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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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261.気持ちの再確認と気になる事柄

 あちらの世界では、あまり人と関わることが得意でないからと、リアルでは常に一人でいた……。

 SNSでも本当の悩みや本音をツブヤクことはなかった。けれど──

 三人のその言葉に、唯一、多少だけれど悩みを打ち明けたりすることができていた、ハンドメイドグループに似た暖かい空気を感じて……


 懐かしくは思うけれど、やっぱりわたしは『ここに』いたいんだ──


 そう……自分の気持ちを再確認した。


「ま。それでな、今朝。とにかく追跡できているところまで行こうとしたら政府の機関二ヶ所から連絡が入って。

 呪いのアーティファクトを解放できそうな場所と、儀式が行われそうな場所、教団聖地がそう呼ばれる前の状況と似ている場所としてこの地を示されたんだ」


「探していた条件に合う場所が両方とも同じ場所を指し示しただなんて、もう確実だろうっていって。そこからは何の迷いもなくここまで一直線だったぞ」


 アグネスがニヤニヤしながら大吉さんを見て言う。


「ここらの地域は再生の日以降、割とすぐに多くの人がキョウトや近くの大きな街の方へ移って行ったからな」


 それ以上はやめとけと言わんばかりに、フェイがアグネスの肩に手を置いて、この場所がどんな場所なのかを教えてくれた。


「大きな街が近い分、発掘も早々に済まされその後は放置状態。

 まぁ……何かをコソコソやるにはピッタシの場所、ではあるな」


 最後に大吉さんが発掘という視点から教えてくれて、色々なことに納得がいく。


 なるほど、それでこの地が再生の日以降ほとんど手付かずで放置されてきたのか。


「そんなわけで、場所が判明して双葉ーちゃんが一番近いところの神社の札をくれたというわけだ」


 わたしはもう一度伝える。


「本当に……ありがとうございます…………!」


「こっちこそ、だ。藍華の機転のおかげで呪いのアーティファクトがなんとか無事に解放できたんだからな」


 そう言うと、大吉さんは後ろを振り向き言った。

 闇のドームは、今の自分の位置からは見えなくなっていて、闇の気配はとても遠くになっている気がする。


「闇のドームもだいぶ小さくはなっ」

「藍華! もう起きれるのか!」


 再び。蘇芳さんがやってきて、大吉さんのセリフを遮り、龍石、フェイ、アグネスを押し退けて顔を覗かせた。


「……お陰様で」


 わたしは苦笑しながらそう答えた。


「助けに行ったのに、逆に助けられたな……ありが」

「お前は特殊部隊としてアイツらを拘束連行する義務があるだろう。さっさと行ったらどうだ?

 こっちのことは気にするな、俺がいるから藍華の事は心配いらない」


 今度は大吉さんが無理矢理割り込んできて。邪魔された蘇芳さんは、大吉さんをみて。お互い何やら火花を散らしている。


「大体。お前がもっとちゃんとしていればこんなことにはなっていなかっただろう」

「神器奪われて取り返しきれなかった奴がなにを」

「二人とも──」


 止まりそうにない言い合いを見かねてフェイが口を出そうとするけれど、


「結果的にはよかったんじゃないですかね」


 当事者のわたしが肯定することで、二人の言い合いは、一応止まった。


「わたしがあそこにいたことで、龍石が来て、連中も特殊部隊の皆さんも助かって。

 ……わたし達の抱えていた問題もなんとか解決して」


 そう、話しながら再び大吉さんの背後の方を見ると────


 そこには黒く焼け爛れたような大地が広がり、大きな瓦礫さえもが、風が吹く度に少しづつチリとなって飛んでいく。


 そして、呪いの中心地かと思われる方向にはまだ黒い闇のドームが見えた。


「爆発のように広がりきった後は、ゆっくりとああやって小さくなっている」

「蝶子が言っていた。おそらくこのままゆっくりと消えていくだろう、と…………」


 やはり被せ気味に言う蘇芳さんの言葉に、わたしは視線を自分の膝上に置いた手に移した。


「そう──ですか…………」


 あの――中心地にあるはずの、呪いのアーティファクトと、絡め取られた神器達はどうなっているのか……。


 こんな事態を起こす為に作られた訳ではないだろうに――。

 こんな事で無くなってしまう為にあった訳ではないだろうに――。


 神器として人と寄り添い、これまで過ごしてきたアーティファクト達に想いを馳せながら。わたしは胸が締め付けられるような感覚になった。


「藍華よ……」


 押しのけられた龍石が、蘇芳さんの横から顔を出して、悲しそうな声でわたしの名を呟いた。わたしが何を思っているのかを感じ取ったのだろう。


 その時、わたしは遠くのドームの中に、わずかな光を感じた気がして……再びそちらを、蘇芳さんと龍石の背後の方を注視する────


「……?……」

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