272.お久しぶりの舞子さん
「俺は荷物を片付けるから、藍華は冷蔵庫の整理、頼めるか?」
わたし達四人は護衛の依頼を完了し、軽く打ち上げをする約束をして別れた。アグネスとフェイは宿の確保に行き。わたし達は帰る途中で軽く買い物を済ませ、喫茶店へ。
「了解です。ダメになってる物があったら出して、買ってきた物を入れておきますね!」
「あぁ。判断は任せる」
大吉さんがそう言いながら店のドアを開けようとすると、聞き覚えのある声が……
「ちょっと! あなた達!」
この声は……
「予定より遅かったんじゃない? 大丈夫? 元気だった?」
「舞子さん!」
ちょうど通りかかったのか、大吉さんの幼馴染、舞子さんが駆けつけてきて、何故かわたしの両肩をがしぃっと捕んで言った。
「お久しぶりです。見ての通り、元気ですよー!」
色々あったけど、と心の中で付け足しつつわたしは答えた。
「それなら良いけど……。あら、貴女……なんだか雰囲気が…………」
そう言ってまじまじと頭から足まで眺められ、むず痒くなってくる。
「舞子! 早くその手え離せ……」
そう言うと大吉さんが、わたしの後ろから舞子さんの両手を掴んで肩から引き剥がした。
「何よもぅ……」
無理矢理引き剥がされると思っていなかったのか、舞子さんはそう言うと手を引いて、少し驚いた顔をして大吉さんをまじまじと見る。そして、再び私を見ると何かに気づいたのか、それまでとは声のトーンが変わった。
「藍華、シンプルで可愛い指輪ね、ソレ」
左手の小指にはめている指輪を指して舞子さんがそう言うと、思わず顔が上気するわたし。それを見た舞子さんは、ニヤけたいじわるそうな表情をして、わたし達をジロジロと見た。
「はは〜ん……ほほぉ〜ん……あなた達。
へーほー。そういうこと〜」
いたたまれなくなってチラリと振り向き気味に見上げると、大吉さんは珍しく、ムッとした顔で舞子さんを見ている。
店前の通りには、そこそこ人通りがあり。人の目のあるところでわざわざご報告することでもないしと、わたしがモジモジモゴモゴしていると、
「久しぶりー、舞子! 相変わらず詐欺ってんなぁ!」
宿を取るため、先にホテルの方へと行っていたアグネスとフェイがやってきて、舞子さんに声をかけた。
そっか、大吉さんの所でみんな繋がりがあるのか。
「コレが私のホントウでしょー? 何言ってんのよ!」
舞子さんとアグネスが楽しそうに世間話をはじめると、「とにかく中に入ろう」と大吉さんに手を引かれ、店内へと入った。
「藍華の荷物も部屋の入り口に置いておくから、冷蔵庫の整理が終わったら自分の荷物を片付けてきな」
「はい、ありがとうございます」
大吉さんの声が心地よくわたしの中へと響いてきて、何でもない会話なのに心が嬉しさを感じる。
こんな日がいつまでも続いたら良いな…………
しばらくすると、アグネスとフェイの二人だけ店に入ってきて、ちょうど冷蔵庫の整理が終わったわたしはアグネスに聞いた。
「あれ、舞子さんは……」
「蓮堂も連れてくる、と言って走ってったぞ」
フェイの返答にアグネスが笑いながら合いの手を入れる。
「ものすんごい速さで」
舞子さん。本当の姿は知らないけれど(※舞子はアーティファクトで見た目の姿を女性に変えています)、しなやかな体躯にしっかりとした筋肉の気配を感じるのよね、どことなく。さっき両肩捕まれた時も妙な安定感が…………
「どうしても知りたいってわけじゃないんですが……」
「なんだ?」
「お二人は舞子さんの本当の姿をご存知で?」
あの女性の姿も美人さんだし、本当の姿もきっと美形に違いない。そう考えながら聞くと、アグネスとフェイは、揃って苦笑しながら言う。
「知ってるよ。大吉がクゥと出会う以前からの付き合いだからなー」
「大吉と二人並ぶと、ある種のお姉様方が湧いて出てきてたなぁ……懐かしい」
ある種のお姉様方……?
なんだか楽しそうに話しているから、深く考えるのはやめておいて。二人におしぼりとお冷を渡し、大吉さんと舞子さんの武勇伝のようなものを聞かせてもらった。
お久しぶりでございます!
リアルもちゃんと生きて、とハンクラと執筆も、全部やりたい!
そんな欲張りな自分です。お待ちいただいた皆様も、初めましての皆様も。よろしくお願いします!
月木の週2回更新しながら公募用も頑張って書きます_φ( ื▿ ื)
いつか皆様と紙面でお会いできます事を夢見つつ꒰ঌ(´ᵕ`*)໒꒱




