027.この世界にはスカイツリーがない?!
「陥没事故のあったところとは反対方向の方にずっと行った所だ。」
スマホの地図を拡大して見る。
「何か・・・背の高いタワーがどうのこうのって言ってた気がする」
「スカイツリー?!!」
「それだ!
東京タワーはある、けどスカイツリーはないのね、って言ってた。」
「ないんですか・・・?!」
「そういう計画があったという記録はあるが、途中で頓挫してなくなっているんだ。クゥさんが言ってるのを聞いて、後から気になって調べたんだがな。」
クゥさんはスカイツリーを知っていた・・・・・・となるとやはりわたしと同じ世界線からやってきたんだ。
「じゃぁやっぱりここはわたしのいた世界の未来ではなく、何処かで分岐して別の道を歩んだプチ異世界、パラレルワールドってことになるですかね。
そしてクゥさんは、わたしと同じ世界線から来た。多分。」
何かの拍子に、わたしのいた世界とこの世界とが、つながって飛ばされたのだろう。
「まぁ俺からするとアーティファクトのでたらめな能力をよく知っているから、ありえない話ではない・・・と思うが・・・・・・」
「わたしもそう思いますよ・・・。
アーティファクトの全てを知るわけではないですけど、その力が凄くて変なんだということは十分にわかります。
ただ───
わたしがどのアーティファクトでこちらにきたのかは謎なんですよね。」
棒人間のオマージュネックレスをシャツの下から出して見る。
「これはおそらくあらゆる物を浮かべる能力を持つんです。そしてある程度移動させることも可能。
慣れもあるかもしれないですが高速で大質量の物を動かすのは難しいです。」
陥没事故の時は必死すぎて試してもいないけれど、慣れてくるたびに細かな操作がしやすくなっていった。
けれど、これで時間移動や世界の移動ができるとは思えなかった。
でもって閉店前、トイレ休憩の時にふと思いついて、元の世界に戻るイメージをして力を発動させようとした時にはうんともすんともだった。
物を浮かせる方はすぐに反応して光り始めたのに。
「そうか・・・。
クゥさんがきた時も色々な条件が揃って、だったようだったから、多分藍華もそうだろう。」
「クゥさんはどうやって戻っていったんですか?」
「それが・・・ある日突然。一緒に店に帰ってきたはずだったのに店のドアを超えた瞬間いなくなってたんだ・・・・・・
ちょうど花火が上がる日でな。
クゥさんが店に入った直後1発目が上がったんで、ちょっと見とれてたんだ。
早く見に行こう、と言おうと思って続いて店の中に入ったのに、店内にはもういなかった。」
少し寂しそうにそう言う大吉さん。
「でもまぁ常に帰る方法を探すと言っていたし、いつ書いたのかわからないけど置き手紙もあったし、彼女がいなくなった後行った発掘現場で、碧空作品の新しいアーティファクトを発掘して、多分無事に戻ったんだろうってことは想像してたから安心したんだがな。」
クゥさんは確か小さいお子さんがいるはず。
きっと必死になって帰る方法を探してたんだろう・・・・・・。
「・・・どんなアーティファクトを見つけたんですか?」
わたしも知っている作品だろうか、と気になって聞いてみる。
「こちらにある材料ではどうしても思うものが作れない、戻ったら絶対に作ると言ってた物で、コレだ」




