いえ。多分ですけど……コレは、こちらに来た皆さんの為、ですよね?」

「あぁ、そうだ」


 全部で五本ということは。おそらく寺院修復のために来ている人達のためだろう。そう思って勝手にだけれど、喜光さん含め皆んながどうか無事にこちらでの仕事を終えれますように、と願いを込めて作業をした。


 自覚はないけれど『古の巫女』が想いを込める力が強いというのならば。そしてアーティファクトとしての能力が高くなるというのならば。


 作る時、込める想いに遠慮はいらない。


「憶測でしたが、どなたが使うのか想像しながら作ってみました。修復作業、危険の伴う作業もあるかもしれない。そういった危険から身を守れるよう……。お役に立てたら嬉しいのですが……」


 オーダーを受けるなんて、わたし程度のハンドメイダーでは、あちらの世界ではまずなかったし。イベントに出ないわたしでは、作った物を使ってくれる人との接触も……実は大吉さんが初めてだった。


「役に立てるも何も。双葉さまからもお墨付きなんだ。もっと自信を持ったらいい」


 確かに、わたしの作る作品はアーティファクトとしての力が強いのかもしれない。でもそれは、あちらからきた者、古の巫女だからだというだけで、わたし自身の功績でもなんでもない……


 嬉しいけれど、モヤモヤした気持ちを抱えたまま、わたしは苦笑しながら喜光さんにお礼を言った。


「……ありがとうございます」


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